第3話 《対戦車待ち伏せ・戦場の魔法少女》②
強力な一撃を撃ち込まれた戦車隊。
『マジティカルの襲撃です! 繰り返すマジティカルの――』
「おっとそこまでだ」
魔法の砲撃から運よく生き残った者が救援を呼ぶまえにその戦車ごと、魔力で出来た揺らめく炎の刀身で撫で斬りにしていく神輿。
軽く人類を凌駕したスピードで戦場を駆け抜け、動くモノ全てを斬り伏せていく。
遠巻きにメルカはそれを眺めていた。
するとフィズィがまたおそるおそる口を開く、
「やっぱりぃ私の出番って基本ありませんねぇ、い、いやないのが一番いいのは分かってるんですけどね? ほらやっぱりぃお荷物になってないかなぁって……」
「あんたはあたし達の最終防衛ラインよ、出来ればドンと構えていたほしいわね」
「それは無理ですよぉ」
「ま、そうよね、とにかく細かい事は気にせず自然体でいなさい、こっちからあんたを切り捨てるなんてありえないんだからね……むしろ死ぬまでつきあってもらうわ。ふっふっふ」
獰猛な笑みを浮かべるメルカに対して、意外にもフィズィは真剣な顔をしていた。
「はいっ! 頑張ります!」
「あー……」
(あたしのギャグってそんなわかりづらいのかしら?)
分かりづらい以前にギャグとしての体すら成していないことに本人はなかなか気付かない。
そんなやりとりをしていると戦車隊を処理し終わった神輿が帰ってきた。
「なあリーダー、今回ちょっと撃ち漏らしが多くなかったか?」
「そうね、いつもなら八割はいけたもんねえ、今回は六割ぐらいしかいけなかったわ、この暴風のせいかしら」
「メルカの砲撃は風の影響なんか受けないだろう?調子でも悪いのか?」
「えっ!? メルカさ、じゃなかったリーダーどこか怪我でもしたんですかぁ!?」
「……いやぁなんか心配とかさせるのもなーて思って言わなかったんだけども、ちょっとだけ、軽いホント軽い目眩が……」
そう言ってメルカは思いっきり横へ倒れた。
「ちょメルカ!? いったいどうし……まさか! フィズィ気を付けろ! 敵の攻撃だ!」
「うええぇ!?」
神輿の言葉を受け、慌てるフィズィだったが、挙動不審になりながらも倒れたメルカを庇う態勢になり辺りを警戒する。
「でも、攻撃なんてどこから…………まさか」
「なにか気付いたのかフィズィ」
見るからに自身なさげですというような様子で話し始めるフィズィ。
「この風が、今吹いてるこの暴風が敵の攻撃かも知れません……風属性の呪い系……」
「そうか! メルカは一番、魔力防壁が弱いから真っ先に呪いの影響を……」
「ばれちゃったかー、ま、一人潰せたし、あとは二人くらいらくしょーでしょー」
突如として聞こえて来た声、その声の主は大きな岩の上に立ちこちらを見下ろしていた。
フラフープの輪のようなものを持ち、背中に鉄の翼を付けた少女。
「あんたたちが最近噂のエウメニデスか、大した事なさそう」
「お前はジンマ国軍のマジティカルか、どうして軍の護衛をしてなかったんだ?」
「自分の仕事は護衛じゃなくてあんたたちの討伐だしー、つうかつっかえないわよねー軍のやつらもさー新鋭の対魔力装甲戦車とかまっっったく意味なかったしー」
岩場の向こうに広がる惨状を見ながら嘲笑うようにその少女は言う。
「……やった本人が言うセリフじゃあないとは思うけどさぁ、同じ国の仲間にそれはダメだろう」
岩の上の少女を睨みつける神輿、フィズィは盾を構えメルカを自分の後ろへと匿いながら、二人の問答の様子をおどおどと見つめていた。
「ふーん、そういうの気にするタイプなんだー、でもさー逆に聞くけどなんでそんな性格で傭兵なんかやってんの? しかもあっちにこっちに喧嘩売りまくりー」
おどけた調子で輪を回し、挑発するような口調、しかし神輿は意に介さず。
剣に炎の刀身を灯らせて、臨戦態勢に入る。
「ま、僕たちにもいろいろ事情があるんだ。君も死にたくなかったら帰ったほうがいいよ」
「帰るとか、アハッ!ありえないっしょ!」
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