349 闇夜の戦いにゃ~
白オオサンショウウオのさんちゃんと別れた翌日。相も変わらずわし達は、空と地上を交互に移動している。
ようやく山岳地帯を抜けたようなので移動速度は上がったのだが、虫や獣の群れが、いきなり襲い掛かる事が多くなって来た。かなり森の奥に来たので、コリスより強い生き物が増えて来たようだ。
なので、そこそこ強い獣は相手をするが、虫になると逃げ回る。虫から逃げ切れない場合は、わしが隠蔽魔法を解いて威嚇するので、なんとか追い払う事が出来ている。
そうして夜になると夜営の準備。今日は最後に着陸した時に、獣と戦ったので移動に手間取り、完全に日が落ちてしまった。暗いと何も出来ないので、光の魔道具を頼りに、お弁当を食べながら今日の出来事を話し合う。
「今日は疲れましたね」
「空は白い鳥に追われて、地上は変な虫に追われて大変だったニャー」
「本当にゃ~」
今日は連戦もあったので、リータとメイバイはお疲れのようだ。
「こんな事で、この森を抜けられるのですか?」
「まぁ大変だけど、着実に進んでいるにゃろ」
「いまはどの辺にいるニャー?」
メイバイの質問に、わしは地図と方位磁石を取り出して、マーキングをした場所に丸を付ける。ちなみに地図はほとんど白紙で、大きな紙の端に猫の国が載っているだけだ。
マーキングした場所は、珍しいモノが見付かった場所と夜営をした場所にしかしていないが、丸を線で結べば、おおよその距離と方角が見て取れる。
「う~ん……東に向かって進んでいるつもりにゃけど、追われる事が多いから、北寄りになってるかにゃ?」
「北ですか……時の賢者様が進んだのは東ですよね? それで大丈夫なのですか?」
「まぁ東に抜けたら海に着くんにゃし、大きく
「そんな適当でいいニャー?」
「にゃるようににゃるさ。さてと、お風呂でも入ろうかにゃ」
「今日は私ニャー!」
次元倉庫から出したお風呂に、メイバイと共に……いや、拉致され、服をひんむかれて入る。なにやら息が荒いからちょっと怖い。
メイバイの伸びる魔の手は尻尾でペチペチ叩き、なんとか無事お風呂から脱出すると、リータとコリスと見張りの交代。
二人のお風呂が終わる間に穴を掘って、バスを埋める準備をする。そして、二人が出て来たらバスに向かうのだが、探知魔法に何かが引っ掛かってしまった。
「にゃんか来たにゃ。……コリスとわしで対応するから、二人は先に休んでいるにゃ」
「え……私も戦います!」
「すぐに着替えるニャー!」
「う~ん……」
「待っててくださいね!」
わしの指示に、リータとメイバイは異を唱えて穴に飛び込む。そこに出したバスで、パジャマの着流しからいつもの服に着替えて準備するみたいだ。
わしとコリスはその間、背中を合わせ、光の魔道具をばら撒いて敵の襲撃に備える。
鳥が五羽か……けっこうデカイのに、この木の多い場所で自由に飛ぶとは、相当慣れておるな。もしかしたら、この開けた場所は、奴等の狩り場じゃったのか?
だとしたら、暗闇で戦うのも慣れておるのか……普通に戦うとなると、なかなか厄介な相手かもしれんのう。
わしがコリスに敵の数と向かって来る方向を伝えて待っていると、コリスは敵がそこまで迫って来ているのにまったく動こうとしない。
なので、わしは慌てて刀を抜き、コリスに迫る敵を斬り捨てた。
「わ! なに!?」
わしの斬り捨てた生き物の正体は、体長2メートルはある白いフクロウ。コリスの目の前に落ちると、いま気付いたのか、驚いた声を出した。
「いまのは危なかったにゃ~」
「ぜんぜんきづかなかった~」
「そうにゃの?」
「だって、音もなにもしなかったよ~」
たしかに……フクロウは音も出さずに獲物を狩るんじゃった。この光の乏しい暗闇の中では、わし達に不利な戦いになりそうじゃ。
フクロウの群れは、一羽が命を消すと警戒を強めたのか、木の間を縫って飛行を続け、攻めて来なくなった。
その間に、リータとメイバイが準備を済ませて穴から飛び出し、四方に対応できる配置に就く。
「大きな白い鳥が落ちてるけど、アレが今回の敵ニャー?」
「そうにゃ。フクロウにゃ。音も無く襲って来るから気を付けるにゃ」
「向こうの戦力はどうですか?」
「残り四羽にゃ。一番大きなフクロウはハハリス以上、残りもコリスクラスにゃ」
「それはマズイですね……」
「デカイのが来るにゃ!」
わしは探知魔法をこまめに飛ばし、陣形を回して10メートル以上はある白フクロウの接近する位置にて向かい討つ。といっても、自爆を狙った四角い土の壁を作るだけ。
これで何かしらのアクションが見て取れるはずだが、簡単に横を抜けられてしまった。
予想では、ぶつかって壊す、魔法を放つ、避けるの三択だったが、大白フクロウは手札を見せてくれない。なので、移動した方向にわしは回り込んで刀を振る。
