第12話 《実践・応用全属性魔法少女》②


 数日後、王都軍基地「エンゼ01」石造りの家屋と鉄製の部隊基地が入り混じる、まさに魔力技術転用の時代の縮図。そんなまだら模様の基地に入るはローブを纏った五人の少女。

(このローブが魔法少女の証……!)

 ルルディは此処に来る前の事を思い返す。渡された衣装、課された訓練、教え込まれた常識等々。

「ホントに男の人ばっかりなんですね」

「男じゃ使える魔力の量に限りがあるって言うのにね。サポート器具であるエクスターナルを使ってひーこら言ってるんだから世話ないわ」

「ちょっと今の一言で回りがピリついたんっスけどぉ!?」

「気にしない気にしない……ほら着いたわよ」

 『エンゼ01本部基地司令室』その鉄製のドアをノックする。中からどうぞと低い声がする。


「失礼するわ。依頼で来たPMC『エウメニデス』リーダーのメルカ・ルシフよ」

「話は聞いている。此処の長官。ロッドマンだ。今回の軍事演習……相手役を頼みたいという話だったが、本気でかかって来てくれたまえ」

「下手すりゃ死人が出るわよ? 勿論、故意に出す気は無いけど」

「構わん。そこまでの兵士だったという事だ」

「厳しいのね」

「そちらも相当な戦場をくぐり抜けてきたと聞いている。楽しみにしているぞ」


 演習の場所に移動する。そこには茂みがあり小高い丘があり、でこぼこし見通しが悪く隠れる場所には困らない。加えてこちらには敵の情報は特に入っていない。実戦に近い形式で戦おうという事だ。しかし。

「戦車が五台。強化外骨格兵が二十人……ってとこかな」

 神輿の熱源察知魔法で隠れている敵の数を確認する。

「ま、そんなもんでしょうね。アタシ達相手じゃ力不足だけど……でも先に言っておいた通り、今回、アタシは指揮に徹するわ。前衛は頼んだわよ

「りょ、了解です!」

 茂みから飛び出す一機の人型。ルルディの強化外骨格だ。メルカは魔法を通信へと変える。

『聞こえる? 今はまだ一方通行の魔力通信だけど、なるべくアタシの指示に従いなさい? というわけで第一の指示、土魔法で防御特化。からの全身、その後ろから、私達が付いていくわ」

 ガションガション足音を鳴らしながらと前へと進むルルディ。不可視の障壁をはりながらずんずん前へと進んでいく。

「メルカ、敵砲撃が来る! 右だ!」

『ルルディ! 右から砲撃!』

 ルルディは咄嗟に右側に両手を交差して構える。砲撃が激突する。障壁が発動しルルディには傷一つない。

「これが……戦車からの魔力弾……」

(思ってたより……怖くない?)

 ルルディは事前にメルカの全力砲撃を見せられたせいで感覚が麻痺していた。

『ぼさっと立ってないで右の敵が移動する前に仕留める! 風属性で加速!』

「了解!」

 砲弾が飛んできた窪みの中に入る、そこには戦車が一台と強化外骨格兵が二人。その状況でどうすればいいのか、事前に聞いていた作戦を実行する。

 まず戦車の懐、魔力弾の射程範囲外まで近づく、ジンマの言葉曰く『灯台下暗し』そしてそのまま、属性を火に変える。炎を纏った拳で戦車型エクスターナルの砲塔を掴んで曲げる。このまま撃てば暴発不可避だ。そして咄嗟の事に驚いて動けなかった強化外骨格兵二人を雷属性で殴り痺れさせる。これで窪みの状況終了。


「メルカさーん」

 窪みから顔を出し無事を報告するルルディ。まだ演習は終わっていないのだが。

『まあいいわ、とりあえずそこの敵は無力化したのね?』

 ルルディ=強化外骨格が不器用に腕を使って大きく丸を作る。

『……んじゃ次は神輿と一緒に、茂みに潜んでいる強化外骨格兵を倒して来て、神輿は手加減してるから、メインはルルディアンタよ間違いないでね』

「了解でーす!」

 手を振るルルディ。ちょっと調子に乗っている。


 風属性で加速、茂みへ突貫するルルディ。

 そこには確かに強化外骨格兵が居た、数は三人。しかし先ほどと違って驚いている様子はない。もう既に戦闘中だったからだ。神輿が強化外骨格兵を相手にのらりくらりとやり過ごしている。

「やあ、遅かったねルルディ」

「今から頑張ります!」

 雷属性を身に纏うルルディ。こっから単純な格闘戦だ。いやしかし相手は銃器を持っている。調子に乗ったルルディはそれを失念している。

「おっと、ウチの新人には正確な状況判断はまだ早かったかな?」

 そう言って三人の持つ銃器を炎の剣で斬り落としていく。

「す、すいません!」

 ここから本当の格闘戦が始まる。


 しかし相手は本物の軍人、相手は小娘一人。単純にやり合えば勝ち目は無い。しかし強化外骨格を纏っている今では、その状況は逆転している。触れるだけでしびれる雷属性のルルディに対し、魔力砲を撃つために火属性しか持っていない一般兵。相手も炎を纏うが、それよりも先に雷撃が一般兵を襲う。風属性の加速を雷属性の痺れをスイッチを切り替えるように一瞬で行う。それが今まで一番メルカに鍛えられた部分だった。


 三人の強化外骨格兵も脱落。これで残るは四台の戦車と十五人の強化外骨格兵だ。神輿が茂みの外に出て次いでルルディが出てメルカに状況が終了したことを伝える。

『それじゃ今度は遠距離戦ね。一旦戻って来て頂戴』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る