第19話 《暗躍・仮面の魔法少女》①
「拡張工事終了! 乾杯!」
エウメニデス本社が今までの依頼の報酬を使って大きくなった。今まで四人で一部屋に寝ていたのが、一人一部屋が与えられるようになった。
「ようやく二段ベッドともおさらばか」
「私は、好きでしたけど。二段ベッド」
「いやいや、狭苦しいッス」
「私はぁ……そうですねぇ……私も嫌いじゃなかったですけどねぇ……」
「アタシがソファで寝てる時点でおかしかったのよ!」
報酬で買った物はこれだけではない。
「はい、ルルディこれ」
「これは……剣……? ですか?」
「そっ、剣型エクスターナル。アンタの強化外骨格と相性いいはずよ」
「ありがとうございます! 大事に使います!」
「アンタのバイパス量をまだ把握出来てないけど、まあ剣なら直接接触出来るし平気でしょ」
「わぁ……嬉しいなぁ」
「そんな宝物見るみたいに抱えてるけど、それを返り血で汚すぐらいの活躍してもらわないと採算合わないんだからね」
「りょ、了解です」
そうして新生エウメニデス本社にて各々、自由な時間を過ごしていると本社のドアをノックする音が聞こえた。こういう時、対応するのは大体フィズィだ。
「はいはーい、今出まーす」
ドアを開けるとそこに居たのは郵便局の制服に身を包んだ魔法少女だった。何故魔法少女かと分かったかと言えば、その少女が箒に跨り浮いていたからだ。
「お手紙でーす。どうやらお急ぎのお話らしくって。ロッドマンって方からメルカ・ルシフさんって方へ」
「今すぐ頂戴」
メルカは立ち上がり速足で郵便局員に近づき手紙を引っ手繰る。
「じゃ、あたしはこれで」
「今時いるんッスねぇ、あんな古典的な魔法少女」
「それよりメルカ、手紙の内容は?」
真剣に手紙を見つめ何度も読み返すメルカ。その表情は手紙を読み返すたびに険しくなっていく。
「あの……メルカさん?」
ルルディが声をかけたその時だった。
「ルルディ、アンタ勝手に出撃したりしてないわよね?」
「え? はい……ずっと皆さんと、誰かしらと一緒に居ましたけど……」
「じゃあこれはどういう事なのよ……」
手紙の内容を全員に共有するメルカ、それは衝撃的なものだった。
『エンゼ01基地が強化外骨格を纏う魔法少女に襲撃された。仮面で顔を見る事は出来なかったが使っていたのが五属性の魔法である事から貴殿らエウメニデスに所属する魔法少女ではないかと上層部は疑いをかけている』
「そんな……私……やってません!」
「分かってるわよ! そんなのこっちも分かってるのよ……」
「二人目のルルディか」
「えぇ……? どういう事ですかぁ?」
「さっぱり話についていけないんッスけど」
メルカは手紙を懐にしまうと全員を見やった。
「とりあえずこの件は、保留にするわ。今ゴド王国に近づくのも危ない。しばらくはジンマの方に逃げる事とします」
「えっ。折角、本社を新しくしたのに……」
ルルディが悲しげに告げる。
「そんな事言っている場合じゃなくなったの、いつゴド王国に攻め込まれてもおかしくない場所になったのよここは」
鉄騎に乗り込みジンマ方面へと進み始めるエウメニデス一行。その空気は非常に重たい。特にルルディは縮こまって動かない。
「心配しなくても、いつか戻れるわよ」
メルカがルルディに声をかける。しかしルルディは応じない。
少しの沈黙の後、ルルディが鉄騎の後部座席の扉を開けた。
「私、やっぱり真犯人を探してきます!」
強化外骨格を身に纏い、鉄騎から飛び出すルルディ。
「ルルディ!?」
メルカは慌てて、ターンして飛び出したルルディを追いかける。しかし風属性で加速したルルディに追いつけない。
「鈴! 鉄騎に加速かけて!」
「りょ、了解ッス!」
こうして強化外骨格と鉄騎が荒原を駆けて行く。
向かう場所は、ゴド王国だった。
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