第22話 《決戦・エンゼ03防衛戦》①
「今回の依頼はゴド王国の軍施設、エンゼ03の防衛任務よ」
メルカが淡々と告げる。すると珍しい事に鈴が挙手をした。
「あのー、例の仮面っ子と戦うって事ッスか? 正直、気が乗らないんスけど……」
全属性を操るルルディの完全上位互換。それが現状での仮面の魔法少女に対するエウメニデスの認識だ。ルルディは落ち込んでいたが認めざるを得ないのだ。
「アイツが自分で言ってた通り、アタシ達全員でかかればいけない事はないわ」
「うぇ……それって決死戦って言ってるようなもんスよ~。誰か犠牲になるパターンッス……」
「逆よ鈴、今回の任務、誰一人欠けても勝てない任務だと思いなさい。特にアンタの風邪を操る力が特に重要よ」
「え、マジっすか。自分、期待されてる感じッスか!?」
嫌々な反面、嬉しそうにする鈴。ルルディが挙手する。
「私は何をすれば!?」
勢いよくメルカに質問をぶつける。
「アンタは神輿のサポート、邪魔にならない程度に戦場をかき乱しなさい」
「……了解です!」
一瞬、顔を暗くしたように見えたが、本当に一瞬でそれは直り、真剣な瞳でメルカを見つめる。
「よろしい、最前線は神輿、アンタがあの化け物と真正面からやり合う事になるけど……」
「構わないよ、僕としても強い相手と戦えるなんて剣士の誉れだからね」
「アンタはホント心強いわね」
「おっとメルカ、僕を褒めても何も出ないよ?」
「はいはい、それでフィズィは私と鈴を守る役。特に鈴を重点的に守って頂戴。たとえアタシがピンチになったとしても、いい? わかった?」
「は、はい。わかりましたぁ」
少し不安気に頷くフィズィ。メルカはそんなものは気にしない。
「以上、ブリーフィング終了。後は戦場次第よ。エウメニデス、全員出撃!」
「「「「了解」」」」
鉄騎に乗ってエンゼ03までたどり着く、そこで出迎えてくれたのは。
「ロッドマン司令!」
「やあ、君達でもエンゼ02で奴を取り逃がしたと聞いて絶望しかけたがね。今回の作戦を聞いてなんとか前を向く事が出来たよ」
「そうでしたか、それで仮面の魔法少女はまだ?」
「ああ、来ていない、来ていたら今ここは火の海だろうな」
「そんな事、私がさせません!」
ルルディが必要以上に興奮している。いつもの事言えばいつもの事なのだが。
「ははっ。心強いな、だがお嬢さん、ここは戦場だ。何が起こるか分からない。それだけは覚えていてほしい」
「……はい」
少ししょんぼりするルルディ。メルカそんな彼女の肩を叩く。
「ロッドマン司令言った事は正論よ? だけど私達は魔法少女。その何が起こるか分からないびっくり箱の中身の方なんだから。しゃんと構えてなさい!」
ルルディはメルカに言われ顔を明るくする。
「はい!」
その時だった。
『斥候の強化外骨格兵からの信号弾を確認! 敵魔法少女接近中!』
伝声管より響く声。全員に緊張感が走る。
「エウメニデスも出ます」
メルカがロッドマンに短く告げる。
「ああ、頼む……」
まるで祈るかのように噛みしめてロッドマンは頼むと口にした。駆けて行くエウメニデスのメンバーたち、その後ろ姿を見て。ロッドマンは敬礼をした。
燃え上がる強化外骨格兵、悲鳴ももう聞こえない。
「あーあ、こんな任務つまらないなぁー」
「だったら面白くしてあげるわよ?」
降り注ぐ魔力弾。メルカの大口径砲、全門斉射。風属性の加速で躱す仮面の魔法少女。
「まーた、あんたらですか。オリジナルは預けるって言ったでしょ? こっちで回収とかしないんで」
「今日はアンタを倒しに来たの。ごめんなさいね」
禍々しい風が戦場を吹き抜ける。
「へー、やれるもんなら、どうぞ」
神輿が茂みからの突貫にかかる。炎の剣が振るわれる。挟み撃つ形でルルディも逆側の茂みから飛び出して来る。
「へえ」
炎の剣もルルディの突貫も風属性の加速で躱す仮面の魔法少女。しかし、そこにメルカの魔力弾が放たれる。
「今日は魔力切れで動けなくなるまで撃ってやるんだから覚悟しなさい!」
仮面の魔法少女はたまらず土属性の防御魔法を発動する。しかしそれに対応するように風属性の加速で仮面の魔法少女を追いかけていたルルディが火属性の剣型エクスターナルで斬りかかる。
それでも仮面の魔法少女の魔法を砕くまでには至らず、逆に跳ね返されてしまう。禍々しい風が突風と化す。
「あっちの砲台おばさんの方が邪魔ですね。これは」
「だ、……誰がおばさんだコラァ! こちとら魔法少女だぞ!」
「メルカ、素が出てる。抑えて」
神輿がすっとメルカを遠くから制する。冷静になるメルカ。
「こほん。まあいいわ。手加減する理由は亡くなったってわけよ」
「手加減? してたんですか? そんな事してたら死にますよ?」
会話は終わり、神輿が再び斬りかかる。今度は仮面の魔法少女も炎の剣を作り出して鍔迫り合う。炎と炎がぶつかり燃え上がる。
(今だっ!)
ルルディが仮面の魔法少女の背後を突こうと風属性で加速する。背中は完全にがら空きだった。しかし、そこで思わぬ攻撃が地面の下からやって来た。
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