373 島と人を発見した、にゃ~~~!!
海が見えて、気を良く旅を続けるわし達であったが、巨大カミキリムシに遭遇し、「ワーキャー」言いながら逃げ惑う。空に逃げるも、海に近付けば近付くほど黒い鳥の群れが増え、やむなく地上に降りる。
そのせいで無駄な戦闘が増え、なかなか距離が稼げないでいる。
「またにゃんか来たにゃ!」
「今日、三戦目ですか……」
「うぅぅ。せっかく見えた海が遠いニャー」
海が見えてから二日。空はまったく進めなくなり、地上を走るが、獣が行く手を阻むので、リータとメイバイの気持ちが切れそうだ。
いちおうわしが威嚇して追い払うかと聞いたのだが、リータとメイバイは戦いたいらしく、三度目以降からは聞かないようにしている。だって目が怖かったんじゃもん。
「もう少しにゃ。あとちょっとの所まで来てるはずにゃ」
「昨日もそう言ってたニャ……」
「き、昨日は間違ったんにゃ!」
「またミスしましたね……」
「にゃ!? 怒らないでにゃ~」
「いつも思うけど、戦う前に遊んでいていいの?」
「「「にゃ!?」」」
わし達夫婦が痴話喧嘩していると、イサベレが
皆の連戦の疲れもあるので、今回は砦を作ってプチ籠城戦。最近、強い獣も減って来たので、わしも砲台に立つ布陣だ。
そうしてぺちゃくちゃ喋っていると、木の間から黒くて大きな野犬の群れが現れた。
「コリス砲……発射にゃ~!」
「にゃ~~~!!」
わしの指示に、コリスは前脚二本と尻尾二本を器用に使って、石の玉を投げ付ける。
「キャット砲……薙ぎ払え~!」
「にゃ~~~ご~~~!!」
わしはイサベレの指示に、【
でも、その言い方は、ドロドロの化け物がデッカいダンゴムシを焼いた言い方だからやめて欲しい。て言うか、指揮官はわしじゃなかったっけ?
納得はいかなかったが、わしもコリスも、遠距離から確実に黒野犬の群れを減らして行く。その攻撃を抜け、砦に近付く黒野犬がいれば、イサベレが空を駆けて斬り裂き、すぐに砦内に戻る。
壁に張り付く黒野犬も、リータの金棒、メイバイの槍で弾き返され、登る事も許されない。
そんな中、キョリスクラスの白野犬が現れれば、わしが対応。遠距離から【風玉】を撃ちまくり、大きな攻撃はさせないし、近付かせない。
「こんなものですね」
黒野犬の数が減ると、リータがイサベレとメイバイを見る。
「ん。いける」
「やってやるニャー!」
「シラタマさん。お願いします!」
「わかったにゃ~。みんにゃ、中に入るにゃ~……【土壁・散】にゃ~!」
皆が砦の内側に飛び降りるとわしも続き、砦の壁を弾けさせる。壁は
その隙を使って、リータ、メイバイ、イサベレは、白野犬に突撃。わしとコリスは散開してザコの掃討戦に移行する。
この作戦は、リータ達の発案。キョリスクラスなら三人で倒せると言うので、渋々許可を出した。事実、何匹もボコボコにしているから、わしは安心して見ているが、怒らせた時の事を想像して安心は出来ない。
リータ達は、10メートル近くある白野犬の真正面に立つと、魔法で牽制。
「【土槍】にゃ~!」
「【鎌鼬】ニャー!」
「【エアブレイド】にゃ~!」
全員、語尾に「にゃ」がついている理由はまったく理解できないが、全てヒットして、少しは傷を負わせたようだ。
