047 強い敵が来たにゃ~
ハンターからの襲撃から三日。暇だと騒がれ、ソフィ達に戦闘の
仕方なく、さっちゃんを楽しませる為に、土魔法で
午後には復活したソフィ達も遊びに参加して来たが、筋肉痛が辛そうだった。
う~ん。次はカルタでも作るか? 文字は苦手じゃし、英語の
さっちゃんとわしの勉強にもなるし、ソフィ達の暇潰しにもなるからちょうどいいじゃろう。
と、言う訳で、次の日はカルタを作る為に皆を集めた。紙は用意してもらったので、問題の強度は土魔法でコーティングする事にする。
「諺ですか?」
「この二種類の紙に、アルファベット順に諺の全文と、下半分の文を分けて書いて欲しいにゃ」
「そんなにですか?」
「少ないぐらいにゃ。二周はいるにゃ」
「なかなかいい諺が見つかりません」
「猫ちゃんも考えてよ」
「わしは文字を覚えて間もないから無理にゃ。諺が見つからないにゃら、適当なストーリーを考えて当てはめればいいにゃ」
一時間後……
適当なストーリーを作れと言ったわしをぶん殴りたい! どうしてこうなった?
「ベッドに潜り込み~」
「ハイ! よく眠るシラタマちゃん! 取ったよ」
「それでは次を読みます。いつも抱き抱えると~」
「ハイ! すぐに逃げ出すシラタマちゃんね!」
「ハズレです。いつも抱き~」
「ハイ! 胸でスリスリするシラタマちゃん! これですね」
「正解です。では、次~」
なんでわしがいちいち登場するんじゃ! あぁ、恥ずかしい。胸でスリスリって、わしがセクハラしてるみたいじゃ! そんな事は……した事無いぞ。ホンマホンマ。
よし。みんなが忘れた頃に燃やしてやる!
わしは羞恥心に耐え、固く心に誓うのであった。
翌日、屋敷にこもってばかりいても健康に悪いと言いくるめ、馬車に乗って近くの丘までピクニックにやって来た。羞恥心カルタ大会はわしの心に悪いので、前日から執事のセベリに、いい場所は無いかと聞いていた。
セベリから綺麗な丘だと聞いておったが、花が多く咲き、小高い丘から見渡す湖は絶景じゃ。いい場所を紹介してくれたのう。花の苗をお土産に持って帰るのもいいかもしれん。
「風が気持ちいい」
「そうですね」
「天気もいいです」
「湖がキラキラしてきれい」
来てよかった。みんなも喜んでおるのう。
わしは次元倉庫から、セベリに用意してもらったピクニックシートのような大きな布を敷き、昼食のサンドイッチや紅茶、果汁ジュースを取り出す。
日差しもまだ強いので、以前作ったパラソルも付けておいた。
「テーブルじゃないんだ」
「ピクニックにゃらこれにゃ。青空の下で寝転ぶと気持ちいいにゃ」
「そうだけど、また変なこだわりね」
「気にするにゃ」
皆で和気あいあいと外で食べるサンドイッチは、いつもの物より美味しく感じた。わしがジュースに氷を浮かべて飲んでいたら、全員にせがまれ、なんでこんな便利な魔法が使えるのに教えてくれないのかと怒られた。
セベリに見せたから、全員知っておると思っておった。失敗したのう。
昼食が終わると皆で横になる。しばらくすると気持ちいい風に混じってスースーと何人かの寝息が聞こえてくる。皆の寝顔を眺めていると、わしも眠りたくなるが、そういう訳にはいかない。
「ホントにご主人様はのんきね」
「まぁそう言うな」
「今度の奴は強そうなのが五人いるわね」
「五人? 俺が全員やってやるよ」
「あんた一人じゃ無理よ」
エリザベスも、わしが教えた探知魔法が使えるから気付いたみたいじゃな。強さまでわかるとは、たいしたものじゃ。
ルシウスは敵をまだ視認出来ていないから大層な事を言っておるが、わしの見立てでは、一人、王国最強の大剣使いの騎士と近い力がある者がおる。
その他もソフィ達より少し強いかもしれん。兄弟達も四人相手では厳しいじゃろうな。じゃが、ソフィ達と兄弟達が協力すれば楽勝じゃ。
王国最強の騎士の力を見極めるのにちょうどいい相手じゃし、タイマンでやらしてもらおうかのう。
わしは相手の力を試したく、変身魔法で人型になる。着流しを着て、久し振りに【白猫刀】を腰に差す。そして、眠っているさっちゃん達を起こす。
「ん、んん~……どうしたの?」
「シラタマ様、その姿は……敵ですか?」
「そうにゃ。手練れが五人、近付いて来てるにゃ」
「なんでわかるの?」
