第5話 《対列車高速戦闘・魔法少女争奪戦》①

 三日後。

「列車輸送ねえ……つうかなんでジンマの物資をゴド大陸国の強化外骨格兵が護衛してる訳? 説明しろ新入りぃ」

 ゴツい鎧に身を包んだ兵士が慎重に積み荷を列車へと運びいれるのを鴉の形をした使い魔から送られてくるビジョンで確認するメルカは、鈴へと若干ながらドスを不必要にきかせながら質問する。


「いえ、なんか対ディマオン帝国のために一時休戦して協定を結ぶとかで、そのためになんかジンマのほうがゴドへ贈り物ってか貢物みたいな感じで……えへ、えへへ」

「なんでもっと早くそれ言わないかなー、アジトに帰った後に他に情報ないか軽く尋問したってのに、まだ出し惜しみしてたか」

「軽く!? あれで!? てか尋問じゃなくてほとんど拷問で情報を喋る暇なんてなかったっすよ!そのあとはずっーと掃除やらなんやら雑用を延々とやらされるし!」


「まあしょうがないね、あれは風邪の呪いをかけられたメルカの私怨が入ってたから」

「そうだったんすか!?」

「わ、私は止めたんですけどぉ……」

「ああ……フィズィさんだけが自分の癒しっす……」

「でも、どうする? そうなるとちょっと厄介よ」

「え? どうしてっすか?」

 鈴を脅すような表情から真剣な表情へと戻るメルカに慌ただしく周りの言葉に反応していた鈴が素に戻って質問する。

「そりゃあんた今回の依頼主がゴドの奴だからよ、ディマオンならこのまま続行だったけど、ゴドとジンマの協定の邪魔をしてゴドの依頼主に利益は無いわ」

「あー……それなんすけど……」

 おどおどとなにか言いづらそうにしている鈴、メルカは容赦なく睨みつける。

「まさか、まだなんか隠してんのあんた!?」

「い、いや、ただの自分の想像なんすけどね、ちょっと思うところがあるてきなー」

「ふーん?いいわ話してみなさいよ」


 威嚇するのを止め話を聞く姿勢に入るメルカ。他に二人も近くに集まり話を聞く姿勢になる。

「いや、私が最初からあなたたちを倒すように命令されていた話はしたっよねす?その時、自分には『エウメニデスを倒せ』っていう命令が下ってたんすよ」

 鈴はそれで伝わると思ったらしいが、そうはならず少しの間、沈黙が訪れる。

「……なにが言いたいのよ?」

「いやだから、最初っから『エウメニデス』って指定されてたんすよ名前を」

 意味のない身ぶり手ぶりを交え必死に説明しようとする鈴。

 そこで神輿が鈴の言いたい事に感づく。

「ああ、つまりこっちが狙ってることが筒抜けっだってこと?」

「そうっす! 多分……」

「え?じゃあなにあの戦車も最初っからあたし達狙いっだての?それにしてはあっさりやられすぎじゃない?まさか全部無人機の囮だったとか?」

「いやあの戦車で勝つつもりだったんだと思いますよ……なんか自信満々でしたもん」


 故人を想い少し遠い目する鈴。しかしすぐに忘れたようにもとに戻り話を続ける。

「だからつまりですね、そのメルカさん達に仕事を頼んだ雇い主ったのはゴドじゃなくって」

「ジンマの自演だったってわけね……つまりは報酬も入ってこない、と」

「まあ、依頼主もといジンマの誰かさんからしたら、作戦がうまくいってれば僕らは死ぬ訳だし最初から払う気なんてないだろうね」

 冷静に神輿が判断を下す。

「そんなぁ……メルカさんあんなに喜んでたのにぃ……これで新しい『エクスターナルユニット』が買える!って……」

「言うな、フィズィ、それ以上言うんじゃない……」

「メルカがショックのあまり男口調に……」

 思わず地面に手をついてまで落ち込むメルカ、神輿とフィズィはそんなメルカを優しく慰める。


「あのーそれで結局今回の作戦はどうするんすか?」

 おずおずと鈴が聞く。

「……落ち込んでても仕方ないわ、とりあえずもう少し情報を整理しましょう。この調子だと鈴は多分まだ情報を隠しもってるわ」

「え、ちょ」

「そうだね、というか多分、素で忘れたり気づいてなかったりしてるんだろう」

「ええ……」

「お話聞かせてくださいねぇ?」

「……フィズィさんが言うなら、やぶさかでもないですけども……」

「なんかその反応の違いムカつく」

「すいまっせん! メルカさん! 何でも聞いてくださいッス!」

「鈴もたった三日ですっかり下っ端キャラが染みついてしまったな」

 しみじみと神輿が言った。


「さてと、まずは三日前の事から確認、私たちはゴドの者を名乗る奴から多額の報酬でジンマの戦車隊の殲滅を依頼された。しかしそれはジンマの自作自演であり私達を嵌める罠だった……だけどそもそも罠を仕掛けた理由はなにかしら? ハイ鈴答える!」

「ええ!? えっとえっと、なんかこう邪魔だったんじゃないすかね?エウメニデスって傭兵の中じゃ最近有名だったし……」

 鈴の声は途中から小声になりどんどんと自信がなくなっていくのが目に見えるようだった。

 しかし対するメルカの答えは意外にも怒る様なものではなかった。

「ま、そんなところでしょうね、最近このあたりで活動する事が多かったし、重要物資の運搬の不安定要素を消しておきたかったんでしょう」

「だろうね、それに実際、ウチに数件この運搬の妨害依頼が来てたし……メルカが全部断っちゃたけど」

「だってあの嘘依頼の金額と比べたら、全然足りないし!あの金額を出せるならさらに上乗せも期待できると思ったのに……」

「あぁ、またメルカさんが落ち込んでしまいましたぁ」

 背中をさすりメルカを慰めるフィズィ。


 神輿は気にせず話を続ける。

「だけどこのあたりで活動してる傭兵は僕達だけじゃない……他の同業者にも似たようなことが起きたと見るべきだろうね」

「あー、そういえば他のマジティカルもなんかに駆りだされてた気がするッス」

 神輿の言葉を受け鈴が反応する。そこでメルカもなにかに気付く。

「なるほど、人手不足だったから、私達三人相手なのに鈴一人だけだったのか、まあ鈴の言葉を信じるんならあの戦車によっぽど自身があったんだろうけど」

「それともあの戦車が弱かったのも誰かの策略だったりしてな」

「そこまでいくと陰謀論みたいに胡散臭くなるし、きりが無いわ、それよりも重要なのはあの物資の重要度が、この付近の傭兵を排除しなくてはならないほど高いってことよ!」

「いやだから重要だって言ってるっす!」

 しかし鈴を無視してメルカはヒートアップする。

「騙してくれた仕返しに奪って活用してやるわ!」

「まだ活用出来るものと決まった訳じゃ……ッ!?」

 会話の途中、突然、神輿が後ろを振り返り刃の無い剣を構え後ろを振り返った。

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