第21話 《暗躍・仮面の魔法少女》③


 エンゼ02へと向かう道中。戦車型エクスターナルの残骸を見かけるエウメニデス一行。その砲塔は西、これから向かう先を向いていた。

「もう既に仮面の魔法少女は動いてる!?」

「急ごう」

 神輿の一声でメルカは魔力を思い切り鉄騎へと回す。加速する鉄騎。エンゼ02に近づくにつれ戦車や強化外骨格との残骸、屍が増えていく。そこはまさに地獄だった。

 

 エンゼ02に到着し鉄騎を降りる五人。そこにあったのは火に包まれている基地の姿だった。

「これを仮面の魔法少女が……?」

「まだ近くに居るはずだ油断するな」

 神輿が全員に警戒を促す。すると火中から人影が現れたではないか。

「あっれー? もしかしてそこに居るのは~?」

 全員一瞬戸惑う、しかし、それがルルディに向けられた言葉だという事がすぐにわかった。


 火の中から強化外骨格が姿を現す。


「あれは……ルルディと同じ!?」

「じゃあアレがエンゼ01を襲った犯人……!」

「許さない!」

 ルルディが強化外骨格を纏い、仮面の魔法少女へと突撃する。

「あっ、待ってくださぁい!」

「じゃじゃ馬ッスねぇ……」

「言ってる場合か! 私達も行くわよ!」

 強化外骨格同士がぶつかり合う。しかしルルディの強化外骨格はあっさり跳ね飛ばされてしまう。

「なっ!?」

「あっれれー、おかしいなぁ。オリジナルは出力も段違いだって聞いてたのに」

 土属性同士の防壁がぶつかり合った結果、一方的にルルディの方が吹き飛ばされた。それは単純に敵の魔法の方が出力が高い事を意味する。

「こっちはどうです?」

 手のひらから炎を巻き起こす仮面の魔法少女。ルルディは水属性の魔法で対抗する。しかし、それも一方的に蒸発させられる。熱に焼かれ苦しむルルディ。

「ぐぅっ!?」

 そこにメルカが割って入るように大口径砲をぶっ放した。魔力弾が二人の間を通り抜けていく。

「おわ!? ちょっと今、オリジナルを試してるとこなんすから邪魔しないでください」

「さっきからオリジナルオリジナルって、アンタはなんなんなのよ!」

「知らないでここまで来たんですか? てっきり知ってて私を消しに来たものかと……さてどうしたものやら」

 神輿が炎の剣を構える。

「まどろっこしいのはお互い様みたいだね……このまま戦って勝った方が情報を吐くってのはどうだい?」

「いやいや、それこっちにメリットないでしょ」

「あのぉ私、話についていけてないんですけどぉ」

 フィズィはそっと壁を手に持ちながら、戦線へと参加する。不承不承といった様子で鈴も大きな輪っかの形の武器を取り出す。

「五対一は流石にキツイですねぇ……まぁオリジナルはあんたらに預ける事にします。というかこちとら末端もいいとこなんで、判断の権限とか与えられてないし」

 そう言うと仮面の魔法少女は風属性の魔法を纏う。それに気づいたメルカが砲塔を構える。

「それでは」

「待て!」

 魔法弾が放たれるも風属性の加速によって躱され、そのまま逃走を許してしまう。残されたのはエンゼ02の残骸だけだった。

「私って一体何なんでしょうか……」

 ルルディが己の手を覗き込んで自問自答する。それに答える者は今はいなかった。

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