「猫の勘にゃ。みんにゃには、兄弟達と協力して闘って欲しいにゃ」
「シラタマ様はどうするのですか?」
「わしは一番強い奴をもらうにゃ」
「一番強いって……どれぐらいですか?」
「オンニだったかにゃ? それより少し弱いくらいかにゃ?」
「そんな者がいるのですか……」
「残り四人も強いけど、みんにゃで協力すれば必ず勝てるにゃ。そろそろ見えて来るにゃ」
わしはまだ小さな五人の人影を指差す。ソフィ達は視認すると、急いで準備をする。わしがオンニの名を出した時には少し
ソフィ達が準備をしている横で、わしはピクニックセットを次元倉庫に片付け、土魔法で土を軽く掘る。そして、中が空洞の硬い円柱をくっつけて
安全重視だと説得したが、結局わしが折れ、何かが飛んで来たら必ずしゃがむ事を条件に、さっちゃんの目線に合わせた小窓を数箇所付ける事となった。
わし達の準備は整ったので兄弟達を交えて軽く打ち合わせをしたが、敵はまだ来ない。来るまで暇になったので、テーブルを作って氷の入ったジュースを振る舞った。
さっちゃんも飲みたがるので塹壕の中に入って、ミニテーブルと椅子を作り、ジュースの入った水差しとグラスを出しておいた。
こうして、敵が来るまでしばらく談笑タイムとなり、緊張感はどこかに行ってしまった。
「おいおい。本当に護衛は女三人だ」
「金も貰えて女もヤレる」
「美味しい仕事だな」
「俺はあの女をもらうぞ」
「待て待て。仲良く回そうぜ」
わし達が和やかに談笑していると、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべ、下品な事を喋りながら五人の男がやって来た。ソフィは嫌悪感を顔に
「何者だ!」
「お前達の最後の男だよ」
「「「「ギャハハハハハ」」」」
「き、貴様ら~」
あ、ソフィがキレそう。
「おい! お前、王女がいないぞ。どこに隠した!」
「誰が言うと……」
男の言葉に、ソフィが答えようとすると、さっちゃんが
「私はここよ! ちょっとシラタマちゃん、持ち上げて!」
「にゃ? 別に顔を出さにゃくてもいいにゃ」
「いいから! もう!」
さっちゃんは、わしの作ったミニテーブルに足をかけて、塹壕の上から顔を出す。
「わたくし第三王女サンドリーヌは逃げも隠れもしないわ! かかって来なさい!!」
「さっちゃん。もう隠れてたにゃ~」
「あ……」
「「「プッ……アハハハハハ」」」
「「「「「ブハハハハハ」」」」」
敵も味方も心に思っていたせいか、我慢できずに吹き出した。その笑いは止まらない。さっちゃんは怒って叫んでいるが火に油となって、笑いは数分続いた。
「もう怒った! お前達、やっておしまい!!」
さっちゃん……その言い方はやめてくれんかのう。なんだかわし達が悪者みたいじゃ。でも、女を犯そうとする悪党は、わしの最も嫌いな人種じゃ。目に物見せてやる!
わしは塹壕から飛び出す。そしてソフィ達と兄弟達より前に着地し、【白猫刀】を抜き、男達を挑発する。
「さあ! かかって来るにゃ~!!」
「「「「「ギャハハハハハ」」」」」
「猫のぬいぐるみが喋った!」
「猫が剣を……ハハハ」
「ハァハァ。もうやめてくれ」
「シラタマ様……ブフー」
「ソフィ……アハハハハ」
「なんにゃ! 真面目にするにゃ~~~」
「「「「「「アハハハハ」」」」」」
わしが登場する事によって、落ち着いていた笑いが再燃する。また、笑いが収まるのに数分要する事となった。
「ハァハァ。笑った~」
「こんなに笑ったのは初めてです」
「す、すみません……フフフ」
「みんにゃひどいにゃ」
「ホント、ひどいよね」
わしとさっちゃんはソフィ達を非難し、慰め合う。
こいつらわしを笑ったし、全員殺してもいいじゃろ? さっちゃんの目は許可すると言っておる。こういう時は、孫の言いたいセリフ集から抜粋して、恐怖に落とし入れてやる!
「全員、血の海に沈めてやるにゃ~~~!」
「「「「「ギャハハハハハ」」」」」
「笑うにゃ~~~!」
「「「「アハハハハ」」」」
「さっちゃんまで~~~!」
わしが悪いのか? わしの見た目が……うん。悪いかも……
わしの脅し文句にも大爆笑が起こり、なかなか戦闘が始まらないのであった。
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