第202話 侵攻

「各自、野営準備と食料確保に走れ!!」


「「「「「おぅ!!」」」」」


「良し、偵察隊、どうなってる?」


 大隊の野営地。それなりの人数であるから開けていて、平坦な場所を選ぶ。

 しかし、ここは全くの山間部。大人数の部隊には不適切であり不利な立地となる。

 それも、こいつら輜重隊の癖にお構いなしに進軍している。


 主力騎士隊の輜重部隊のハズだろう…と、皆が思ったが、なんせ部隊長があのウメヤマだった。

 牙狼村自衛隊、戦闘大好き特攻隊長の剣豪ウメヤマ……なんで自衛隊なのに特攻隊長なん?と誰もが思うだろうが、事実なんで突っ込めない。


 それに輜重に関してだが、実はウメヤマは食に関してはうるさい。それもかなりうるさい。メチャクチャうるさい!だが、煩いだけあって美味い物を食わせてくれる。

 それに剣豪だけあって刃物の扱いは流石の一言!飾り包丁も天下一品!

 さらに真悟人直伝(日本直伝)の美味い物が出てくるから、誰もが認める料理長であり、自衛隊輜重隊隊長であり、戦闘大好き特攻隊長である。


 そんな彼が侵攻軍に加わらない訳は無く、当然のように輜重隊隊長に収まった。


 そこからの侵攻軍は、お察しの通り牙狼戦隊レッドを始めとして騎士隊本体もバンバン尻を叩かれ、大部隊とは思えない速度で進行して来た。

 輜重隊に後れを取る訳には行かない本隊は、死に物狂いで侵攻して来た訳だが…


 途中途中に村落がある中を侵攻してくれば地元民と遭遇するし、抵抗される事もある。だが、ウメヤマは全て懐柔して通過して来た。


 この国は圧政によって崩壊の一途を辿っている。途中で遭遇する地元民が元気で反抗心が旺盛な訳が無い。

 先ずは話を聞いて、美味い飯を振舞って、地元民を元気づける。

 その上で反抗するのは止めないし、どうしたいかを聞いてやる。

 今の状況を説明してやって、お前たちは解放されるんだと、自由になるんだと諭すと、殆どの者は聞いてくれる。


 でもね、なんで輜重隊のウメヤマが先陣切ってんの?

 あれ?輜重隊って何だっけ?

 特攻隊?補給隊の筈だよね?


 そんな中で敵部隊にも遭遇する。

 敵だって侵攻軍が来てるの分かってますよ。

 遭遇戦?トンデモナイ。ちゃんと事前に敵の情報は把握済み。敵部隊の動向を認識して順次撃破して行きます。

 なんせピンク、イエローの部下たちは隠密メインですから。


 忍者部隊・月光を頭に赤影、青影……以下、略

 と、何処かで聞いたようなコードネームが並びますが、優秀な隠密から上げられたデータで敵部隊編成から家族構成までバレてます。

 高官に至っては性癖まで分かってるとか……だから豚顔の事も筒抜けでした。


 実は月光のメンバーは色事部隊でも有ると言う噂もあるが、事実は不明。

 メンバー全員、容姿端麗、頭脳明晰、明鏡止水で唯我独尊とか…



 戦闘開始。


「ナイト・レッド、正面突破!」 「ッサー!」

「レッド、左翼から揺さぶれ!」 「イャッ!」

「ピンク、右奥、地元民確保。」 「イャッ!」

「ナイト・ブルー、右ピンクサポート」 「ッサー!」

「グリーン、離脱して纏めろ!」 「ハーイ!」

「ナイト各部隊、ファランクス!」 「「「イェッサアー」」」

「ブルー、イエロー、被せろ!」 「「オー!!」」


 各部隊に指示が飛ぶ!指示に従い通信機で報告!

 指示を出すのはマンガリッツァ。

 あれ?あなた何処から?


 輜重隊隊長はオークジェネラル、ウメヤマ。

 付き添うのはオークキング、マンガリッツァ。

 普段とは逆の立場。今回は輜重隊としての参戦ですからね。

 最前線の輜重隊の最前線から各部隊に指示を飛ばす!


 主力部隊の騎士隊隊長たちは一兵卒となり部隊を纏める。

 お陰でこれまで兵力の損耗も無く軍を進めて来た。


 隊長たちの誰もがマンガリッツァの采配に異を唱える事は無く、その的確な指示にマンガリッツァを崇拝すらしていた。


 牙狼村村長であり、ルバン王国辺境伯である神田真悟人からもオークキングのマンガリッツァには勝てないと、戦ってはイケナイ相手だと言われるマンガリッツァ。

 その名前はこの隣国戦で大いに広まる事になる。


 輜重隊トップ2が最前線で切り込んで行くなんて可笑しいだろう?と、言われるがウメヤマ曰く最前線で酒を…いや、食糧を確保しないでどうするんだと?

 あんた…最前線で酒の確保って言ってたよね?


 マンガリッツァは、ウメヤマが先に行くからだと人のせいだし、それを遠巻きに見てるトゥミたち、真悟人の嫁、エルフ5人娘。……娘?しっ。後が大変だから黙りなさい。


 なんで女性の君たちも最前線に来てるかな?公爵嫁のマリーさんも楽しそうだし。

 そりゃ当初から隣国に来たのは真悟人の一行と公爵家族でした。

 そのまま侵攻軍最前線で同行して来た訳で、スティングとエリザベスも同行している。まさに戦争の最前線に女子供が同行しているのは舐めてるとしか言いようが無い。


 ただ、途中の村々でウメヤマの料理などで村民を懐柔する際に一役も二役も買っているので、決して無駄では無いだろう。


 12,3歳のスティングとエリザベスに怪我を回復して貰ったり、手当して貰えば気持ちも和むもんで、主に年寄りから懐柔されていく。

 中には反抗する者や、戦争に子供を駆り出すなとか、司令官の子供だから甘やかしてる等とケチを付ける者たちも少なくない。


 そんな者たちもトゥミやサラの色香にやられたり、献身的な行動に文句も少なくなって行く。

 立ち行かない立場を理解して素直に食事を取り腹も膨れれば、気持ちも落ち着いて来るので冷静に今後を考える様になる。


 そうして一っ一っと現地の村を懐柔して行った。

 ウメヤマの料理だけじゃ、もっと頑なに抵抗されたかも知れない。


 ちょっと困るのが、若い奴らが付いて来たがる事。

 それも兵隊希望じゃなくて、トゥミ達やアルファ達に惚れて付いて来たがる。

 表面上は祖国解放!とかほざいているが、バレバレだよ。


 でも、同行に関しては止めない。自分の国の事だからね。

 何が起きてるのか、自分の目で確かめて欲しい。

 戦犯の証人でもあるだろう一般人も含めて王都へと侵攻して行く。


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