第204話 惨劇

 屋敷に馬車が到着する。

 薬品工場に詰めていた嫡男である兄と弟が返って来た。


 薬品工場が襲撃を受けたと聞いて、随分と心配していた。

 自分の兄である豚顔の当主が国境で襲撃を受けて安否不明という事態に為っている最中に薬品工場が襲われたのだから、息子兄弟もろとも死んでもおかしくなかった。


 何処からの襲撃だったのか?調べていたが要領を得ない。

 イライラしてるうちに嫡男も次男も無事に街に着いたという報告があったので少し安心した所だ。


 襲撃から逃れて無事に辿り着いたのだろうから、家族総出で迎えに出た。


 今日は彼らの姉夫妻も来ていたし、妹たちも学園から帰って来ていた。

 中々家族が一同に揃う事が無かったし、折角なので今夜は盛大に宴会を行うつもりだ。奴らの好きな肉も大量に用意させているから楽しみだ。


 馬車が付いた途端に走り出てくる兄弟。

 よっぽど恐ろしい目に合ったのか、涙目で涎まで垂らしながら走り寄って来た。


 流石に父親には来ないで母親に走り寄った兄弟は、二人して抱き着いた。


「きゃー!どうしたのぉ?今日は随分情熱的じゃないのぉ?」

 普段は母親にハグなんて事はしない兄弟が思いっきり抱き着いている。


「まぁ、まぁ、後にし…待って、待って…いやぁ!止めなさい!あぁ!!」


「どうしたんだ?」

 何か様子がおかしい。

 妻が息子兄弟二人に抱き着かれて、押し倒された。


「おい!お前たち何をやってるんだ!」

 母親を相手に余りにも礼儀の無い様子に激高して怒鳴りつけるが、行動が激しくなって行く。


「いやぁ!!止めな……ああ!!」

 服が引き裂かれて乳房に吸い付く兄弟を懸命に離そうとする様子を見て、周囲に居た執事や兵士の男たちも引き離そうとするが、兄弟たちは妻のドレスを引き裂き、裸にしてしまう。


「お前たち止めないか!何をやっている!?母親なのが分からないか!?」


 懸命に引き離そうとするが、考えられないくらい力が強い上、ビクともしない。

 流石に息子に剣で切りつける訳にも行かない。その場の全員がパニックになっていた。


 屋敷の玄関先で裸にされた母親は声にならない叫び声を上げながら息子兄弟に凌辱された。その一部始終を見ていた家族は混乱してどうして良いのか分からない。


 この母親は表面上は優しい穏やかな装いを見せている女だったが、中身は陰湿で冷酷な性格をしていた。

 領主夫人として村々を視察に回る事もあり、村人に対する冷酷な仕打ちは広く知られていた。税を払えない家の娘を売ることなど日常茶飯事で、個々の都合や状況などは一切聞き入れないので、冷血夫人と陰口を叩かれている。


 冷血夫人が息子二人に公衆の面前で凌辱される。

 余りにも衝撃的な場面だが、同情する人間は居ない。子供には見せない様にする親たちは居るが、周囲の者は黙って見ているだけで、逆に野次馬がどんどんと増えて行った。


 弟の方が母親から離れると今度は姉に飛び掛かった。姉の夫がすぐさま引き離そうとするのだが、止めないので剣を抜いて威嚇するが、ドレスが引き裂かれ乳房や下半身が露わにされると激高して義弟に切りつけた。


 鮮血が飛び散り、そのまま倒れる様に見えたが、弟は背中を引き裂かれながらも姉への乱暴を止めない。

 更に突き刺してやろうとするが、姉は半狂乱で抵抗して暴れているので一緒に突き刺してしまう恐れから躊躇してると、姉の夫は兄の方に襲われた。


 後ろから押し倒されると、顔を抑えられて口づけ…口に噛みつかれる。

 声にならない絶叫を上げるが、頬を食いちぎられて転がりまわる。


 姉は弟に果てるまで犯されてから放されるが、放心してる間に今度は兄の方に犯される。叫び声をあげ過ぎて既に声は出ていなかったが叫ぶ様に口を開けていると舌を食い千切られた。


