605 わしは出来る猫にゃ~
建国記念日が終わり、各国の来場者が去ってもわしは忙しい。片付けや移住の話し合い、ウサギレンタル事業の草案。女王と玉藻の相手……
「てか、にゃんで二人は帰ってないんにゃ~」
わしが忙しく働いているのに、二人は付きまとってうっとうしい。
「この前した約束は忘れているの?」
「約束にゃ??」
「忘れているみたいね……オーロラよ。連れて行ってくれると言ったでしょう」
「にゃ! 言ったにゃ……でも、このくそ忙しい時に言わにゃくても……」
「私のほうがもっと忙しいわよ」
忙しさを前に出してやんわり断っても女王には通じないようなので、玉藻に振って話を逸らそうとする。
「玉藻はにゃんで残っているにゃ?」
「
「わしは見ての通り遊んでられないにゃ~」
「どうせすぐ暇になるんじゃろ? それにオーロラは夜に出ると聞いておるから、そちならさほど労力にならんじゃろう」
「玉藻もそっちが目当てにゃの!?」
話を逸らしたのに戻されては仕方がない。さっさと行って、二人には帰ってもらおう。
今回の北極ツアーは、三回もオーロラを見た猫ファミリーはお留守番。護衛のイサベレと、転移魔法を知っているエミリと、知られてしまっている双子王女も誘い、夜になったら諸々の防寒対策をして転移。
マーキングしてある北極点近くに飛んだのだが……
「太陽が出てるわよ?」
「朝焼け? それとも夕焼けか??」
辺りが明るい。なので女王と玉藻から質問が来るけど、わしも首を傾げている。
あれ? なんで明るいんじゃ?? とっくに太陽は沈んでいてもおかしくないのに……
待てよ。そう言えば北極って、白夜があった……しかも北極点って事は、一番太陽が当たる場所なんじゃね?? え~。せっかく来たのに~。
「残念にゃお知らせがありにゃす」
わしが神妙に語り始めると、皆の視線が集まる。
「ここの太陽は沈まないにゃ~」
「「「「はい?」」」」
「白夜と言ってにゃ。一日中太陽が沈まない時期があるって、チェクチ族が言ってたにゃ~」
「「「「「またまた~?」」」」」
「本当なんにゃ~。もう帰ろうにゃ~」
わしの知識で喋っては、女王達に転生がバレそうだし信じてくれないだろうからチェクチ族を出してみたが、信じてくれない。時差があるのだと思ってテコでも動かない。
なのでソードを氷に突き刺して、影の位置に鞘を置いて北極観光。ペンギン(仮)と
およそ二時間のアクティビティを終えて元の場所に戻ると、ソードで出来た影の位地がズレていた。
「にゃ~? 影の長さも変わってないにゃろ?」
「風で動いたとか……」
「動かないように固定したにゃ~」
女王達は現実を受け入れてくれないので困ったものだ。
「もう眠たいにゃ~。冬に連れて来てやるから、帰って寝ようにゃ~」
「いいや。絶対に太陽は沈むはずじゃ。妾は太陽が沈むまで見ているぞ」
「私ももう少し見ているわ」
「「わたくしもですわ」」
「じゃあ好きにしたらいいにゃ~。イサベレと玉藻は護衛頑張ってにゃ~」
どうしてもオーロラを見たい玉藻達は寝ようとしないので、【熱羽織】の魔道具の予備と遊び道具、夜食と飲み物を支給して、わしとエミリはキャットハウスのお布団へ。
たぶんエミリは、お偉いさんばかりの場所は居心地が悪いからついて来たと思われる。
「猫さんを独り占めです! モフモフ~」
いや、わしを撫でたいが為について来たようだ。あまりにもしつこく撫でたりキスして来るので、ほとんどレイプ。
落ち着かせる為に白夜の説明を詳しくしてみたら、ショートして落ちた。やはり、地球が丸い事も傾いている事も回っている事も信じられないようだ。
これで落ち着いて眠れるので、猫の国時間の起床時間に目覚まし時計をセットして、わしは眠りに就くのであった。
翌朝……
「誠に太陽が沈まん……」
「本当の事を言っていたのかも……」
「「まだ信じられませんわ」」
キャットハウスから出たら、玉藻、女王、双子王女はまだ起きていた。イサベレは……目を開けたまま寝てるっぽい。器用なヤツじゃ。
「にゃ~? エミリがごはん用意してくれたから食べようにゃ~」
皆は用意していた夜食も食べていたようだが、ずっと起きていたからお疲れの模様。朝食を静かに食べている時に日時計はどうなったかと聞いたら、影は弧を描くように移動していたそうだ。
「わしの言った通りにゃろ? もう諦めろにゃ~」
「「ぐっ……」」
「双子王女は仕事があるのに徹夜にゃんかしちゃダメにゃ~」
「「あ……やってしまいましたわ」」
玉藻と女王は悔しそうな顔をしているが、双子王女はわしの味方に付いてくれたので、北極ツアーはオーロラを見ないまま終わるのであった。
キャットタワーに帰ったら、女王と玉藻は猫ファミリーの住居フロアに消えて行った。人の家を勝手に使っているが、ツッコまずにお仕事。お昼には双子王女も限界が来たらしく、わしに仕事を押し付けて寝てしまった。
