第13話 《実践・応用全属性魔法少女》③
というわけで一旦、最初のスタート地点、仮の拠点に戻って来たわけだが。
「ここからどうするんだい?」
神輿が髪をかき上げる。ルルディが興奮している。
「これがっ! 戦いっ! なんですねっ!」
「この子もしかして根っからの戦闘狂だったりしないわよね?」
「さあ……ッス」
「それより遠距離戦ってどうするんですかぁ?」
「ああ、フィズィには伝えて無かったっけ今回出番無さそうだったしね。これの事よ」
そうしてメルカがルルディに差し出したのは大きめの銃だ。
「はい、確かに受け取りました!」
「強化外骨格用の魔銃、二人で訓練してたのよ」
「へぇ二人で混ぜてくれればよかったのに、ねぇ鈴」
「いや自分は出来れば楽してたいっていうか……」
「まあ何よりもよ、これを実戦で試す時が来たのよルルディ! 狙いは茂みに隠れてる戦車! しびれを切らしてこちらに来る前に茂みを火属性で焼き払って!」
「了解!」
強化外骨格から魔銃に魔力を流す。供給量は十分だ。神輿に教えてもらった座標に合わせ魔力を放つ。炎の塊が茂みへと撃ち込まれる。
爆発が起きた。燃え上がる茂み、たまらず出てくる戦車と強化外骨格兵。
「次は雷属性に切り替えて……」
今のルルディに戦車に対抗できる手段はない。なので散開していく五人の強化外骨格兵を打ち抜いていく。敵からの射撃はフィズィが防ぎ、戦車はメルカの大口径砲で一撃だった。
「でも、ウチに魔銃なんてあったんですねぇ」
フィズィのちょっとした一言。それがメルカの地雷を踏んだ。
「……そうよ。あのライフルは赤字覚悟で買ったものよ」
混沌から這い出てくる憎悪のような低い声でメルカは呻いた。
「あーっ! この依頼の報酬がもっと良かったらなぁ!」
「どーどーメルカ。敵に見つかる」
「これで残るは戦車が三台に強化外骨格兵が十人ね」
「こ、こんな簡単にいっていいものなのでしょうか?!」
完全に興奮しているルルディ。戦場では冷静でいてもらいたいものだが、演習だし大目にみる事にしたメルカ。
「良いのよ、これがPMC、これがエウメニデスなんだから」
さらっと髪を流しながら言うメルカ。それをおーっという憧れの眼差しを向けるルルディ。
「今日はルルディの実践訓練だったけど、後はこれくらいでいいんじゃない?」
「え? どういう事ですか?」
「もう後はアタシが吹き飛ばして終わりって事」
「そんな私、まだやれます!」
ルルディが抗議の声を上げる。
「あのね? 私達だって魔力消費するのよ? 無理は禁物。戦場の鉄則ね」
「私行きます!」
土の防御魔法に包まれ前へと進み始めるルルディ、対する相手も総力戦で向かって来ていた。そう三台の戦車と十人の強化外骨格兵が迫って来ていた。
「あーあ、どうするメルカ」
「記憶喪失の性格なんて予想出来るわけないじゃない!」
「というか典型的な初心者が勝ちすぎて自分の実力を見誤ってるパターンだけど」
「ぐぬぬ、アタシの采配が悪かったというのか……」
「と、とりあえず、私、ついていきますねぇ?」
ルルディを追おうとするフィズィをメルカが制する。
「いえ、フィズィ。これは演習、死ぬことはない。だから一旦、ルルディには現実を知ってもらうべきだわ」
戦車からの魔力弾に強化外骨格兵からの銃から放たれる炎魔法。土の装甲でなんとか耐える。戦車と強化外骨格兵が弾を打ち尽くしたその隙を狙う。魔力の回復を待つ前に風属性で加速して雷属性でダウンさせる。
「まずは一体!」
風属性で敵を攪乱する。四方八方に動き回るルルディにどう対処したものか分からずルルディへの対処に困るゴドの兵士。
さらに二人の強化外骨格兵をダウンさせた辺りで。敵の魔力が回復する。魔力弾が放たれる。土属性に切り替える。その装甲にヒビが入った!
「えっ……?!」
ゴド兵の士気が上がる。ルルディを追い詰めたと勝機を見る。ルルディはメルカの言葉を思い返す、魔力には限界がある。
二度目のゴド兵の弾切れ。今度は戦車を狙い風属性で近づき、炎属性で砲塔を溶かし捻じ曲げる。
「これで一機!」
しかし今度は一人の強化外骨格兵が突っ込んでくる。魔力を込めた体当たりだ。炎を纏いこちらへ突貫してくる。
「まずっ!?」
土属性に切り替える。しかしいよいよヒビが、亀裂が深いモノになる。突撃してきたゴド兵を雷属性でダウンさせる。これで残りは――
「二台と六人!?」
はあはあと息を切らすルルディ。
いつの間にかルルディは戦車と強化外骨格兵に包囲されていた。
「さあて、あそこまで追い詰められれば現実知ったでしょう」
「だといいけどね。どうするもし『次は上手くやります!』とか言い出したら?」
「尻叩きね」
「「うわぁ」」
鈴とフィズィが引いていた。
「砲撃よーい!」
メルカが大口径砲を構える。
「てーっ!」
特大の魔力弾が、その砲口から飛び出した。
土属性の魔力防壁が完全に砕かれる。風属性で逃げようとするも包囲されてて上手く行かない。
(どうしたらどうしたらどうしたら)
そんな焦燥を吹き飛ばす一撃が飛んできた。地面はめくれ上がり、辺り一面が光に包まれる。ルルディの意識が持ったのはそこまでだった。
演習終了の笛が鳴り響く。
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