すると、大白フクロウは
「【光盾】にゃ~」
その攻撃に、わしは
「本当に音がしませんね」
「シラタマ殿の足音と魔法の当たる音しかしなかったニャー」
「みんにゃ。壁に背をつけるにゃ」
少しでも戦いやすいように、皆を壁に近付け、わしは
白フクロウAは、わしの右後方から死角を狙って突進。鋭い足の爪で襲う。
わしはそれを避けて反撃するべく刀を振ろうとするが、また死角から白フクロウBが飛んで来たので大きく避ける。その場所は、白フクロウCが待ち構えていたのか、そこでも死角から爪で狙われる。
息の合ったコンビネーション攻撃。全ての攻撃が死角から来るので、探知魔法を切る事も出来ずに、わしは防戦を
さらには、遠くからも【風の刃】を飛ばして来るので厄介だ。避けたり受けたりするが、その都度、白フクロウ二羽が時間差で死角から現れて反撃に移れない。
白フクロウ達は、小動物をいたぶるように追い詰めて、わしを狩ろうとする。
マズイのう……ここまでコンビネーションがいいと、下手な攻撃が出来ない。それに魔道具の光だけでは、見える範囲が少な過ぎてやりにくい。何か打開策は……
わしが白フクロウの攻撃を捌きながら考え事をしていると、大白フクロウが動いた。
「みんにゃ! いますぐそこから離れるにゃ!!」
「「は、はい(ニャ)!」」
「うん!」
わしはリータ達に、視線を向けずに指示を出す。皆もいきなりの指示だったが素直に従い、壁から散り散りに跳んだ。
その直後、硬く作った四角い壁は、破裂するかの如く飛び散った。
大白フクロウだ。急降下して、とてつもない速度で壁に衝突して砕いたのだ。
その衝撃で皆はバラバラになってしまい、そこを白フクロウ達は狙いを定め、死角から襲おうとする。
「させないにゃ! 【
皆の後ろから近付いていた白フクロウ達は、【鎌鼬】をギリギリ避けて、空に逃げて行った。
「みんにゃ。大丈夫にゃ?」
駆け寄ったわしの声で、皆は頷く。
「あんなにそばまで来ていたのですね……」
「せめて地上なら戦えるのにニャ……」
「モフモフ~。どうすんの~?」
「そうだにゃ~……」
わしは皆に作戦を伝え、その作戦が実行できるチャンスが来るまで、白フクロウ達の攻撃を、背中を合わせて耐える。
皆の死角は消えたので、目の前に集中できるから、なんとか耐えられている。
リータは盾で守り、鎖に付けた刃で反撃。メイバイはナイフに光を
わしは狙われる事が減ったので、次にどの方向から来るかを
わし達は反撃は出来るのだが、白フクロウ達にギリギリかわされて、終わりが見えない。そうして猛攻に耐えていると、白フクロウは回転しながら移動し、大白フクロウから合図があったのか、一斉に襲い掛かって来た。
「目を
わしの指示で皆は目を閉じる。そしてわしは、すかさず魔法を使う。
「【大光玉】! からの【光盾鎌倉】にゃ~!!」
わしが待っていたのは、白フクロウ達が業を煮やして一斉に襲い掛かって来るタイミング。そこに目の
「よし! いまにゃ!!」
「「「にゃ~~~!」」」
光の玉が頭上に浮かんで視界がよくなったところで、皆は白フクロウに飛び掛かる。
リータは白フクロウAの片翼を集中的に殴り、逃げ出そうとすれば翼に鎖を巻き付けて、そのまま逆に曲げて骨をへし折る。
メイバイは白フクロウBの片翼を集中的に光の剣で傷付け、切断とはいかなかっが、飛ばせないところまで追い込む。
コリスは白フクロウCの上に飛び乗り、尻尾と両手のリス百烈拳でボコボコに殴り、グロッキー状態になったところで首に噛み付いて、命を刈り取った。
わしの相手はもちろん大白フクロウ。二本の刀で片翼を斬り落として命も狙うが、そうは上手くいかない。大白フクロウの【
わしはもう一度光の盾を作り出し、エネルギー波を空に逃がして事なきを得る。
形勢が、一気にわし達に傾く中、コリスの念話が届く。
「モフモフ~! やったよ~!!」
「よくやったにゃ! 次は、メイバイの相手にゃ!!」
「わかった~!」
コリスは報告後、メイバイと睨み合っている白フクロウBに向かい、合流すると、メイバイはリータの元へと向かう。
そうしてコリスの戦闘が始まり、そのすぐあとに、リータとメイバイの戦闘が始まった。
わしも大白フクロウから目を離さずに、臨戦態勢。皆の戦闘を確認すると、一気に間合いを詰める。
大白フクロウは【風の刃】と爪を使ってわしを近付かせないようにするが、空に居なければ強さは半減。わしのスピードに反応は出来るが、動きが間に合わない。
「【光一閃】斬りにゃ~!」
こうしてわしは、大きな光の剣で首を半ばまで斬り裂き、大白フクロウは地響きを立てて崩れ落ちるのであった。
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