334 猫耳の里で観光にゃ~
運行会議の終わった翌日、各国の王はわし逹に見送られ、キャットトレインに揺られて帰って行った。
「にゃんで女王まで手を振っているんにゃ……」
東の国の者を残して……
「サティを送るんでしょ? 同じ日に着くんだから、飛行機に乗って帰ったほうが時間の節約になるじゃない?」
わしがジト目で見ると、こう言う始末……
さっちゃんは帰る日を一日ずらすと聞いていたので、わしが送る事になっている。多過ぎると迷惑になるだろうから、残る人数を絞ったらしいけど、それも迷惑なんだと気付いて欲しい。
「もういいにゃ。それじゃあ誰か付けるから、適当に観光してくれにゃ~」
わしは忙しいからとそそくさと逃げるが、さっちゃんと女王に尻尾を掴まれてしまった。
「にゃ、にゃんですか?」
「報告にあった、猫耳の里を見てみたいのよね~」
「わたしも見たい!」
「にゃ……」
アイめ! 黙っていろと言ったのに、言いやがったな!!
「だ、誰から聞いたにゃ?」
「ジョスリーヌ逹よ。奴隷だった者が暮らしているんでしょ?」
アイさん! 疑ってすみません!!
「だったら察してくれにゃ~」
「ジョスリーヌ逹ですら入った事が無いと聞いているけど、どうしてなの?」
「聞いているにゃろ? 人族を怖がっている者がいるからにゃ」
「何か隠しているんじゃないの?」
「にゃにをにゃ~」
「シラタマちゃん! 連れて行ってよ~」
「揺らすにゃ~! 挟むにゃ~! そこは触るにゃ~~~!!」
こうして我が儘な二人に前払いで料金を支払われ、猫耳の里観光を許可させられるわしであった。
連れて行ける人数は二人だけ。これだけは譲れない。残りの東の国の者は、リータ逹に面倒を見てもらい、女王とさっちゃんには質素な服に着替えてもらう。
猫耳セットアップまで付けさせれば準備完了。コリスも積み込み、南東門からバスを走らせる。
猫耳の里までは森を切り開き、キャットトレインの線路も作られているので、バスを猛スピードで走らせても問題ない。
そうしてあっと言う間に猫耳の里に着くと、とある大きな建物の前で車を止めて、さっちゃん達と共に降りる。すると、さっちゃんから質問がやって来た。
「シラタマちゃん。ここが猫耳の里なの? 家が一軒しかないわよ?」
「ああ。地下にあるにゃ」
「地下??」
「離れないようについて来てくれにゃ」
わし逹は建物に入り、働く猫耳族を横目に、奥へ奥へと進む。
「猫耳族ばっかり! でも、みんな何をしているの?」
「この里では、加工品を作っているにゃ。それをキャットトレインに積み込む準備をしているみたいだにゃ」
「つまりこの施設は出荷場になっているのかしら?」
「まぁそんにゃところにゃ」
さっちゃんと女王の質問に簡単に答えていると、一番奥の扉に辿り着く。その扉の前には猫耳族の男が扉付近を見つめて立っているので、少し言葉を交わし、扉が開くのを待つ。
待っている間もさっちゃん達の質問に答えていたら、ベルが「チーン」と鳴り響き、猫耳男が扉を開いた。中には荷物が乗っており、猫耳男の指示の元、猫耳族が集まって荷物を運び出す。
「こっちにゃ」
わしを先頭に、荷物が入っていた場所に行こうとすると、女王とさっちゃんは不思議そうにわしに尋ねる。
「シラタマちゃん。そっちは行き止まりだよ?」
「そうよ。そんな所に入ってどうするのよ?」
「いいから入ってにゃ~」
わしのセリフに、二人は渋々中に入り、扉が堅く閉められる。すると二人は扉の方向に振り返り、少し緊張した顔になる。
「シラタマちゃん?」
「「え??」」
扉が閉まり、二人は心配そうな声を出した直後、わし逹の入った部屋は動き出した。
「な、なに?」
「変な音がするわよ?」
「反対側を向いて見るにゃ」
「反対側??」
「「うわ~~~」」
二人は扉から逆に顔を向けると、小窓に顔を近付ける。その窓からは、猫耳の里が一望できる絶景が広がっていた。
「シラタマちゃん! すごい!!」
「部屋が下に動いているのね。どうなっているのかしら……」
この部屋は、そう。エレベーターだ。
猫耳の里は地下にあるので、加工品を持ち出すには長い
その姿を見ていたわしは、何かいい案が無いかと考えて、エレベーターを作る事を決めた。動力を人力か牛を派遣するかで悩んでいたが、キャットトレイン製作と平行で考えていたので、モーターを使う事に決まった。
エレベーター製作で一番の難所は、停止装置。センサーも無いので、そんな物は作れない。なので、中の部屋を引き上げるロープの色の違いで、当番がスイッチを押して、スピードを落としたり、停止をしている。
いまのところ事故もミスも起きていないと聞いているので、安全に気を付けて使い続けて欲しいものだ。
電力は、二日に一度、ソウの街からキャットトレインが来ているので、電池となる魔道具を交換する事で安価になっている。ただし、エレベーターは電力を喰うので、基本は荷物専用。少人数で乗る事は禁じている。
え? わし達が乗ってるのはいいのか? いいに決まっておる。だって、王様じゃもん……帰りに魔力を補充しま~す!
