第10話 《実践・基本技能》
「じゃあまずはオーパーツのミースサイファをスピリットにデサイファさせて!」
本社前、何もない広場でそれは始まった。
「え、ええと。名前は何でもいいんでしたっけ?」
「そう、何でもいいからスピリットに名前を付けて命令! これ基本中の基本、鉄則ね」
メルカに言われるがままルルディはスピリットに命ずる。
「えっとミク! このオーパーツをデサイファして!」
小さな光が加速して六角形の石板へと飛び込んでいった。ぽちゃんという音と共に光の王冠が一瞬出来たかと思ったら石板表面にに光の波紋が広がっていく。まるで水に水滴が落ちた時のような反応だ。そして光の波紋は次第に石板表面の文様をなぞっていく。そして全ての文様が光輝いたその時!
「わわっ!? なんですこれ!?」
ルルディの全身は大型の鎧のようなものに包まれていた。
「これは……」
「強化外骨格だね。ふむどうやら強化外骨格型エクスターナルの大本となったモデル。それがルルディのオーパーツらしい」
「なによそれ!? 汎用性抜群じゃない! これは当たり! 当たりよね!?」
神輿とルルディというか強化外骨格を交互に見やりながら答えを待つメルカ。
「落ち着けメルカ、強化外骨格、はまあ確かに汎用性は高い。ウチにはいない人材だ。だからと言ってまだ即戦力になると決まったわけじゃない」
「う……鍛えるのにどれだけコストかかるかしら……」
「あのー、これからどうしたら?」
じたばたと身体を正確には強化外骨格を動かすルルディだったが両足が動いているのに全く前にも後ろにも進めていない。
「まずはそっからか……移動は身体を動かすんじゃなくて念じるのよ、魔力を鎧にまわしなさい」
ガションガションとぎこちなく動き始めるルルディ。へぇと感嘆するメルカと神輿。
「わー! 出来ました!」
「じゃあそのまま移動するわ、ついてきて! 神輿、あんたの修行場の雑木林、借りてもいいわよね?」
「構わないよ、ま、確かに威力をはかるなら、あそこが最適かな」
そうして本社前からまた移動、場所は様々な木々が生い茂るちょっとしたジャングルだ。地面が少し斜めっている、ここは小高い丘のようになっているか、はたまた山の一部らしい。
「じゃあまず木を殴ってみて」
「え、木をですかぁ……」
「はい、いいから早く!」
「は、はい!」
気に向かってへっぴり腰のパンチを繰り出すルルディ。しかしその見た目とは打って変わって、木の方はといえばめきめきと音をたてながら倒れていく。
「これが私の力……!」
「及第点ってとこね」
メルカが呟く、神輿はルルディに向かって手を振る。
「次は岩だルルディ」
手を振り返していたルルディは敬礼した。
「了解です!」
「敬礼なんて覚えてたのね……あの子ホントに記憶喪失?」
「元軍人かもな、体が覚えていたんだろう」
巨大な岩の前まで来た。そこまでの道のりもなかなかの斜面であり、道なき道であったために、ルルディは魔力で動いているのを忘れ時々自分の足で歩こうとして転びそうになる事が多々あった。だがなんとか辿り着いた。
「おっきい岩ですねぇ……なんだか壊すのがもったいないような……」
「岩なんて金にもなりゃしないんだから、いくら壊したって平気よ」
「メルカ、とりあえず石工に謝ろうな?」
「石工だって使える石か、そうでないかくらい選ぶでしょ? それと一緒よ」
「これは使えない石なんですか?」
「アンタの訓練のためになら使える石だわ」
というわけで実践。またしてもへっぴり腰のパンチ、しかし岩には亀裂が入る。しかし砕くまでにはいたらない。
「はぁ……これが限界みたいです……」
「改善の余地ありね……というか、そんな形でも魔法なんだからもうちょっと応用をきかせないとね」
「応用……ですか?」
「そ、応用、私達の魔法には属性がある。その属性に応じて色々出来るってわけよ」
「後半急に、アバウトになったなメルカ」
「うっさいわよ、私は応用とかせずにぶっ放すタイプだからしょうがないの……というわけでここからの講師は穂村神輿先生に教わりましょー」
わーパチパチパチと一人拍手するメルカ、神輿は無視してルルディへと近づく。
「まずは自分が何属性なのか分からないと始まらない。とりあえず自分の中に流れる魔力が何色か目を閉じて感じ取ってみるんだ」
目を閉じて両手を広げる神輿、見よう見まねで目を閉じ両手を広げるルルディ。
「……あっ」
「見えたかい? ちなみに参考程度に言うと私は火属性だから赤だったんだけど……」
「五色です」
「……え、今なんて?」
「ちょっとアタシにも聞かせなさいよ」
メルカも神輿の後を追って近づいて来た。
「赤、青、黄、緑、茶、の五色が見えました……遠くに白と黒も見えたような……でも基本は五色です」
「へー。白って事はアタシと同じ光属性の可能性が……ってちょっと待って今いろいろ言ってなかった?!」
「言ってたね、基本属性の五色全てを感じ取った上に、稀にしか現れない光と闇の属性まで垣間見たと」
「嘘でしょ。じゃあルルディは……」
「全属性の魔法を使えるという事だ」
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