その攻撃で怒った白野犬は、凄い速さでリータ達に向かう。
「【土壁】にゃ~!」
リータの出した土の壁は、白野犬の体当たりで呆気なく砕かれる。
「ぐっ……」
どうやら【土壁】は、白野犬の突進力を弱める為に使ったようだ。そのおかげで、リータは白野犬の頭突きを盾で止める事に成功する。
「行っくニャー!」
「ん!」
白野犬の動きが止まれば、メイバイとイサベレがふた手に分かれてダッシュ。お互いの武器に気功を乗せて、前脚、後ろ脚を瞬く間に斬って通り過ぎる。
「ギャワン!」
「行かせません!」
痛みに振り返ろうとする白野犬の首に、鎖を巻き付けて引っ張るリータ。肉体強化の魔道具を使っていても、キョリスクラスが相手では力負けして引っ張られる。
しかし、少しの時間稼ぎが出来ればよかったようだ。その間に、メイバイとイサベレは後ろ脚に集中砲火。脚を痛め付けて使えないようにする。
「ギャ……ワオーーーーン!!」
「【光盾】にゃ~!!」
白野犬の苦し紛れの【
「首っ!」
「わかってるニャー!」
大技を使っているという事は、大チャンス。メイバイとイサベレは同時に跳んで首元に光の剣で斬り付けた。その攻撃で白野犬の【咆哮】は止まり、リータの姿が
【咆哮】の威力は強く、二枚の【光盾】を破壊したが、気功を使って白魔鉱の盾の強度を上げていたので、リータは難無く耐え切った。しかも、首に鎖を巻き付けたまま離さなかったのだ。
「どんどんやっちゃってください!」
「はいニャー!」
「ん。すぐに終わらせる」
そこからはタコ殴り。素早いメイバイが飛び跳ねて斬りまくり、イサベレが空を駆けて斬りまくる。リータも負けじと噛んで来た時にジャンプで避けて、鼻先に気功を乗せたパンチパンチ。地面に張り付ける。
そうして三人は白野犬が動かなくなるまで、攻撃の手を休めないのであった。
その頃わしはと言うと、掃討戦も終わり、黒野犬も次元倉庫に入れ終わったので、コリスと一緒にくつろいでいた。
はぁ……あの大きなキョリスクラスの獣を、三人でボコボコにしておるよ。気功を習ったからか、エルフの里に着く前より、攻撃の通りが良くなっておるな。光の剣よりも威力が高いかもしれん。
イサベレもあの中で一番弱かったはずなのに、もうリータ達に追い付いておる。これは種族の差なのかな? 白い一族、恐るべし。気功も一番うまく使いこなしているのう。百年の経験値は伊達じゃないな。
さてと、終わったようじゃ。よっこいしょっと。
「お疲れ様にゃ~」
わしはコリスと共にリータ達に近付くと、労いの言葉を掛ける。
「ふぅ~。けっこう慣れて来ましたね」
「そうだニャ。これならもう一段上げても戦えそうニャー」
「ん。二人とならいける。でも、外からの攻撃も欲しい」
「たしかに……ハンターなら、パーティメンバーを募集をするんですけどね~」
「帰ったら募集してみようニャー」
「ん。賛成」
「「「あはははは」」」
わしを完全に無視して話す、リータ、メイバイ、イサベレに、わしは呆気に取られてしまう。
え……無視? それにわしをパーティメンバーから追い出してる!? わしがリーダーのはずなんじゃが……
て言うか、三人について来れる魔法使いなんていないからな!
「にゃあにゃあ? そろそろわしも話に入れてくれにゃ~」
「「「居たの??」」」
「ひどいにゃ~!!」
パーティから追い出されそうになったわしであったが、文句を言うと、マスコットとして残る事となった。
それからぷりぷりゴロゴロ休憩し、東に向けて走る。怒ったら撫で回されて、意見は捩じ伏せられたので仕方がない。
夕刻間近とあって、早く寝床の準備をしたかったのだが、戦闘現場は血のにおいが残るので、十分な距離を取る必要がある。
なので走っていたら、森を抜けてしまった。
「にゃ!?」
「「「「わ!!」」」」
わしに続き、皆も驚いた声を出す。予期していなかったのに、海が姿を現したので致し方ない。
「つ、ついにやりましたね……」
「やったニャ……」
「ん。綺麗……」
「うみだ~」
黒い森、暗い森、どこまでも続く森を抜けた皆は、感慨深く、夕陽で赤色と青色の織り成す海を眺める。
「着いたにゃ~」
もちろんわしもだ。一人で走れば、もっと早く辿り着いたのであろうが、仲間が居るからこそ、楽しく旅が出来たのだ。何も文句はない。いや、感謝しかない。
「みんにゃ。ありがとにゃ~」
どうやら皆は、感動していて、わしの声が届いていないようだ。なのでわしも、皆と同じく海を眺め続けるのであった。
それからしばらく経つと、「ワーキャー」言いながら称え合い、黒い森突破記念の酒盛りを始める。
「かんぱいにゃ~!」
「「「「かんぱいにゃ~!!」」」」
うまいメシ、うまい酒は、浮かれる気分でさらにうまくなる。今日までの旅を振り返り、話にも花が咲くが、寝床の用意をしないといけないので長くは続けられない。
酒盛りをしていた近くにちょうどいい崖があったので、少し高い所に穴を掘ってバスを嵌め込む。そこにお風呂も取り出して皆でわいわいと入り、疲れていたのかバスで横になると、すぐに眠りに落ちた。
次の日は海を眺めながら朝食を済まし、地図を広げて話し合う。
「いまはどの辺りに居るのですか?」
「ちょっと待つにゃ」
リータの質問に、今までマーキングした場所に赤い丸を書き込んで、位置を確認する。
「猫の国から、東北東ってところかにゃ?」
「シラタマ殿が言った通り、北に逸れても海があったニャー!」
「この先に、時の賢者様が向かった島があるのですか……それらしいモノは見えませんけど、これからどうするのですか?」
「空から探せば、すぐに見付かるにゃろ」
「鳥はどうするニャー?」
「陸が無ければ休む場所も無くなるし、減るはずにゃ。今日はここを拠点にして、島を探そうにゃ」
話し合いが終わると、皆で戦闘機に乗って、望遠鏡を
「南に少し大きな島にゃ……北東にそれより大きな島にゃ……どっちを攻めようかにゃ?」
「もちろん……」
「「「「「北東にゃ~!」」」」」
リータが溜めて、満場一致で「にゃ」が揃った。いや、北東に決まった。
なので今日は、海で少し遊んでから早めの就寝となった。
そして翌日……
「「「「うわ~!」」」」
北東に進んで小一時間。緑の目立つ島が見え、皆は期待に満ち
「人が住んでいそうです!」
「ぜったい住んでるニャー!」
「これだけ緑が多いと、強い獣は居なさそうだにゃ。それだけで、人が安心して暮らせそうにゃ環境だとはわかるにゃ~」
「ですよね?」
「早く降りてニャー」
「焦るにゃ~。まずは集落を探すにゃ。海岸沿いに進めば、魚を求めて人が居るはずにゃ」
「本当ですか!?」
「いや、可能性の話だからにゃ?」
「早く会いたいニャー」
「聞いてるにゃ?」
リータとメイバイは、興奮して話を聞いてくれない。もう人が居るのは決定だと言わんばかりに望遠鏡を覗く。イサベレの表情からはよくわからないが、望遠鏡を熱心に覗いているところを見ると、興奮しているようだ。
それから島の岸、上空にまで来ると、北に向かって戦闘機を飛ばし、機内はさらに熱気が渦巻く。
「あった……ありました!」
「ほ、本当ニャー! 集落ニャー!!」
「ん。もっと近付いて」
「わかったから揺らすにゃ~!」
第一発見者はリータ。リータの指差す場所には、小さいながらも漁村が確認され、興奮したメイバイとイサベレも加わって、わしをぐわんぐわんと揺らして操縦の邪魔をする。
「人! 人ニャー!」
「あ、歩いてます!」
「ん。動いてる」
「人間にゃんだから歩くし、動くにゃ~。だから揺らすにゃ~!!」
さらに揺さぶりは大きくなるので、深呼吸させて落ち着かせる。そうして、皆の逸る気持ちが