ちなみにソウの地下空間も、荷物を運ぶのに苦労があるから、エレベーターを取り付けてある。
二人の感想を聞いていると、「チーン」と音が鳴り響き、扉が開かれる。扉を開けた女性は荷物が入っていると思っていたのか、わしを見て、慌てて挨拶をするので、謝って里の入口に向かう。
「さっきの人、コリスちゃんを見るより、シラタマちゃんに驚いていたわね」
「コリスとは、何度も足を運んでいたからにゃ。さっきのは、王様がいきなり現れたらビックリしただけにゃと思うにゃ」
「ふ~ん」
若干、自信はないが、猫で驚いたわけではないはずだ。
そうして、猫耳の里の観光。建物について聞かれたけど、それ以外は変わった事もなく、面白味に欠けるようだ。
なので、米や大豆の加工品の工場見学や味見をさせてみた。作物は猫の国でしか作っていないので、マネする事は難しいから見せても問題ない。
二人は作物が食材に変わって行く姿を初めてみたらしく、なかなか好評だったが、もっと面白い物を作ってないのかと聞かれた。
キャットトレインはここで作ってないのか? なんでそんな事を聞くんじゃ? まさかここに来たがったのは、その為か?
わしが質問すると、二人は撫で回して来たから、絶対キャットトレインの製造法を探りに来たと思う。子供逹の笑い声が聞こえて来たら、わしを放り投げて走って行ったし……
いちおう製造法はうやむやになったので、さっちゃんと女王を追って、子供達のやっている事の質問に答える。
「シラタマちゃん。アレは何をしているの?」
「アレは……報告にあったサッカーね」
「女王の正解にゃ。ちょっと見て行くかにゃ?」
「うん!」
わし逹はサッカーグランドに近付き、テーブルセットを出してお茶休憩。二人には簡単なルールを説明し、ある程度理解すると、さっちゃん達は興味津々でボールを目で追う。
「あ! 入った!!」
「これで二対一みたいだにゃ。さて、制限時間まで逃げ切れるかにゃ~?」
「接戦なんだね。面白い!」
「面白いけど、何か揉めてるわよ?」
「あ、本当にゃ。ちょっと行って来るにゃ」
わしが揉め事が起こっている子供逹の輪に入って話を聞くと、さっきのシュートの前に、ズルがあったようだ。
いわゆるオフサイド。いつも待ち伏せをしてシュートを打つから、怒った皆から猫耳少年が責められていたみたいだ。
「にゃはは。君は賢いにゃ」
「ですよね?」
「じゃあ、新しいルールを付け加えるにゃ。待ち伏せは禁止にゃ」
「え~!」
「元々、そう言うルールのゲームなんにゃ。今までは、説明してもわかってもらえないと思っていたんにゃ。でも、いまにゃらわかるにゃろ? 簡単にシュートが入るんだからにゃ」
「う~ん……」
「君にゃらわかってくれると思ったんにゃけどにゃ。それじゃあ、Bチームに新しい戦術を教えてあげるにゃ。集まれにゃ~」
わしはBチームに戦術の説明を終え、さっちゃん逹の元へ戻る。
「何か話をしていたけど、解決したの?」
「たぶんにゃ。あ、始まったにゃ」
中断していた試合が始まると、Bチームの動きが変わった事に女王が気付く。
「Aチームは全員固まって動いているけど、Bチームはまばらに散っているわね」
「あ、本当だ。なんだか、Aチームは
「パスワークってやつにゃ。ほれ、そんにゃ事を言っていたら、シュートが決まりそうにゃ」
Bチームは、ぎこちないがパスを回して、なんとかペナルティエリアに近付く。そしてセンタリング。高く上がったボールに、Bチームの子供が頭で合わせ、ヘディングシュートがゴールに突き刺さった。
「ゴ~~~ル! きれいに決まったね~」
