第7話 秘密のセレモニー

「ひかり、ホントにごめん。俺のファンが迷惑かけて」

開口一番、進也は謝罪の言葉を口にした。

「やめて、あなたが悪いわけじゃないわ。アイドルをしていたら、いつかはこういうこともあるって覚悟はしていたわ」

そう言うと、進也はやっと顔を上げ、少し笑った。

「あの時……そばにいたのが千秋じゃなくて俺だったらって何度も思った。少しだけ妬いたよ、あいつに」

「千秋に?」

「あーあ、ホントは世間にだって言っちまいたいよ。香坂ひかりは俺の彼女だー、手出ししたら、傷つけたら承知しねーって」

珍しく語気を荒げる進也に私は笑いかけた。

「それは私だって同じよ、進也のファンの女の子たちには毎日嫉妬の連続。樋口進也は私の彼なんだからって。知ってる?進也は今、国民の王子様って言われているのよ?」

「それはひかりだって一緒だろ?男子高校生、大学生の半分はひかりのファンだよ。それに、そのお父さんやお母さんだって虜になってるって聞いたぞ。なんてったって、ひかりは星(エトワール)だからな」

「うう・・・・・・そのキャッチフレーズ、あんまり好きじゃないのよ……今でも時々からかわれるし」

「別にいいだろ?俺は好きだよ、ひかりのキャッチフレーズ」

『好き』と言う言葉に反応し、頬が熱くなる。進也に気づかれないようにそっと横を向いた。

「なあ、一連のことが片付いたら一度デートしないか?映画館にでも、どう?もちろん変装はしなきゃいけないけど」

「ホントに?夢だったのよ。いつも歌詞には出てくるけど、実際に恋人らしいことってしたことないんだもの」

「まあ,の後で何考えてんだー!って言われそうだけどな。でも、いつか絶対にしよう」

頬に柔らかい感触。驚いて進也を見ると、いたずらっ子のような表情で笑っていた。

「デートしたときには唇を奪うからそのつもりで」

そう言って部屋を出ていく進也は本物のプリンスさながらだった。

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