335 運行会議、その後にゃ~


 各国の王が押し寄せ、女王逹も飛行機で送り届けた帰り道、王様の集団にからまれた。


 何故、ここにいるか? 来たからじゃ。

 どうやってじゃと? 秘密じゃ。

 女王はどうしたじゃと? 城に送り届けたぞ。

 猫のぬいぐるみを孫娘に買って帰りたいじゃと? わしに聞くな!!


 質問に答えていたが、面倒になって逃げ出した。

 後日、女王に会った時に、自分のところに質問が飛び火したと怒られた。隠れて歩けと言われても、わしとコリスは目立つから仕方がない。



 それから子供達を誘ってゴルフ場製作に精を出し、東の国に遊びに行き、各国の友好条約を締結し、リータ逹の訓練に付き合わされ、サッカー監督をしたりして一ヶ月。西の国の元王様のじい様が貴族を引き連れて、またやって来やがった。

 なんでも、完成したゴルフ場でプレーしたいんだとか……


 宿代とか飲食費はそっち持ちだからね? うちは一切出さないからね? プレー代も取るからね? 住人が粗相をしても怒らないでね? バスは……貸してやるけど、料金は取る!


 ひとまず西のじい様は、猫の街に金を落とす上客となってくれた。だが、隔週の頻度でやって来るので宿が足りなくなり、もう一軒作る事となった。

 こちらは軍関係者が止まる宿なので、旅館ほど設備は充実していない。今までが特別だったんだから、ブーブー言うな!


 軍のブーイングは一喝して黙らせたが、ゴルフ場にはクラブハウスは建てたものの、スタッフの教育が終わっていなかったので、暇そうにしていたわしが教育係に任命されてしまった。

 まぁやる事は、飲食業はその手の者に丸投げだし、ルールは本を読んで覚えさせるだけだし、コースの手入れは一緒に作った子供に丸投げしたから、結局暇になる。


 なので、西のじい様達のラウンドをキャディーとしてついて歩き、猫耳族の女性をキャディーにしようと教育をしてみたら、なかなか好評だった。

 猫耳や尻尾の付いた女性を見た貴族達がフガフガ言っていたから、常連になってくれそうだ。

 だが、失敗もある。OBの時に「ファー!」と叫んでいるつもりでも、「ニャー!」となっていたらしく、猫耳キャディーは全員「ニャー!」と言うようになってしまった。



 恥ずかしい結果となってしまったが、一通りの教育が終わったと双子王女に告げると、猫耳の里に行きたいとうるさく言われたので、一度連れて行く事となった。


 ……ド田舎? そうじゃよ。エレベーターをうちに作れ? 二階が居住区なんだから必要ないわ!!


 と、強くは言えず、お金が掛かると言って我慢していただいた。下手したてに出ないと怖いんじゃもん。

 とりあえず納得してくれたが、皆で里を歩くと、ずっとキョロキョロしているので質問してみる。


 何を探しているのですか? キャットトレイン? ソウで作ってますよ?

 なんであっさり教えてくれたか? だって教えないと、また女王を送り込んで探らせるじゃろ? ちゃんと目を見てくれんかのう……


 双子王女は目を逸らしながらも、今度はソウに連れて行けとうるさくなったので、また今度、連れて行く事となった。でも、地下空洞は見せる気がないので、行ったとしても、納得してくれるかどうか……



 そうこう過ごしていたら、ビーダールまでの線路も開通し、物のやり取りも始まった。猫耳族の為に海の幸を輸入してやりたいので、【氷玉】の入った魔道具を大量生産したが、そのせいでキャットトレインの製造に遅れが出だした。


 魔道具の素材が無い!!


 わしの貯めた物はほとんど吐き出してしまったので、各国にはキャットトレインを買う時に素材を用意するように打診する。すると、嫌な反応を返されたので、旅館に滞在していた西のじい様に相談してみた。


 なんでも魔道具は便利だから、戦いや生活に事欠かないので、あまり自国の外には出したくないようだ。それに、キャットトレイン一台にどれだけ魔道具を使用するかわからないので、奪われる心配があるとのこと。

 西のじい様の意見はもっともなので、雷を入れる前の加工段階までの製造をしてもらい、他の国にも雇用を生み出す事で納得してもらった。

 その部分なら取り替えが利く部分なので、納品した時に確認してもらえば、嘘がないとわかってもらえるはずだ。

 どっちみち、猫の国だけで製造するには限界が来ていたので、西のじい様に相談したのは正解だった。


 でも、アドバイザー料高くね? 出張がたたって金策が苦しい? じゃあ、うちに来なければいいんじゃ!


 と言ったら、本当に来なくなった。理由はそれだけかと疑い、リータ達と遊びに……いや、キャットトレインの運行状況の視察に行ったら、立派なゴルフコースが出来ていた。


 それじゃあ、久々にわしも回ってやろうじゃないか。ハンデをよこせじゃと? しょうがないの~。……ちょっと! めちゃくちゃ上手くなっておる!! もう五打、ハンデを減らさせてくれませんか?


