第20話 《暗躍・仮面の魔法少女》②


 エンゼ01基地は惨憺たる有り様だった。石造りの家は瓦礫と化し、鉄製の施設は紙のように引き裂かれていた。

「これは……」

「よく来てくれた、エウメニデスの諸君」

「ロッドマン司令!?」

 惨劇の跡地に現れたのは手紙を送って来たロッドマン司令本人だった。

「手紙を貰っていたから分かっていた事ではありますが、ご無事だったんですね」

「ああ……ちょうど別の基地を視察していた……ゆえに部下を大勢失ったがね」

 沈黙、特にルルディは震えていた。肩を支えるフィズィ。


「それで、あの手紙の意図は? まさか本当にルルディの仕業だと――」

「思ってなどいないさ、言い方が悪いが彼女と襲撃者とでは実力が違い過ぎる。人間いくら何でもそう短時間に成長出来るものではあるまい。特に魔法少女の魔法は成長という概念があるのか私には疑わしい」


 メルカが訝しげにロッドマンを見る。

「敵はそれほどの手練れだったと?」

「そう、報告を受けている」

 ロッドマンは時折、相貌を悲しげに崩す散って逝った同胞達を思っているのだろう。

「ゴド王国は犯人の捜索を?」

「しているとも。しかし私より上の人間は君達エウメニデスの犯行だとみている」

「じゃあ探しているのはあくまで私達……って事ですか。真犯人ではなく」

「歯がゆいがね。そういう事になる」


 そこでルルディが一歩前に踏み出した。

「あの私! 真犯人を捕まえたくて! それで……」

 メルカがやれやれと首を振る。

「それでここまでとんで来たんです。馬鹿見たいでしょう? 下手すりゃ捕まるかもしれないっていうのに」

「……いや、その心使い、感謝しよう。君達にあの手紙を送ったのは君達ならば、必ずここに来ると思っていたからなのだから」

 実は逃げようとしていたなんて言えない空気だとメルカは思った。


「君達の耳に入れておきたい事がある。件の襲撃者は仮面をしていた。正体を隠していたのだ。それは恐らく……」

「私達の犯行に見せかけるため……」

「此処を襲撃した後、その仮面の魔法少女は西へ向かったと聞く。真犯人を見つけたいというのならば西……『エンゼ02』へと向かうのがいいだろう」

「次はそこが狙われると?」

「あくまで私の推測でしかないが、可能性は低くないと見ている」


 メルカ顎に手を当てて考える。そしてため息をついてロッドマンへと向き直る。

「では、私達はエンゼ02へと向かいます。情報ありがとうございました」

 頭を下げるメルカ、他エウメニデスのメンバーも頭を下げる。

「君達ならば、部下の仇を取ってくれると信じている。健闘を祈る」

 ロッドマンの敬礼、それを受け踵を返し鉄騎へと戻っていくエウメニデス。

 ルルディが一人残り、ロッドマンへと敬礼を返す。

「必ず真犯人を捕まえます!」

 そう言い残して鉄騎へと向かった。一人残されたロッドマンはふぅと息を吐く。

「これで良かったのだろうか、我が同胞達よ」


 鉄騎は西、エンゼ02へと向かう。

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