第189話 各家の状況

 真悟人とスティング。二人で王都の屋敷に帰って来た。

 そこに待ち構えるトゥミたち……


「真悟人~?…」

 良い笑顔で迎えてくれるトゥミさん。


「スティングもね~?…」

 真悟人とスティングは固まった。

 更に。


「スティング!!どういう事!?」

 エリザベスさんがいらっしゃった。


 二人は正座させられて事の顛末を説明させられる。

 彼らは悪くない。悪くない筈なのだが、報告、連絡、相談を怠るとお叱りを受けるという良い例であった。


「そういう事ね~。」


「「はい。」」


「アイーチ侯爵領の予算額って2500億位だったかな?金貨100万枚は払えない訳じゃ無いだろうけど、財政破綻するよね?」


「そだね。」

 トゥミさん、マジ有能。他領の予算額が出てくるなんて。


「あ、これはエリー(エリザベス)が調べた額だからね。」

 おお!さすが公爵家。

 つか、俺って自領の予算額、知らんわ…


「何を思ってるか大体分かるけど、今は良しとしましょう。」

 ホッとする自分が居る。


「スティング!!何で直ぐに言ってくれないの!?」


「あ、いや。」


 隣でスティングはエリザベスに責められていた。

 お前も報連相を学ぶ時期が来たんだな。

 生温い目で二人を見てたら、

「真悟人もだからね?」


「あ、はい。」

 藪蛇のようだ。




 アイーチ侯爵家

「なんだと!?どういう事だ!?」


 息子のゴヤン君と執事の話を聞いて、アイーチ侯爵であるギャオスは憤っていた。

 相手の神田辺境伯家に対してではなく、ゴヤン君と執事の馬鹿さ加減にである。


 大領を任されている侯爵家である。無能では務まらない。

 子供の喧嘩の仲裁で審査会に訴訟を起こすなんてやり過ぎだとは思ったが、経験には良いかと思って見過ごした。

 しかし相手は神田辺境伯の嫡男だという。

 要求内容もロレーナ公爵家令嬢との婚約破棄と金貨100万枚なんて言うとんでもない内容になっている。


 これは不味い。非常に不味い。

 更に馬鹿執事は相手の挑発に乗って爵位まで掛けてしまったと言う。

 ここで馬鹿執事を断罪するのは簡単だが、こいつを断罪した所で状況が良くなる訳でも無い。執事の首を差し出したとしても相手は納得しないだろう。


 現在のルバン王国において、飛ぶ鳥を落とす勢いの神田辺境伯家。

 絶対にコトを構えてはいけない相手だ。更にロレーナ公爵家との婚約破棄なんて、令嬢のエリザベス嬢がスティング以外とは結婚しないと言い切って、まだ平民の頃から熱を上げていたのは有名な話だ。


 公爵家と辺境伯家の2家に敵対したのは間違いない。

 これは、私の首も掛かってくる話だ。

 ……こうしちゃ居られない。


「お前たちの処遇は後程通達を出そう。」

 それだけ言って侯爵は出かける準備をする。

 先触れを出せ。相手は……宰相だ。



 Aの子爵家

「な、何という事だ。……」


「あ、あなた。私のAちゃんが酷い辱めを!」


「お前は何を言っている?この子爵家の存続の危機だぞ。」


「私に取ってはAちゃんがイチバン!そうそう貴族家が無くなったりしませんわ。」


 この女は状況が理解できない様だ。やはりこの機会に離縁をして、以前より目を掛けていた女と再婚すべきだろう。


 似たもの夫婦の様だ。



 Bの男爵家

「……そうか。先触れを出せ。相手はロレーナ公爵家だ。

 執事、お前には長年世話になっているが、今までで一番下手を打ったな。」


「はい。申し訳ございません。坊ちゃまの言葉を真に受けて裏を取っていませんでした。この度の事、如何様にも処断は覚悟しております。」


「あ、あなた。」


「お前も覚悟して置け。相手は公爵家と辺境伯家だ。審議中は直接相手と会う事は出来ん。公爵家に間を取り持って頂けるようにお願いに上がる。

 すぐに出るぞ。お前もすぐに支度をしろ。

 ……Bよ、お前も来い。正直に申し上げて謝罪をしろ。」


「はい。父上。申し訳ありません。」


 やはり、この家がイチバン真面の様だ。




 王宮執務室

「そんな状況か。」


「はい。アイーチ侯爵家令息ゴヤンは少々やり過ぎましたな。」


「宰相は記録の魔道具の映像を見たのか?」


「ええ、確認しました。子供でも設置できる手軽さと、映像の鮮明さに度肝を抜かれましたな。更にしっかり音声も入っていました。まぁ内容は失笑してしまうような内容ですが。あの内容でよく審査会に訴え出られたかと?」


「まぁその様な物であろう。記録の魔道具が無ければ誰も分からない事だからな。」


「あれは今後の騎士団や行政にも革命を起こしますぞ。」


「うむ。その分の予算……金貨100万枚か。」


「王よ。悪い顔してますぞ?」


「お主も悪いにやけ顔じゃの?」


「いえいえ、王様ほどじゃありませんって。」


「宰相、お主も悪じゃのう。」


「「ひゃっひゃっひゃっひゃっ」」

 二人の悪い笑い声は響く。



 審査会 証拠記録室

「記録の魔道具ですか。高価なのによく撮ってましたね。」


「辺境伯の令息スティング君によると、

「色んなトコで絡んで来るんで、証拠を残せとお父さんに言われました。」

 って事みたいだね。」


「神田辺境伯、流石ですね。これなら有無を言わせないでしょう。」


「映像も鮮明だし、ちゃんと音声も入ってる。何より子供でも手軽に扱えるのが素晴らしいよな。」


「でも、コレってさぁ…」


「ん?」


「王宮のあちこちに設置されるんじゃない?」


「あ!言えてる。メイドからの需要も多そうだよな。」


「え?なんで?」


「よく下級のメイドが手籠めにされたりして騒ぎになったりするじゃん?」


「あ、そうか。証拠が残れば有耶無耶に出来ないし、子供の認知にも関わるよな。」


「そうそう、もしかしてエロ画像が見れるかも?なんてな。」


「良し!早急に設置するよう働きかけよう!」


「お前って、そこに情熱傾ける奴だっけ?」


 同僚の意外な趣味が明らかになる一幕があったとか無かったとか。


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