「お春。リータ達はどこに行ったにゃ?」
「ポポル君とソウで訓練すると言って出掛けました」
「呼び戻してくれにゃ~」
一人で双子王女の書類仕事なんてしたくないわしは、お春に理由を説明して連絡してもらう。
「えっと……嫌だそうです。なんだか怒っているみたいでしたけど……」
「じゃあいいにゃ。お春、手伝ってくれにゃ~」
「はい!」
リータ達には「もしかしたら泊まるかも?」と説明していたのに怒っているのなら、呼ばないほうが身の為だろう。絶対にモフられるもん。
ここは双子王女の仕事を、わしがやった手柄を持って会いに行ったほうが正しい判断だ。褒められるかもしれないし、モフられる時間は減るかもしれない。
わしは一所懸命お春にも仕事を割り振って働く。けっこうな量の仕事を押し付けているのにお春は嬉しそうなので心苦しいが、その甲斐あって15時頃には終わった。
これで優雅にお昼寝タイムに入れるとお春の膝の上に乗ったところで、仮眠を取った双子王女が戻って来た。
「あら? もう終わったのですの?」
「超頑張ったにゃ~。リータ達にその旨をお伝い出来にゃいでしょうか?」
「いいですけど、これもやってからですわね」
「まだあったにゃ!?」
てっきり全ての仕事を押し付けられたと思っていたのに、双子王女は書類を山積みにするのでお昼寝できないわしであった。
「てか、これ……明日どころか一週間ぐらい先でもよくにゃい?」
「「そんなことないですわよ。オホホホホホホ」」
「ぜったい先の仕事してるにゃ~~~!!」
どうやらわしの書類仕事が早すぎたので、双子王女はどこまで出来るかを見たいようだ。しかしこれをクリアしたら、リータ達に超褒めてくれるように進言してくれると言われて頑張るわしであった。
「うそ……シラタマってこんなに仕事できるの……」
「信じられん……もう太陽は沈まないんじゃないか……」
「邪魔するにゃら出て行ってにゃ~~~」
夕方頃に帰る旨を伝えに来た女王と、ちゃちゃ入れに来た玉藻は、わしの仕事の早さに驚愕の表情を浮かべるので、集中力が切れるのであったとさ。
仕事をし過ぎてフラフラになったわしは、いちおうゲストだった女王とイサベレを三ツ鳥居集約所から見送ると、玉藻と一緒にソウの別荘に転移。
わしを見付けたリータとメイバイは殺猫タックルからの撫で回しコンボ。すでに双子王女からわしの報告を聞いていたから褒めてくれているようだ。だが、モフられ過ぎて気絶した。
夕食時に、リータ達がわしの口にエサを放り込んでくれていたからモグモグ目覚め、お布団に入ったらゴロゴロ眠る。建国記念日の疲れが溜まっているところに、大量の書類仕事は
「ふにゃ~。おはようにゃ~」
わしが別荘の訓練場に顔を出すと、玉藻がリータ達に
「少し休憩しよう」
リータ達は肩で息をしていたので、わしの顔を見た玉藻は休憩を言い渡して近付いて来る。なので、テーブルと飲み物、それとわしの朝食とコリスのエサを出して席に着く。
「今日は仕事はせんのか?」
「久し振りの休みにゃ~。てか、玉藻が見てくれていたんだにゃ」
「ああ。頼まれてな。しかし、リータ達は強いのう。侍の技まで使って来るから必死じゃったぞ」
「嘘を言うにゃ。玉藻のスピードにゃら、侍攻撃にゃんか意に介さないにゃろ」
「そりゃそうじゃが、驚かされたのは事実じゃ。戦うところは見ていたが、実際に戦うと違うものじゃ」
まぁリータ達の戦い方は、チームプレーのジャイアントキリングじゃからな。玉藻クラスは無理でも、いまなら20メートルクラスの白い獣でも簡単に倒してしまうじゃろう。
「それじゃあわしも、久し振りに体を動かそうかにゃ? リータ、メイバイ。体力は戻ったかにゃ~?」
「「お願いしにゃす!」」
本当は実践を思い出す為に玉藻の手を借りたいところだが、手始めにリータ達で動きの確認。もちろん手加減して、わしはその場から動かない。白い模擬刀だけで相手をする。
「久し振りにゃから手加減してにゃ~?」
「シラタマさん相手にいりません! みんな。全力でいきますよ!」
「「「「にゃ~~~!!」」」」
リータ達の初手は、遠距離攻撃からの
わしの目の前に現れた土の槍にメイバイ達の【鎌鼬】が貫通し、【風猫】が掻き回す。
土や砂が目の前で飛び散るが、模擬刀に魔力を
その動きに合わせ、リータ達は侍攻撃。先の先を取って一斉攻撃を繰り出す。
しかし、相手はわしだ。後の先を取って簡単に弾き返……
「あ、あれ? にゃ!? ちょっと待ってにゃ!! ……にゃ~~~!!」
残念ながら後の先は発動せず。さらに訴えも聞いてもらえず、リータ達にボコスカと殴られ続けるわしであったとさ。
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