第12話 幼女が謎の振動する器具でオレを前後から(後編)


「いや、ここにそんなもんあるわけ」


「そこにあったわよ」


 すると、あくまちゃんが指刺す先で、妹ちゃんが新たに空間そのものをバカリと開けて中をまさぐっている。


 あ、――アレは!


「冷蔵庫勝手に開けないでください!!!」


 そう、なんかしらんがオフィスに秘匿されているガー様の冷蔵庫の扉である。


 まぁ、オレでも見つけられたんだから、悪魔は見つけるか。


「ここにねー、たくさんあったのー」


「ねー♡」


「そんな、そんな事があるはずが……」


 いやいや、それよりもまずね?


「つーか、あくまちゃん。人んちの冷蔵庫勝手に開けるのはご法度じゃない?」


 ところが、あくまちゃんはそこでフフン、といかにも小生意気に鼻を鳴らした。

 

「悪いけど、「他人の家に入りこんで勝手に冷蔵庫を開ける」までは悪魔として推奨されるムーブよ!」


 どういう生き物なんだオマエラは。


「ごめんね? カワイイからゆるして♡」


 自分で言うのかよ。うーむ、なんという凶暴な生態!


「――でも許しちゃう!!」


 カワイイからね! これで可愛くなかった場合はお察しだ!


「それを決めるのは私のハズなんですが……」


「うふふ。でも中年おじさんのアへ顔ダブルピースって、反応に困るわね♡」


 困ったように言うな! 笑えばいいじゃない!!(逆ギレ 


「ちなみに、これは種族特性として尊重されなければならない文化様式なので、これを害しようとする言動はすなわちヘイトと見なされるわ!」


 悪魔ちゃんがここぞとばかりにツッコんで来る。


 な、なんだって―!


 って、知るかバカヤロー。ヘイト認定が怖くて異世界転生が出来るかよ! 

 

「…………ッ」


 でも黙っちゃうのがガー様なんだよね。カワイイ人だねまったく。


 やれやれ。


「わかった。冷蔵庫開けるところまでは許そう。ただし、――危険な物を持ち込んだことは許されヘンぞ! ――ナンヤコラ!」


「ぴぃ!」


「ナンヤ! キイトルンカ!! ナンヤ!」


「いや! 怖い! やめて!」


 あくまちゃんズは震えあがった!


 ククク! 悪魔にも関西弁は有効なようだな。※


 関西弁でキレられると余所の人間は言葉が通じなくても萎縮するという。


 このネイティブな関西弁が悪魔を除ける術として注目されているという説は、皆さんも一度は目にされていることであろう。


 近年、多くのエクソシストがネイティブな関西弁を学ぼうと日本を訪れているのにはこのような理由からなのだ。


「……出来るなら最初からやってください」


 言うな。オレとしても関西弁は最終手段なのだ。


 その実オレも疲労感から膝を突いている。関西人でないものが関西弁を扱うことの禁忌である。


 多くのエクソシストたちも命を削って関西弁を唱えているのだ。


「でも、持ち込んでなんかいないわ。ホントに中に入ってたのよ?」


 んー? ナンヤさえずるのぅ。


「でもなぁ、この冷蔵庫使ってるのってガー様とオレと後輩ちゃんだけだよね?」


「本来私だけのハズなのですが……」


 つまり、その中に犯人がいる。というわけだ。


 ……じゃああのはすっぱな爆乳か?


「それはないでしょう。そもそもここまで持ち運んだ時点で発覚します」


 じゃあ。もう誰もいなくない?


「ちなみに、素材ってどんなものがあったん?」


「んー、こんな感じ」 



・冷蔵庫から見つかった素材(一部)



転生者への罠ベヘリット


使われなかった力帯メギンギョルズ


不誠実な金枝ロカカカ


艶のあるモンスタージョーカーズ・ペイン


真三種の神器ヌンジャ・レガシー


ジェバンニのアレアナザー・デスノート


禁じられた超人役コンパウンドV



etc……



「な、なんでこんなものが!?!?」


 ガー様は声を上げる。――がオレ的にはなんだか見え覚えがあるような? あれれ?


「あー、そうか。オレだオレ。転生した先で危険だからって持ち帰ってきた呪いのアイテムだ。ここに入れといたんだ」


 ズコーッ!! っとガー様が椅子ごとすっ転ぶのが見えた。


 いやー、失敬、失敬。忘れたわ。


「忘れたで済むか――!!」


「グワーーーッ!!!」


 床面を一気に埋め尽くした紫電が波打ち、オレを天井まで跳ね上げた。――ガチな攻撃やんけ。


「いや、ちょっと待って待って。記憶処理のせいだって。マジ忘れてたの」


 オレは天井に着地しつつ弁明する。これは仕方なくない?


「それなら、入れる時に一言あるでしょう!!」


 あ、ホントだ。オレが悪いわ。でも面倒だったんだもの。仕方なかった。仕方なかったんや……。


「てへー♡」


 許してね♡


「ダメですが?」


 くそ! 許されない! 理不尽!


「じゃ、話もまとまった(?)ところで、次行くわよ」


「おー!」


 いかん。次の工作が始まってしまう! 次もきっと「SSS」ランクだ!


「マズイですって。止めないと。――ね? ね?」


「――致し方ありません。降りてきてください」


 ちなみに天井に今も張り付いたままのオレ。だって怖いからね? 仕方ないね。


 でも降りていって大丈夫だろうか? 不意打ちしない?


「早く来なさい!」


 ――チッ! しゃーねーなー。


「もしもの時のためのものでしたが、仕方が有りません」


 などと言って、ガー様は何かを取り出す。

 

「なんですのん?」

 

 そこには三つのハコのようなものがあった。素材は不明だがシンプルな代物だ。


「概念的に、どんなものでも確実に捕縛することのできるアイテムです」


「ファ!?」


 つまりは、マスターボール? オレはついにポケモンマスターに!?


