§2 レインメーカー

   


  もし雨を自在に降らすことができたなら人々はどう生活していただろう







         19xx年 in United States of America

  ある男が奇妙な裁判にかけられた 彼の名前はチャールズ・リッカー

             私の古い知人の一人だ

彼はアメリカの1900年代に活躍した気象予報士 裁判は結果、無罪となった

      だが裁判の結果は彼にとって屈辱的なものだった



    今は5月 畑には青麦が目に鮮やかにうつる素晴らしい季節だ 

               通常だったなら

       そういえば彼も、もとは農業を営んでいた気がする

 天候に振り回され廃業になり、結局目の前の小屋でミシン屋を継ぐことになった

ギギギ...ギギ....

             扉が重い音をたてて開く

          蜘蛛の巣がところどころにはっている

             長年使われていないようだ

          小屋の中を少し歩くと土ぼこりが舞う

       後に彼のプライドと共に綺麗に消えてなくなるのに


               足音がする

              誰か来たようだ

             話をしているようだ

              一人は彼だろう

            もう一人は近くの農家か?

          そういえば今年も雨が全く降らない

              なるほど、だからか

       なぜなら彼は雨を人工的に降らせることができる


    もともとここらの地域には大砲を撃つと雨がふると言われている

             だが、もちろん根拠はない

   大砲を撃った時に舞い上がる土埃が雨を呼ぶ と言われているだけだ

   だが、彼はそれを自分なりに考え人工的に雨を降らす機械を作り上げた

          公の場でもたった2回しか失敗していない

                いわゆる

     そんな彼の栄光は1916年アメリカのサンディエゴで崩れ去った


             あぁ、畑の水がここも枯れている

      この年のサンディエゴは異常気象と言えるほど日照り続きだ

               明らかにおかしい 

                彼をよばねば



             およそ2週間後、彼は来た

     常人の私では理解できないような無駄にでかい機械を持って

               レバーを下げる

          不吉な感じがする赤いランプがつく

    それと同時に緑色の光の矢のようなものが空に打ち上がった

  光の矢は空にたどり着くと細く裂け、辺りの雲にぶちあたっていった

   すると雲は綺麗な瑠璃色となり、まるで空が海になったようだった

        空と海が混じったように息を飲む美しさだった

   しばらくその状態が続くと今度は雲が透き通るような青色になった

            と同時に雨がふってきた

                恵みの雨だ

          農民たちは狂ったように喜んでいる


           だが私は異変に気がついていた

            通常なら雨は1時間ほどで止む

     だが雨は止む気配を見せないどころかむしろ強くなっている

             彼も焦った顔をしている


           結果、雨は1ヶ月も止まなかった

           川は氾濫し、街は水にのみこまれた

     彼はサンディエゴを水没させた人物として裁判にかけられた

                結果は無罪

      科学的に雨を人工的に降らせたかどうか分からないからだ

                  無罪

       この結果は彼にとって納得のいくものではなかった

この結果は彼の技術、つまりレインメーカーの存在を否定することのなるからだ 


              その後、彼は自殺した

  天候を自由に操れなかった気象予報士としての自分を認めれなかったのだろう

    レインメーカーの技術は彼が封印して墓場まで持っていってしまった


   もし彼があのまま生きていたならば人類は本当に天候を操れたのだろうか

           私は彼が死んだ今もずっと考えている

          まったくもって惜しい友人を失ってしまった



 もし雨を自在に降らすことができたなら人々はどう生活していただろう


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