第23話 《決戦・エンゼ03防衛戦》②


 思わぬ攻撃は地面の下からやって来た。突起する地面。大地そのものがルルディの腹目掛けて隆起してきた。土属性の魔法でギリギリのところで防御するルルディ。しかし、ここで驚くべき事実が発覚する。

「違う属性の魔法を同時に発動した!?」

「そんな有り得ない!」

 メルカと神輿が驚愕を露わにする。禍々しい風がさらに強くなる。

「あら? これにも驚きます? どれだけオリジナルは未完成なんですかね……ま、なんでもいいですけど」

 炎の剣で鍔迫り合っていた二人。しかし今のを見て警戒した神輿が距離を取る。それとほぼ同時に地面が鋭く隆起する。

「良い勘してますねぇお姉さん」

「なんで神輿はお姉さんで私は……!」

「お、落ち着いて下さぁいメルカさぁん」

 憂さ晴らしか、作戦か魔力弾をばら撒くメルカ。防御に回る仮面の魔法少女。しかし、同時に二つの魔法を使えると知った今、迂闊に近づく事が出来ない。

 だが、ルルディは構わず風属性で加速、突撃した。

「あなたが私より上の存在であったとしてもーー!」

 炎を構える仮面の魔法少女。放たれる魔力弾。躱すルルディ。しかし読んでいたように避けた場所に落とし穴を仕掛ける仮面の魔法少女。ルルディはそれを

「へぇ……」

「まだまだぁ!」

 風属性で加速を続けるルルディ、仮面の魔法少女の攻撃を躱し続け、懐にまで迫っていく。

「捕まえたぁ!」

 土の壁に隠れた仮面の魔法少女だったがその壁を神輿が横から一閃崩してやる。阻むモノが無くなった場面でルルディは仮面の魔法少女に飛びつくように抱きしめたのだった。

「ナイス! ルルディ!」

 メルカから喜びの声が上がる。仮面の魔法少女はどこか亡羊としたような様子で地面に押し倒される。

 喉元に炎の剣を突きつける神輿、それにも反応は薄い。禍々しい嵐の中、エウメニデスが仮面の魔法少女の下へと集結する。

「な……はぁはぁ……なんですか……これ……はぁはぁ」

 息を荒げている仮面の魔法少女。

「自分の風邪魔法ッス! いやーここまで全開にしたのは初めてでしたけど上手く行きましたね!」

「何が上手く行きましたね! よ、こっちはあのおどろおどろしい色付きの風にいつ目の前のコイツが気づくか気が気じゃなかったわよ」

「それは、仕方ないッス。何せ全開だったもんで」

 開き直る鈴。メルカがため息を吐く。

「というわけでアンタは今、魔法で風邪の諸症状を感じているような状態なのよ。ギブアップしてくれるかしら?」

「あー、自分には、くしゅん! その権限は与えられて……へっくしょん!」

「まずはこのけったいな仮面からはがしちゃいましょ」

 メルカが仮面に手をかける。仮面の魔法少女が力無く抵抗するがあっけなく仮面は剥がされた。そこにあったのは。


「ルルディ……?」


 ルルディと瓜二つの顔、エウメニデス全員に衝撃が走る。ルルディは特にショックを受けている。

「どうして私と同じ顔……!?」

「あー……バレちゃったみたいですねー……でも無信仰殺戮計画までは話さなくてもいいですよねー……あー」

「ちょっと! 何よその不穏なワード! しかもうちの姉が喜びそうな奴!」

「神子様と同じに作られた私達は……ってあーダメダメへっくしょん!」

「神子!? 今、アンタ神子って言った!?」

「ルルディが神子で、それと同じに作られた模造品? それで誰かが無信仰殺戮計画とやらを行おうとしていると?」

「私が神子?」

「ミコってなんスか?」

「あのぉ……一旦、どこか落ち着ける場所に移動しませんかぁ?」

 フィズィの提案でエウメニデスは本社に戻る事になった。エンゼ03に戻らないのは、戻れば元仮面の魔法少女が処刑される事が間違いなかったからだ。

 全員鉄騎に乗り込む、元仮面の魔法少女は詰め込む形になったが仕方あるまい。


 エウメニデス本社。

 会議室のソファに寝かしつけられる元仮面の魔法少女。

「コイツ名前とかあるのかしら? 答えられる?」

「ナナディ……フランコ」

 風邪の症状は残ったままだ。

「フランコファミリーってわけね」

 メルカが冗談めかして言う。しかしルルディは怒っていた。

「私が神子だかなんだか知りませんが、それで命をもてあそんでいい理由にはなりませんよ!」

「まあ落ち着きなさいよ……しっかし神子と来たか」

「厄介にもほどがあるって感じだね。ルルディには悪いけど」

「そんなにひどいんですか神子って?」

「そもそも知らないんッスけど」

「実はぁ、私もぉ」

「あーもう分かった、じゃあ神子について知らない組に説明してあげる」

 こうしてメルカによる神子講義が始まるのだった。

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