第207話 海岸線
海の…海岸線の浄化は大分進んだ。
自分達だけじゃ埒が明かないので現地の近くの農村の方々を雇いました。
浄化薬をせっせと作って、浄化方法を指導して、数百人規模で浄化を進めたがそれでも一週間ちょい掛かった。
現地の方々も海の青さが戻って、海岸線の浄化が進めば元の海が戻ってくると涙ながらに感謝して貰えたので、やって良かったと嬉しくなった。
領都で起きた惨劇も知らない方々が多くて最初はめっちゃ警戒されたんだが、ルバン王国が侵攻して税金などの行政は全て改善される事と、暮らしも全般的に改善される事を伝えて、海岸の浄化を進めてると少しずつ信用してくれて数百人規模に膨らんだ訳だ。
ネーレウスとバトラショワディタとの約束も守れたし、そろそろへ王都へ移動するか。今どんな状況になってるのか情報が無いので不明だが、そんな悪い状況じゃない気がする。
「トゥミ、サラ、シャル、ユナ、カレン。ありがとう。助かったよ」
「「「「「どういたしまして。」」」」」
「スティング、エリザベス。ありがとうな。」
「「はい!!」」
「ルートは海岸線を暫く進んでから内陸に入って行こう。グルっと回るから時間は掛かるが、急がなくても大丈夫だろう。スペンサーが上手くやってるだろうしな。」
「そうね。お任せしてゆっくり行きましょ。」
現地の方々に任せて海岸線を進む。
道は海に沿ったり離れたりを繰り返して、段々と海から離れていく。
道中はスティングとエリザベスの魔法練習をしたり、ちょっかいを掛けてくる魔物を相手に戦闘訓練など二人を中心に遊びながら?進んでいった。
「前方500m、林の中に待ち伏せと思われる者を確認。人数7人。」
「お~!エリー、大分索敵範囲が広がったね。」
「えへへ。まだ人数が分かるくらいだけどね。トゥミお義母様みたいに2km先の人間の装備までは中々難しくて…」
「それでもちゃんと成長してるじゃないか。」
「後は、スティング。どうする?」
「はい。様子を見て殲滅する必要があれば片づけますが、先ずは交渉ですか?」
「そうだな。兵士崩れや野盗なら殲滅。農民なら更生を促して見るべきだな。」
「はい。行ってきます。」
「はい。行ってきます。お義父様、お義母様。」
「「「「「へ?」」」」」
スティングとエリザベスは剣と杖を持って駆け出した。
それを見て真悟人とトゥミ達は呆気にとられる。
「あのバカ。馬鹿正直に向かう奴が居るか!?」
~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~
馬車が来たので襲う算段で林に隠れる者たち。
「来たぞ。全員隠れろ!」
道の先には丸太を転がして馬車が通れなくしている。
しかし、グラニ2頭に牽かれる馬車で日本の近代技術を盛り込んで作成した馬車に丸太程度が通用する訳が無い。
外見から分かる訳もないが。
林に7人、死角になった丸太周囲には更に10人ほどの者たちが待ち構えていた。
「本当にやるのか?」
「今更引けないだろう。」
「母ちゃんたちを飢え死にさせる訳には行かねえよ。」
「そりゃそうなんだが…」
バッガァッッッ~~~ン!!!
激しい音と砂埃を上げて足止めの筈の丸太が蹴散らされた。
砂埃が収まると、お頭が男の子に押さえ付けられ、その横で女の子がデカいファイヤーボールを掲げている。
男の子の持つ剣は誰が見ても業物だと分かる光を帯びていて、誰もが思った。
「終わったな……」
全員で出てって平伏して命乞いをする。
明らかに貴族の子息と令嬢だと分かる格好なので、無理だとは思っても自分たちの命だけで家族や村の者たちに責が及ばない様にと必死命乞いをする。
「責任者はこの者で合ってますか?」
「へっ?責任者?」
「あっ、はい。私が責任者です。お貴族様、どうかお慈悲を…」
「お前が企てた事か?他に協力者は居ないのか?」
「あっ…はい。ここに居る者たちだけで行いました。他に悪い奴は居りません。」
「何で馬車を襲おうと考えた?」
貴族の子息と思われる子が色々と聞いて来る。偶に女の子と相談しながらなので芝居を見ているようだが、その様子から自分たちはすっかり毒気を抜かれて大人しく質問に答えている。
質問の答えによっては女の子のファイヤーボールが大きく揺らいだり、男の子からバリバリと雷の様なものが溢れたりして、そのたびに全員で縮み上がった!
お貴族様の魔法は見た事在るが、ここまで大きく激しくハッキリしたものは見た事が無い。子供だけで討伐に来るなんて事も無い訳である。
そんな問答をしているうちにご立派な馬車が横に付いた。
中からは、絶世の美女たちと貴族の当主であろう男が出て来た。
ここからが正念場だと全員で改めて平伏して命乞いをする。
ここは何とか俺たちのだけの命で納めて欲しい。
しかし、考えられない言葉を聞かされた。
~~ ~~ ~~ ~~ ~~ ~~
スティングとエリザベスが先走って盗賊たちの元へ行ってしまった。
「まったくしょうがねぇなぁ……」
トゥミ達と話して、取り合えず任せてみようとなった。
あいつら、イキナリ道を塞いでいた丸太を魔法で蹴散らしやがった!
そりゃ効果は覿面!狼狽えた盗賊たちの中で、頭と思える奴を拘束して一気に制圧して終了…5分と掛かってねぇんじゃないか?
その後は何だか問答しているようだが、エリザベスのファイヤーボールが大きく揺らいだり、スティングからサンダーが漏れたりと感情の振れが見られるが、大きく動揺している訳では無さそうなのでゆっくり迎えに行く事にした。
馬車を横付けすると、盗賊たちは平伏して命乞いをする。
それでもトゥミ達が下りると、目をひん剥いて男の目になった。
まぁ当然だけどな。
それから話を聞くと、これまでの道中で聞いていた通り胸糞悪い話を聞いた。
ただ違っていたのは、豚面の領地では無かった。
それでも平民を蔑ろにして搾取しているのは変わりない。
食えなくなって、食糧の為に、家族の為に盗賊に身を堕とすような事態になる領地は有って良い訳が無い。
「腹は減ってるか?」
「はっ??」
「お前たちの家族は何人いる?」
「「えっ??」」
「村はここから近いのか?」
「「「「…………」」」」
~~ ~~ ~~ ~~
お貴族様の馬車からトンデモナイ美女が下りて来た。
同じ人間……そんな不敬な事は思っちゃイケねぇ。
俺らを制圧した坊ちゃんと嬢ちゃんが何か一生懸命に訴えている。
そして俺らに考えられない事を言い出した。
「腹は減ってるか?」
はっ?いやいやそりゃ減っていますが、それ聞いてどうします?
「お前たちの家族は何人いる?」
えっ?…か、家族は勘弁してくだせい。お願いします。
「村はここから近いのか?」
……終わったか。母ちゃん。ゴメン。あの世で文句はいくらでも聞くわ。
本当にゴメンな。
そこに筋骨隆々な男?……更に男でも惚れちまいそうな美形の偉丈夫。
この人たちって、あの噂の?……ってそれどころじゃねえや。
俺らの命が掛かってるんだ。その上に母ちゃん達の命にも関わるんだ。
ここが男の踏ん張りどころだと心得る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます