第2話 私の彼は

 移動中の車でまどろみながら、彼のことを考える。

 樋口進也は今一番勢いのある男性アイドルだと言われている。デビューして三年目、プロマイドの売り上げは№1、音楽番組にも引っ張りだこでレコードセールスランキングも一位の常連。正統派アイドルらしく、かっこかわいいルックスに少しお茶目な性格。秀でた歌唱力にも恵まれ、幅広い年齢層に支持されている。

 そんな進也に告白されたのは三か月前。最初はからかわれているのかと思った。同期として一緒にいる時間が長すぎたのかもしれない。でも私も惹かれていたのも事実。私からも気持ちを伝えた。

 晴れて両想いになった私たち報告したのはいつも励ましあい、切磋琢磨してきた同期の中でも特に仲のいい花梨と千秋だった。二人とも驚いてはいたけど、祝福してくれた。今まで秘密にしてこられたのは二人の功績も大きい。

「アイドル」は恋をしてはいけない。ましてやお互いに「アイドル」。普通のカップルのようにデートはできない。現場でハイタッチをしたり、お互いの仕事や学校に支障ない範囲で電話をするのが精一杯。

 いつか、普通の恋人同士みたいにデートができたら、ファーストデートはやっぱり映画館かしらね……そんなことを考えながら、私は深い眠りについた。

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