第18話 《対ディマオン帝国・魔法少女激闘》


 敵無人機、多脚戦車が襲い掛かる。それに対応するは神輿、炎の剣で戦車の足を切り落とす。バランスを崩し倒れる戦車、それに目もくれず次の標的に向かう神輿。

 

 次に空を飛ぶ鳥型エクスターナル、狙いを付けるのはメルカだ。今回はいつもの大口径砲ではなく中口径砲を十門ほど用意してきている。

「狙いよーし……ってー!」

 一斉発射。その全てが命中する。エクスターナルの残骸が墜落していく。


 次に無人人型兵の相手をするのは鈴だ。フラフープ型の刃と風属性の加速を合わせ切り裂いていく。その速さは、まさしく目にも止まらぬ速さだ。いつもは相手を体調不良に誘い込む搦め手で挑む彼女だが、正攻法で戦えないわけではない。


 次に巨大な人型兵を相手をするのはフィズィだ。盾一つで戦えるのかという疑問は一瞬にして覆る。敵が巨大な剣を振るう。それを壁で受け止めるフィズィ、そのまま彼女はシールドバッシュを決める。その一撃によろめき仰向けに倒れる巨大兵。ジタバタとしているところに上に乗ったフィズィが壁から魔力を放出し押しつぶす。


 そして最後はルルディだ。彼女は宙に浮く球体型の砲台を相手にしていた。ちょこまかと動くそれを風属性で加速し捉え、火属性や雷属性で壊していく。時には魔銃を使い撃ち落としていく。敵からの攻撃は土属性に切り替え防御する。


 こうして五人の戦闘が進んでいく。いつもはチームワークで戦う五人だが、今回はゴド王国の援護もあるおかげか、自由に戦っている。


「全っ然、数減らわないわね! ホントに魔力切れとかしないなんておかしいわよあの姉め!」

「同感だね、ゴド王国の戦力も相当投入されているはずなのに押されている」

「私、あんまり積極的に戦うタイプじゃないんですけどぉ!」

「自分もッスー!」

「私は大丈夫です! こっちは片付きました!」

「新人なのに頼もしい事、この上ないわね」

 メルカは半分、呆れたように語る。

「みんな一体、一旦集合!」


 流れ弾を避けるように窪みに入り込み、作戦会議を始めるエウメニデス。

「このままじゃ埒が明かない。あの姉のバイパスを切り離す方向で作戦を進めるわよ」

「バイパスを切り離すって? そんな事が出来るのか? 相手は非接触バイパスの塊みたいなもんだぞ」

「非接触って言っても、、完全に実体がないわけじゃないわ。必ず魔力の流れがある。そこを突く」

「あ、あのぉ……具体的にはぁ……?」

「合わせ技よ……鈴!」

「えっ! 私ッスか!?」


 要するに風邪のを蔓延させる力と、ルルディの全属性を操る力を合わせ、全体に『異常』を付与する魔法を使おうという算段だ。

「ううっ。事前に話は聞いてたッスけど……やっぱりいざ出番が回ってくると緊張してくるッス……」

「鈴さん! 頑張りましょう!」

「ううっ……」

 渋々と言った様子で鈴はフラフープ型エクスターナルを腕だけで回し始める。その後ろ、ルルディが肩に手を置く。魔力が手を通して鈴へと送られる。

「おお……おお! なんか行ける気がするッス!」

 腕のフラフープの回転が加速していく。


 戦場に五色の旋風が巻き起こる。無人機達の動きが鈍っていく。その機に乗じてゴド王国のエクスターナル群が戦線を押し進めていく。

「これならなんとかウリエは防衛は出来そうね」

「嘘、私達勝ったッスんか!?」

「みたいだねよくやったじゃないか鈴」

「はいぃ。鈴さんすごいですぅ。メルカさんも良く頑張りましたぁ」

「私はただ、魔力を送っただけですので……」

 魔法少女の激闘はこうして意外にもあっさりと終わりを迎える。


「戦車を回収して帰るわよ」

「やっぱり盗むんッスか」

「そういうのは良くないんじゃぁ……」

「ま、メルカが言ったらもう聞かないからねぇ」

「なんか現実感ないです」

 ルルディが上の空でそんな事を言う。

「何が?」

「自分が魔力を送っただけで、あれだけの敵を無力化出来るだなんて」

「それぐらいアンタは特別製って事よ」

「特別製……メルカさんは私が何なのか見当が付いているんですか?」


「……」

 メルカは沈黙する。答えを避けているというより話していいモノかと悩んでいる様子だった。

『此処に居ったか姉不孝者め』

 鳥型エクスターナルがエウメニデスの面々の前に現れる。

「……何よ、傭兵がどこ相手にしようと勝手でしょ」

『屁理屈を、お前が一番幸せな道を行きたいというのなら妾の下に居るのが一番だというのに」

「私の信条は『金と自由』よ。アンタの下じゃ束縛されるのがオチだわ」

『厄介な性格に育ちおって……話は変わるが、お前さんはいつまでその少女を連れてまわす気じゃ」

 鳥型エクスターナルがルルディを見つめる。

「いつまでって……どういう意味よ」

『何、いい加減正体に気づいているのなら、手元に置いておく事がいかに危険な事か分かっていると思ったのだがのう」

「……ルルディがなんであろうと、アタシは手放さないわ。私の信条のためにね」

『本当に、本当につくづく厄介な奔放娘じゃ我が妹は……その先に破滅が待とうとも連れていくというのなら止めはせん。好きにせい……せいぜい私の邪魔だけはしてくれるなよ』

「それこそお断りよ」

『ふん』


 鳥型エクスターナルは飛び立った。残されたエウメニデスのメンバーには沈黙が残された。話題の中心のルルディでさえ声を出す事が出来なかった。

(私の正体……危険な事……)

 自分の存在が恐ろしくなるルルディ。そこにフィズィがそっと肩に手を置いて微笑んだ。

 次いで神輿も同じようにする。最後にメルカがルルディの前に立つ。

「アンタがなんであろうと、アンタはエウメニデスのメンバーよ。それだけは忘れないで」

 ルルディは真っ直ぐメルカを見つめて言った。

「……はい!」

 こうしてエウメニデスは戦場から帰路についた。

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