「概念もいけますので、それ以上です」


 いやツッコめや。まぁ事が事だ。今はいい。――さて、悪魔ちゃんズは……


「ファイナルフージョン、承認!!」


「これが、勝利のカギだーーッ!!」


 いかん、すでに合体シークエンスに入っている!

 

「どうすれば使えるんだ!?」


「えー、仕様書によりますと、まず三重に掛かっているロックを外し、6秒間置いた後、付属のパスワードを入力……パスワードとはどこに……」


 ガー様はやたらと分厚い仕様書とやらをばさばさし始める。


 ――オーケイ。解った。絶対間に合わねぇ! なんだそのクソ仕様書は!


「がったい!」


「さぁ、今にも合体してしまうわ。もうすぐよ。この合体してしまうの!? ああ、後はこのまままっすぐ行くだけよ!」


 ぐぬぅ! 煽りよる! こうなれば、オレが時間を稼ぐしかあるまい!


「ガー様、それ、使えるようしといて!」


 そういって、オレは幼女たちの手の中でビクンビクンしている汚物のような二つの物体の間に――自らの身体を滑り込ませた。


「ぐわあああああッッ!」


「あー!」


「もう、邪魔しないで!」


 すさまじい邪気と衝撃が俺の五体を突き抜けていく。なんという邪悪なエネルギーだ。


 ――というか、 


「ぐぬぅ。二人の美幼女が謎の振動する器具で前後からオレを責め立ててくるなんて!!!  こ、これは――――新しい!!」


 未知の快感も同時にオレを襲う。――クソ、オレはいったいどうしたらいいんだ!?


「バカなこと言ってないでさっさと封印しなさい!!」


 ガー様は準備の出来たらしい箱を投げてよこす。お、コントロールいいねお姉ちゃん。


 オレは悪魔ちゃんの手に会った謎の汚物を取り上げると、その箱の中に叩き込んだ。


「「あーー!」」


 悪魔ちゃんズが声を上げる。オ、オレは成し遂げたのか……。


「ひどーい!」


「ホントにひどいわ。あった素材全部使ったのに!」


 どうやら成功のようだな。呪われた物品も綺麗になくなって万々歳だぜ。


 オレは血だらけのままサムズアップするが、ガー様はとにかく疲れたような顔を見せている。


 けどその蒼ざめたお顔ももまたお美しいぜ。






「とにかく――全員、これからは人の冷蔵庫を勝手に開けないと誓いなさい!」


「ひどいわ。ヘイトよ!」


 ガー様も意を決した様で、お説教が始まる。まったく、反省しないとだめだぞぉ!


「アナタもですからね?」


「ファ!?」


「ねぇー、おねぇさまー」


「どうしたの?」


「これどうしよう」


 そこには片割れを失って未だにぎゅいんぎゅいんと唸っている汚物があった。


「もうどうしようもないから、捨てるしかないわね。ゴミ箱どこかしら?」


 いえその……ゴミ箱で済むような代物には見えないんですが……。


「な、なんで両方まとめて函にいれなかったんですか……」


「言われてみればそうだなぁ……てへ♡」


 無言でひっぱたかれた。


 なんでだろう? 今までで一番痛い気がするんですけど?


「ねー、ゴミ箱はぁ?」


 妹ちゃんがひっぱってくる。マズいマズいマズい! どうする!?


「ち、ちなみにこの後ってどうなるの?」


「爆発するだけよ。もうどうにもならないわ。魔素汚染が残るくらいだから大したことないともうけど」


 それってドユコト?


が魔界になってしまうという事です!! 早く何処かににやってください!!」


 どこかにって言ってもなぁ。てか、悪魔ちゃんの狙いってさいしょからコレだったり?


「てへー♡」


 マジかよ。諦めてなかったのか!? この幼女マジ有能!


 しかし、幼女の手の中でビクンビクンし続けるそれはいよいよ後がないまでに膨張し赤熱している。


 ――なんだか微妙に触りたくねぇなぁ。


 だがオレはそれを受け取り、仕方がないので手ごろな場所に放り込んだ。


 ふぅ、危なかった――。


「んなぁぁぁぁぁあああああッ!?!?!?」


 とそこでガー様が悲鳴を上げた。


 なぜだろう? 放り込んだ先がガー様の冷蔵庫だったからだろうか?


 まぁね? でもね? 職場全体がが吹っ飛ぶよりは冷蔵庫一個で済むわけで……。


「この冷蔵庫は私の家までつながってるんですよ!?」


「え?」


 そうだっけ? いや記憶がさ……


「このままだと私の家が――」




 ちゅどーん!!!




 と、そんな音が聞こえた。


「……」


 恐る恐るガー様を見ると、立ったまま失神しているようであった。


 ああ、しかし白目をむいたあなたも御美しい――とはちょっと言い難いなこりゃ。


 ちなみに悪魔ちゃんズの姿は当然のようにない。


 さて、――じゃあ俺も逃げるか。


 

  

 








補足(だいぶどうでもいい話ともいう)


・自然と出てきたネタがどれもくそ古い!



牙狼(第一期) 2005年~


GetBackers   1999年~


ガオガイガー  1997年~



考えてみればどれも年代物である……気づけば歳を取ったものだ……。


……悲しい!!! 






・関西弁


 なんか書いてるうちに悪魔たちが関西弁を恐れたので勢いで書いた。


 当然民〇書房的なアレなのでホンキにしないでネ? 


 個人的に好きなので「ダンゲロス」の『英検』的な立ち位置に持っていけたらいいんじゃないかと妄想中。


 ダンゲロス1969 めちゃ面白いよ!



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