第6話 《対列車高速戦闘・魔法少女争奪戦》②

 会話の途中、突然、神輿が後ろを振り返り刃の無い剣を構え後ろを振り返った。

 他の面々も神輿に習い警戒態勢を取り、そちらに向き直る。

『もうばれてしまったか、君は相変わらず気配を読むのが上手いな』

 そこにいたのは一部が機械化された鴉だった。そこから女性の声が聞こえてくる。

「サティナ……あんたどうして」

『わざわざミドルネームで呼ばなくてもいいじゃないか、昔みたいにルストラおねーちゃんって呼んでくれても……』

 そこで鴉の声は途絶えた。いや途絶えさせられた。メルカが魔法を起動し砲撃したのだ。

『まったく、その怒りっぽい正確はどうにかしたほうがいいとおもうぞ?我が妹よ』

 別の場所から別の鴉が現れる。顔に怒ってますと書いてあるような形相でその鴉を睨むメルカ。

「…………」


「ちょ、ちょっと待ってください! サティナってまさかあの魔王女サティナ!?ディマオン帝国の帝王じゃないっすか!? しかもメルカさんがその妹って……」

「ごめん鈴ちょっと黙って」

 神輿に刃で言葉を制される鈴、その剣にはすでに刀身が灯っており臨戦態勢に入ってることを伝えていた。

「鈴さぁん、どうぞ私の後ろに……」

「あ、ありがとうございます」

 フィズィの言葉に従い、盾を構えるフィズィの後ろ回る鈴。

『ピリピリしているな、この鴉ではなにも出来ないから安心しろ』

「ふん! やろうと思えば一発くらいなら魔法撃てるくせになにを」

『そうだな、まあそれくらいは出来るがやるつもりもない、それより思えはどうなんだ今飛ばしてる鴉、操作も甘いし魔法も撃てないのだろう?そもそも我が妹のくせして非接触ではユニットを一つしか動かせないとは嘆かわしい……』

「あんたが化物なだけよ! だから魔王女とか恥ずかしい名前で呼ばれてるんでしょうが!」

『我は気に入ってるがな魔王女、そんなことより本題に入ろう』


 決して警戒は解かないが、メルカ達は少しだけ耳を傾けることにし黙って次の言葉を待つ。

『実はなお前達に依頼をしたい。依頼内容はなにを隠そう、今お前達の狙っている『荷』の奪取だ』

「……なんで自分でやらないのよ」

『いや、最初は気にせず捨て置こうとおもったんだが、『荷』の近くにメルカ達がいると気づいてなせっかくだからゴドとジンマの協定を邪魔してもらおうと思っただけじゃ』

「つまりめんどくさいからこっちに投げただけじゃないのよ!」

『ふむ、そう解釈するか、それもありかもしれんがな、まあいい、で?どうするんじゃ受けるのか受けないのか』

「……そんなの報酬次第よ!」

「ちょ、メルカ!?」

 神輿がメルカを引き寄せ顔を近づけ小声で話かける。

(なに考えてんのさ! あの人の依頼を受けるつもり!?)

(いやでもほら仮にも帝王よ? 報酬なんていくらでも、あの嘘依頼の倍くらいは……)

(だからまずいんだろ! あの人の依頼には間違いなく裏がある! その上、あの人からお金なんて受け取って見る! そこから流れるようにトラブルに巻き込まれるのは確定だ!あの人は周囲に災厄をまき散らすタイプなんだから! 妹のくせしてなんで学習しないんだ!)

(いやぁ……そのトラブルに巻き込まれ続けたせいで感覚がマヒしてるのかも……)