 わしのお願いは却下され、大差で破れてしまった。これだから、たぬきジジイは……


 ゴルフが終わった夜に食事に誘われたので、そこで話を聞くと、キャットトレインの開通から大変だったとのこと。なんでも人がまったく来ず、自分の国はこうも人気が無かったのだと痛感したらしい。

 そこで、わしが押し付けた仕事、ゴルフ協会会長の仕事に精を出し、懇意こんいにしていた他国の貴族を接待ゴルフでハマらせる為に、わしの国に通っていたとのこと。

 その結果、西の国にゴルフコースが出来た事によって、他国からの貴族が足を運ぶようになっているらしい。


 他国から来た者には、西の国の鉱物をお勧めして、外貨の獲得まで画策しているようだけど、遊びに来ただけのわしにまで売り付けようとしないで欲しい。


 二割引き? う~ん……もうちょっと! コリスを餌付けして仲間に引き込まないで!!


 結局策略にハマり、外交の仕事をさせられ、西の国とは三割引きで鉱物のやり取りが始まった。

 まぁ奴隷鉱山での産出量もカツカツだったので、渡りに船だったのかもしれない。ホウジツにも助かったと言われたしな。



 西のじい様が猫の街に来なくなってからは、団体さんの来客はなくなったが、他国の貴族はチラホラとやって来る。

 なんでも、猫耳キャディーの元で、ゴルフがちょっとでも上手くなりたいんだとか。

 ゴルフ場を自分の領にも作れないかと考えている貴族までいるので、熱心にコースの視察も行っているようだ。


 これには、双子王女に褒められて撫で回された。農業だけでは頭打ちだった猫の街は、貴族の金が落とされるのだから、管理する代表として嬉しいようだ。


 でも、てっきり遊んでいただけとか、てっきりリータ達が遊んでくれないからイジケていただけとか言わないでくれる? たしかに暇潰しで始めた事だけど~!



 そんなある日、貴族達にまじって南の王がやって来た。遊びに来ただけかと思ったが、深刻な悩みがあるようだ。

 暗い顔をしていたので、ゴルフに誘ってホールを回りながら話を聞く。どうやらキャットトレインが開通したものの、東の国から乗り込む者は多いが、南の国で降りる者が少ないとのこと。

 皆はどこに行っているかと聞くと、ビーダールに向かっているらしい。当然、海が見たいのであろう。


 なんとかしてくれと言われてもしらんがな。

 西の国にも人が流れていると言われても、わしがやったんじゃない。

 ゴルフ場は建設中? じゃあ、それで頑張りなよ。

 何か足りない気がする? 観光地でもアピールしてみたらいいんじゃ!


 南の王は先日の一件以降、西のじい様に相談しにくく、小国の王にはもちろん出来ず、猫に頼りに来たらしい。


 女王は怖いのですか。そうですか。


 なので、ゴルフ場が出来た際には、西のじい様を招待するようにアドバイスをする。まぁ国の運営ではアドバイス料を取られるけど、金の関係だと割り切れれば、少しは話がしやすいはずだ。


 一カ月後、オアシスの村が賑わっていると聞き、猫ピラミッドのせいじゃないとわかってはいるが、見に行くのは怖かったので放置した。



 そうして各国のキャットトレイン運行状況を実際に聞いたり、人伝ひとづてに聞いたりして日々を過ごし、たまにはコリスを実家に連れて帰る。

 両親は洞穴に居るかとのぞいてみたら、取り込み中だったらしいので、コリスと共にその辺で遊ぶ。


 まさかこんな真っ昼間から、夫婦の営みを見させられるとは思っていなかった……いや、奴らには関係ない事か。


 しばらく時間を置いて向かってみたら、まだヤってやがった。


 キョリスは絶倫か? うっ……リスの営みを見てしまった……


 まったくわし達に気付かないので、コリスと一緒に魔法の練習をして騒ぎまくり、ようやくキョリス達は洞穴から出て来た。


 いいところだった? それはすみません。

 何しに来た? コリスに会いたいかと思って連れて来たんじゃ。

 嬉しいじゃろ? そうじゃろうそうじゃろう。

 まだしばらく預かって欲しい? は~い。コリス、行くぞ~。


 コリスとスキンシップをとったキョリスとハハリスは、ずっとモジモジして早く帰って欲しそうだったので、意味深な声を聞きながら猫の街に帰った。



 その日、食卓で今日の出来事の話をしていたら、リータとメイバイが食い掛かって来た。


「どうして連れて行ってくれなかったのですか!」

「言ってくれたらついて行ったニャー!」

「えっと……にゃんでそんにゃについて来たかったにゃ?」

「だってキョリスですよ!」

「ハハリスも居るニャー!」

「まさか……戦いたかったにゃ?」

「「はい(ニャー)!」」


 うそ……どんだけ命知らずになっておるんじゃ。一度会った時の恐怖を忘れておるんじゃなかろうか?