すると、リータ達から非難の声が飛んで来た。
「もう! もっと静かに降ろしてくださいよ~」
「揺らすからにゃ~! にゃん度も邪魔するにゃと言ったにゃ~!!」
「「「あ……」」」
興奮したせいで、わしも声が大きくなってしまった。わしのぷりぷりした態度を見て、ようやく冷静さを取り戻したリータ達。でも、ハッチを開けると、すぐに飛び出してしまった。
「待つにゃ! ひとまずコリスは変身魔法を使ってくれにゃ~」
「わかった~」
いまにも走り出しそうな皆を止めて、この中で一番冷静なコリスには、さっちゃん2に変身してもらう。さすがに巨大リスを原住民に見せてしまうと、怖がらせる可能性があるからの配慮だ。リス耳と二本の尻尾はあるけど……
わしが念のため地面にマーキングしていると、コリスはワンピース姿のさっちゃん2に変身した。それから気持ちを落ち着かせる為に全員で手を繋ぎ、漁村があった場所にゆっくり歩く。
皆はなんとか横一列で並んでいたが、メイバイが何かに気付き、わしの手を振り払って駆けて行った。それに続き、リータとイサベレが駆け出し、わしとコリスはそのあとを追う。
「やっぱり石像ニャー!」
「子供? かわいい作りですね~」
石像の前でメイバイとリータが喋り、イサベレがじっくり見ている中、コリスと共に追い付いたわしは、少し固まる。
……地蔵? 地蔵じゃな。湯飲みに水も入って花も手向けられている。地蔵じゃ……
「お墓ですかね?」
「子供のお墓ニャ……かわいそうニャー」
「いや、これは地蔵にゃ」
「「「地蔵?」」」
わしの発言で、リータ、メイバイ、イサベレは、声を合わせて振り返る。
「神様みたいなものにゃ。この地に住む者を守ってくれているんにゃ」
「「「へ~~~」」」
「神様って事は、拝んだほうがいいニャー?」
「そうだにゃ。旅の安全を祈って、手を合わせて行こうにゃ」
わし達はしゃがんで手を合わせ、祈りを捧げて立ち上がる。そうして漁村に向かって歩いていると、第一村人の女性を発見した。
わし達は逸る気持ちから緊張に変わり、少し相談してから、わしから話し掛ける事となった。なんでも、知らない人に話し掛けるのは恥ずかしいんだとか……
女性が近付いて来ると、わしは皆に押されて、英語で声を掛ける。
「ハローにゃ~」
女性は猫のわしを見て、いつもの反応を見せるかと思ったが、少し違う。
「×##*×*?」
なっ……なんじゃと……
女性は畏まって話し掛けて来たので、わしが驚く事となった。
「×##*×*×?」
ま……まさか……
再度話し掛ける女性の声に、わしは何も言えないまま、次元倉庫から戦闘機を取り出して飛び乗った。
「みんにゃ! 乗ってくれにゃ!!」
「え……せっかく人と出会ったのですよ?」
「いきなりどうしたニャー?」
「いいから乗れにゃ! 急げにゃ!!」
わしが怒声を
皆が乗り込むとハッチを閉めて、呆気に取られる女性を残して空に飛び立つ。
まさかまさかまさか……
わしは心の中で呟きながら、戦闘機を、上へ上へと上昇させる。その高さは一万メートルを超え、雲も遥か下に見据える高さ。
そこまで来れば、戦闘機の機首を下にして垂直にする。すると、わし達が降り立った島は、完全に視界の中に収まる事となった。
嘘じゃろ……
その島は、縦長によっつの島が並ぶ島……
日本じゃ……日本列島じゃ……と言う事は……
「ここは地球だったにゃ~~~!!」
そう。ここは異世界は異世界でも、パラレルワールド……平行世界なのであった。
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ようやく着いたよ日本……
100話ぐらいで着くと軽い気持ちで書き初めて、まさか373話も掛かるとは……
と、言うわけで、ここは地球でした!
この章でヒントを多く出したので気付いた人もいると思いますが、書き込みしないでくれて有り難う御座いました。
次回から新章突入!
伏線を長きに渡り散りばめてしまい、回収するには時間が掛かりますので、次回に少し触れ、詳しくは章の後半、各地を回りながら回収しようと思います。
それでも足りなくなったら次章を計画しておりますので、それまでは猫さんの「日ノ本観光」をお楽しみください。
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