『今回の報酬は金じゃないぞ』

 小声での二人の会話をスルーし会話を続ける魔王女。

「じゃ、じゃ働けないわね!せっかく大金ゲットのチャンスだったのに!」

「心の声がダダ漏れだよメルカ……」

『報酬は、あの『荷』だ。きっと気に入ると思うがな』

「はぁ!? そんなの依頼でもなんでないわ! あたし達が奪ったものはあたし達のもんでしょうが!」

「えぇと……その理屈もどうなんでしょう?」

 盾から顔を覗かせ突っ込むなるべく平和主義の傭兵という矛盾した主義を持つフィズィがツッコミを入れる。

『まあ聞け、あの荷の中身はずばりオーパーツじゃ』

「オーパーツ……ってことは勿論、ミースサイファも記されてるのよね?」

「メルカさん、そもそも魔力を生み出すミースサイファが記されてる物体がオーパーツって呼ばれてるんっすよ?」

「うっさい! 分かってるわそんなこと! あれよサービスよ!」

『誰に対してなんのサービスなのだ我が妹よ、世迷言から目を覚ませ……話を続けてもいいか?』


「いいけど……他にもなにかあるの? オーパーツ以外に」

『あるさ、そのミースサイファを起動するための精霊「デサイファスピリット」にその精霊に選ばれ魔力を与えられし存在「魔法少女」もな』

「……! それって魔法少女傭兵一式揃ってるってことじゃない!」

『その言い方はどうかと思うがな、我が妹よ、そもそも魔法少女というのは神々と交信するための――』

「ああもうその話いっつも長くなるから今するな!」


『そうじゃな、列車が出る時間も近くなってきたしの、まあその魔法少女用の外部兵装エクスターナルユニットはないらしいから戦闘魔法少女の名であるマジティカルとはどちらにしろ呼ばんとは思うがな、とにかくお前はいつも人手を欲しがっていただろう?そこの少女も無理矢理勧誘したくらいだ。荷の中身を聞いたら欲しくなったのではないか?なにせ二つの国が協定を結ぶ要因になるほどの魔法少女だぞ?』

「あんたはなんでそんなに……その子あたしに助けさせようとするのよ」

『面白そうだからだ。さて実はずっと他の鴉も飛ばして列車の作業を邪魔しておったのじゃがそろそろ限界みたいじゃな』


 そう言うと鴉は飛び立ち、後から来た大量の鴉の群れの中に紛れ消えて行った。

 列車が発進間近なことを知らされたメルカ達は大慌てで準備を始める。

 用意してあった大型ブースターに全員が乗り込みメルカがバイパスを繋ぎ魔力を送り込む。

「こうなったらヤケよ! とにかくその子掻っ攫って協定もなんもかんも滅茶苦茶にしてやらぁ!ついでに後で帝国にも嫌がらせしてやるわ!」

「そんなんでいいのかな……」

「それよりこれぇ、列車より速く飛ぶんですよねぇ……ちょっと私怖くなってきちゃってぇ」

「自分、帰っちゃだめっすかね……?」

 四人それぞれの思いを無理矢理乗せて大型ブースターは列車と並走する形で発射した。


 装甲列車からの機銃掃射を避けながら近づく機械を窺うエウメニデス。

「あのぅ、メル、リーダァー……素朴な疑問なんですけどぉ」

「今、ブースターの制御に、反撃の弾を撃ったりで忙しいんだけどぉ!?」

「ご、ごめんなさいぃ!で、でもなんで止まってるときに荷物をとらなかったのかなぁって」

「だーかーらー! そういう質問はブリーフィンぎッ……ブリーフィングの時にって言ってるでしょーがー!」

「メルカ今嚙んだね」

「噛んだっすね」

 ブースターの後ろに待機する二人がぼそりと漏らす。

「聞こえてっぞ役立たず共!」

「だって私は近接戦闘タイプだし」

「私はまだ武器持つの許されてねーっすよ」

 鈴はまだチームに入って日が浅い裏切り防止のために武器は持たせていない。

 代わりに情報を引き出すのだ。

「ああもうどいつもこいつも……で、えーっとなんだっけ、どうして止まってる時に狙わなかったのかでしたっけ?」


(結局答えるのが、メルカの甘いとこだよなぁ)

 また話の腰を折るのも可哀そうなので心の中で呟く神輿。

「そりゃ逃げる時のことを考えて、よ、列車の重要物資を守るために結構な兵士が荷を積み込む時には控えてたわ、多分、何人かマジティカルもいたでしょうね。だけど走行中は基本的に列車の装備で戦うしかないもの」

「そうっすかねー、列車から魔法少女が出てきたりするかもじゃないですか、今の私達みたいな装備で」

「それにしたって真正面からまともにぶつかるよりこういう特殊な戦闘形式のがいろいろとやり易いわ」

「でもぉ列車に乗ってる向こうのが有利なんじゃあ……」

「列車で下手には暴れられないでしょ、なにせ重要物資、しかも魔法少女、流れ弾で死んだりしたら大変」

 メルカはそう言いながらジリジリと列車とブースターとの距離を詰めていく。

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