「まだ二人には早いにゃ」

「「え~~~!」」

「言ったにゃろ? キョリスは手加減が下手にゃし、ハハリスは残忍にゃ。二人じゃいたぶられて殺されちゃうにゃ~」

「「うぅぅ」」

「それにコリスはリータ達も好きなんにゃ。もしも両親が二人を殺したりしたら、コリスが悲しむにゃ~」

「じゃあ、違う獣と戦わせてください!」

「お願いニャー!」

「う~ん。大蟻は気持ち悪いしにゃ~……いつも行く川より東に、足を延ばしてみようかにゃ?」

「「やった~!」」


 こうして脳筋の二人のお願いを聞いてしまうわしであった。にゃろめっ!


 お願いを聞いたんだから、脳筋に怒って針で刺さないで欲しい……



 そうして翌日……


 コリスも連れて、川まで転移。そこから戦闘機に乗り込み、東へと空を行く。


「どんな強い獣がいるのでしょう?」

「わくわくするニャー!」


 ダメじゃ……リータとメイバイが、どっかの戦闘民族みたいになっておる。強くなり過ぎて、調子に乗っておるのか?

 わしも強くなった時に通った道じゃったな。それでキョリスに痛い目にあわされたんじゃった。ここは、注意しておかなくてはな。


「いいかにゃ? わしも同じ事を思っていた事があったにゃ。それで一度死に掛けたにゃ。おそらくこの先には、二人より強い獣がうようよいるし、わしより強い獣だっていると思うにゃ。だから忘れないでくれにゃ。絶対に自分の力を過信しないでくれにゃ。いいにゃ?」

「「あ……はい(ニャ)」」


 わしが強く言ったせいか、二人はテンションが下がった。でも、わしとコリスを撫で回して、テンションを上げようとしないで欲しい。

 そうして「ゴロゴロホロッホロッ」と言って一時間を過ぎた頃、探知魔法に鳥の反応が引っ掛かる。


「みんにゃ。にゃんか来たにゃ! コリスにしがみつくにゃ!」

「「はい(ニャー)!」」

「コリス。頼んだにゃ~!」

「うん!!」


 わしは指示を出すとコックピットに飛び乗り、リータ達はコリスに抱かれて準備完了。探知魔法では北東から大きな鳥の反応があったが、例え強い鳥で、戦闘機が墜落させられても、コリスエアバックがあるからリータ達の安全は守られる。

 そうして探知魔法の反応を確認していると、戦闘機の方向に向かって来る。黒い鳥だ。それも10メートルオーバーとデカイ。


 鳥さんは、わしの戦闘機を敵だと認識したか。真っ直ぐに向かって来ておる。空だと墜落の危機があるから様子を見るわけにはいかんし、先制攻撃するしかないな。

 さあ、戦闘機の初の実戦じゃ。性能を見させてもらおう。ザコとは違うのだよ。ザコとは……

 う~ん。孫の「こんな時に言いたいセリフ集」。これで合っておったかのう? まぁいいや。ヤッちゃおう。


 わしはどうでもいい事を考えてから、機首を黒い鳥に向ける。そうすると、黒い鳥と凄い速さで距離が詰まり、お互いが攻撃を仕掛ける。


 【風槍】連打じゃ!!


 黒い鳥は戦闘機に向けて【風の刃】を数発放ち、わしは戦闘機に取り付けた魔道具から、小さな槍の形をした風を発射する。

 すると【風槍】は【風の刃】を貫き、霧散させ、ドスドスと黒い鳥に突き刺さる。

 だが、傷が浅かったからか、黒い鳥は墜落せずに、戦闘機とすれ違う事となる。


 なんか丸い鳥じゃったな。スズメっぽかったけど、真っ黒じゃから判別がつかんな。


 黒い鳥とすれ違うと機首を上に向け、宙返りしながら、黒い鳥の上を取って戦闘機の正面に捉える。


 もらった! 【雷砲らいほう】発射!!


 そして、四つ取り付けた主砲の内のひとつを放つ。これは【御雷みかづち】の劣化番。チャージは必要ないが、強力なので、魔道具一個に付き一回しか撃てない。

 ただし、雷なので、当たれば生物には絶大。白い生き物でも感電させる事が出来るだろう。それを防御力の低い黒い鳥に放ったのだから、背中から胸に掛けて貫通したようだ。


「にゃ~はっはっはっはっ。空の覇者が誰かを思い知らせてやったにゃ~! にゃ~はっはっはっはっ」


 戦闘機を通常運転に切り替え、わしの高笑いが機内に響くと、リータとメイバイが冷たい視線を送る。


「私達に過信するなって言いましたよね……」

「シラタマ殿が一番過信してるニャー!」

「にゃ!? ほっぺをひっぱるにゃ~!」


 二人にほっぺたを伸ばされて騒いでいると、探知魔法に何かが引っ掛かった。


「にゃ……ヤバイにゃ」

「どうしたのですか?」

「森から続々と出て来てるにゃ~~~!」

「「へ??」」


 そう。森に群れが翼を休めていたのか、黒い鳥を撃墜げきついした事によって、黒く巨大な鳥達が、次々に戦闘機に向かって来たのであった。

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