「にゃはは。残り時間は少ないけど、このまま逆転するかもにゃ~」
「なるほどね。チームワークが決め手のゲームなのね」
「もっと上手くなれば、華麗なプレーが見れて、手に汗握る試合になるにゃ」
説明を聞いた女王は、わしの考えを予想する。
「はは~ん……これも広げたいわけね」
「そうにゃ。貴族にはゴルフをやらせて、平民にはサッカーをやらせれば、娯楽が増えて見物人も楽しめるにゃ」
「楽しめるね~……目的はそれだけ?」
「まぁ金儲けも目的のひとつだけどにゃ~」
「他にもあるの?」
わしの考えは女王の予想の上を行っていたようなので、真面目な顔になって、熱く説明する。
「例えばにゃ。ゴルフやサッカーを通して他国の者と触れ合えばどうにゃ? 同じ競技で一喜一憂し、汗を流せば仲良くなれないかにゃ?」
「たしかに……」
「仲良くなったら、戦争が起きそうな時に、隣の国の友達の顔を思い出して、殺す気が鈍らないかにゃ? いや、戦争をしたくないと、国を止めてくれないかにゃ?」
「う~ん……難しいでしょうね」
「だろうにゃ~。でも、可能性は否定できないにゃ。猫耳族も人族も、このサッカーを通して仲良くなって欲しいにゃ~」
「フフ。そうね。西の王だって、あれほど意見を変えたんだから、きっと良くなるわよ」
わしが理想を語り、女王が笑いながら肯定する。だが、女王の笑い方は
そうして女王と話をしていたら、試合終了間際、Bチームがシュートを決めて、逆転勝ちを収めたのであった。
わしは終了の笛の音を聞くと子供逹を集め、先ほどの戦略を説明する。すると子供逹は、待ち伏せをするよりかっこいいプレーだったと目を輝かせ、練習すると言っていた。
わしはこれならばと、正式なルールブックと練習方法を手渡し、上手くなったら猫の街の選手と試合をしようと言って、女王逹の元へ戻る。
そこでわしが近付くと、さっちゃんが目を輝かせ、わしの手を握って来た。
「シラタマちゃん!」
「にゃに?」
「東の国でも流行らせたい!!」
「……だってにゃ?」
「フフフ。じゃあ、サティが頑張ってみる?」
「はい!」
さっちゃんのやる気を女王に振れば、さっちゃん主導でサッカーの普及に努めてくれる事に決定した。
ひとまず話し合いはお昼を食べながらする事にして、セイボクの屋敷に押し掛ける。わしが猫耳の里に来ていた事は筒抜けだったので、料理を用意してくれていたようだ。
女王に食べさせるには少し質素だったが、文句を言わず食べてくれた。その時、セイボクだけには女王とさっちゃんを紹介したら、鼻の下を伸ばしていた。
人族は嫌いだけど、絶世の美女は別のようだ。でも、女王の胸を注視するのは、失礼だ。わしが恥ずかしいからやめてくれ。
昼食とサッカーの話を終わらせると、エロジジイは無視して観光を再開する。
見る所は棚田しか残っていないので案内するが、下からでは見えづらいので、わしはさっちゃんを、コリスは女王を抱えて、てっぺんまで跳んで登った。
「うわ~」
「変わった栽培方法ね」
「ここは土地が限られているからにゃ。縦に伸ばすしかなかったんにゃろ」
「なかなか面白い物が見れたわ」
「まぁ猫の街よりは、見る所はあったかにゃ?」
「そうね。でも、一番はアレね」
「アレってなんにゃ?」
「アレだよ~」
「あ~……アレはあげないにゃ」
「「なんでよ~~~!!」」
当然、女王とさっちゃんはエレベーターをご所望して来たので、わしは断り続け、おねだりは東の国に送り届けるまで続いたとさ。
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