 夫の方は弟に後ろから犯されていた。男が男を犯す。おぞましい姿態には目を背ける者が多かったが、領兵などはその場から立ち去る訳には行かず、隅で胃の中の物をぶちまける者も多かった。


 領主の長女夫妻は傲慢な貴族として領民に知られており、難癖を付けられて金品を巻き上げられる商店が後を絶たず、商人達からは蛇蝎の如く嫌われている。

 この夫妻が襲われてるのを見た商人達には、

「もっとやれ!!」

「ざまあみろ!」

 と、思う者たちが多く、野次馬は更にその数を増やして行った。



 騒ぎを聞きつけた領兵や屋敷の者、野次馬たちが大勢集まるが、領主の奥方や長女夫妻が家族である兄弟に裸にされて凌辱されている様を呆然と見ている。

 そう。襲っているのは嫡男である息子とその弟である。余りの事に言葉が出ない。


 しかしその様子を囃し立てる者たちが出てくると、今度は領兵と野次馬の小競り合いが始まり、もはや収集は付かない。


 父親は剣を持ち出して兄の胸に突き刺すが、そのまま押し倒されて首を食い千切られた。血液が噴水の様に噴き出し辺りを真っ赤に染め、更に周囲は騒然となる。


 メイドたちは逃げ惑い、領兵たちは為す術もない。

 止めようとする者と囃し立てる者とでも小競り合いが始まり、あちこちで騒乱が起きる中、ドサクサに紛れて金品を持ち去ろうと領主夫人から指輪やネックレスを奪おうとする者たちも出て来た。


 兄は屋敷の中で腰が抜けて動けなくなっている双子の妹2人を見つけて屋敷の前に引きずり出した。そこに弟も襲い掛かる。

 兄弟は妹たちのドレスを引き千切り、野次馬に見える様に身体を開いて凌辱を開始した。妹たちは泣き叫びながら助けを求めている。


 この光景は領主一族が領民の娘たちに行った事と酷似していた。

 税が満足に払えない領民に取り立てて、若い妻や娘が居れば皆の前で凌辱する様に屈強な兵士に命令して嫌なら税を払えと。平然と行ってきた事だった。


 双子の妹2人も学園では高位貴族の権力を笠に女王様気取りで傲慢に振る舞い、同級生や下級生を虐げて来て、逆らう女子生徒を取り巻きの不良たちに襲わせて慰み者にしたりした事もある。


 それが自分たちに返って来た。

 領主一家たちは家族や自分がやって来たことが自分たちに返って来たなんて思いもしない。


 そして、それを平然と見て来て、時には自分たちも楽しんでいた執事や領兵たちも次は自分に返って来るなんて思いもしない。


 この場は領主の息子兄弟が錯乱して凶行に走ったものとして切り捨てて終了の筈だった。


 自分に返ってくるなんて思いもしない。

 自分の行いが自分に返って来るなんて……

 切っても刺しても死なない相手と気付くまでは…


 因果応報

 多分、初めて知った言葉だろう……

 今知っても…遅すぎた言葉だった。


 双子の姉妹はボロ雑巾の様に捨てられていたが、それを連れ去ろうとする者たちも居る。決して助ける為では無いと思われる男たちに連れられて、彼女たちには更に悲惨な状況が待っているだろう。


 兄弟2人の次のターゲットは、執事やメイド長など一緒に蛮行を行ってきた仲間だった。その時には姉の夫も動き出していた。一緒にやって来ていた次女長に襲い掛かる。

 襲われた執事たち…男たちは暫くすると動き出し、また別の人間を襲う。

 悪夢は始まったばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る