第183話 婚約式

 迎賓館に王族と高位貴族を招き、婚約式を執り行う。


 今日は当然だが貸し切りで、迎賓館の敷地に誰も入れない様にしている。

 迎賓館正面入り口から婚約式を行う礼拝堂へ列になって移動する。


 礼拝堂の建物に入り大扉を開放すると、眼前には天井、壁、などに天使画などの天井画や壁画が描かれていて、地球で言う所のサンなんとか寺院の様である。


 普段は大扉から室内へはロープによって仕切られていて、中央を進むだけになっているのだが本日はロープは外されていて、両サイドには礼拝堂としてベンチが置かれている。


 案内係の「どうぞお進みください。」という言葉に促されて、王と王妃は室内に進む。続いて公爵を筆頭に高位貴族たちが進むが‥‥‥

 先頭で王と王妃が跪いた。

 在り得ない事だが、公爵以下の高位貴族たちも全員が跪いた。

 目の前には女神像。


 これは真悟人が天使画だけじゃ無く、何か偶像が在った方が良いだろう?と、作らせたものだが、イメージはマリア像。実際はサラがモデルになっている。

 女神像を作るに当たり、漠然とマリア像を考えていたが、モデルが居た方が良いだろう?って事になった。

 モデルを決めるに当たっての熾烈な争いはここでは語るまい。


 その女神像の前で王族から順に全員が跪いたのである。

 中には涙を流している者たちも居る。


「こ、こんな厳かな空間とは‥‥‥神は実在するのか?」

 そう言って両掌を組んで頭を下げる。

 全員が同じように掌を組んで頭を下げる。

 そんな作法なんて誰も言って無いし指示もしていない。

 しかし誰もが同じ行動を取り、女神像に敬意払ってから席に着く。

 やはり、神は在るのか?


 王たちが一頻り祈りを捧げて席に着いた後は、結婚式なら新郎新婦の登場だろうが、彼らは既に最前列の席に着いている。

 実際を知っているスティングは冷静に表情を取り繕っている。

 エリザベスはスティングから聞いてはいたが、余りの厳かな雰囲気から同じ様に跪いて祈りを捧げていた。


 全員が揃った後は、見届け人と称した神官風の方が仕切り、厳かに婚約式は終了した。神官さんっぽい人曰く、婚約式は本人たちより家同士の話なので本人たち不在で行われる事も良くあるそうだ。

 ただ、こんな厳かな場所で行ったのは初めてで、漠然と語られる神の形を見た気がすると言っていた。


 後で聞いたら、一応王都の神官さんだったらしい。

 頼んでおきながら知らなくてゴメンね。

 でも‥‥余計な事したかな?この世界に宗教を持ち込んだら、厄介な予感しかしない。天使画や壁画を大絶賛してたし、王都の教会にも話すとか言ってたし……


 婚約式が終わって宴会場?に移動をお願いするのだが、皆さん女神像の前から動かない。強制的に移動して頂きましたが……


 その後、真悟人のところへ問い合わせが殺到した。

 あの女神像を家に欲しいと言う奴まで出てきたのには閉口したが、その噂が広まって王都にサなんとかロ寺院やノー○○〇ム寺院などのレプリカモドキが建つ事には、真悟人に止める術は無かった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 婚約式が終わって後は恒例の宴会となる訳だが、迎賓館の大宴会場で行われる。

 200人は入れるホールとなっているが、今回は数十人なので、長テーブルで着席して頂いた。

 円卓でも良いのだが、酒持ってウロウロされても面倒臭いので、うろつき難い様式にした訳である。

 だって対面の人以外には、長テーブルをグルっと回らないと行けないから、絡みにくいかな?と思った次第です。


 今回のおもてなし料理は、日本料理で攻めてみた。

 内容としては、

 つき出し(ささ付け・前菜)

 碗盛(汁)

 刺身(お造り)

 焼き物

 煮物

 強肴(揚げ物・酢の物・茶碗蒸しなど)

 ご飯と留め碗、香の物

 水菓子、甘味


 先ずはささ付け。

 季節の素材を用いたり、珍味と言う事ですので筍の煮付と菜の花の和え物にしてみた。


 メニューには無いが、お凌ぎを追加しておく。

 小さなお強を出しておく。

 もち米を鳥とゴボウで炊いた一口お握りでお腹を黙らす。


 汁物は茸と卵のお吸い物にした。

 お代りにはホウレンソウやお麩なども用意してみた。


 向付(刺身)は生の魚と分からない様に、ヒラメの昆布〆と漬けマグロにしました。食べてビックリですね。


 八寸。これもメニューには無いが山海の酒の肴と言う事で、イカの塩辛と明太子と刻んだ山芋を出してみる。


 焼き物は、黒ムツの西京漬け。

 問答無用ですね。


 炊き合わせ(煮物)は里芋。

 里芋を練って中にひき肉を詰めてトロミのある出し汁に浸った里芋。


 強肴は、天ぷら盛り合わせに、酢の物にワカメとタコ、茶碗蒸しも追加してみる。中身は魚介と銀杏、蒲鉾、椎茸と王道茶碗蒸しです。


 ご飯は鯛めしにしてみた。

 そこに赤出しの汁物と野沢菜のお漬物。


 最後の甘味。女性陣のギラギラした視線が痛い。

 牙狼村でアイスフェスをやった時のグランプリ!もちろんバニラアイスです。

 バニラアイスと牙狼村の果物、そこに生クリームをバラの形で添えました。

 所謂フルーツパフェですね。

 これも今回に限り、少数ですがお替りが御座います。

 ハッキリ言って、戦争になるかと思いました。下剋上も当たり前。同盟を組んでの争奪戦は血で血を洗う‥‥‥は大げさですが、人間関係も心配になるほどの争いで、慌てて追加を作成。

 全員2杯までは可能と制限して落ち着きました。


 流石にこの量が在れば、お腹も落ち着いて。

 と思っていましたが、皆さんガッツリ完食どころか、お替りも最大限してました。

 つか、王妃様方もガッツリ行ってますが、大丈夫ですか?


 あぁ、大丈夫なんですね。余計な心配ですね。

 えっ!?余裕があると?アイスが欲しいと?

 あ、え~~~っと、、、トゥミにアイスのお土産が可能か聞いておきます‥‥

 えっ?既に聞いていて、俺のGO待ちと?

 分かりました。皆さんにお土産、準備しておきますね。


 まぁ、通常メニューに加えて何品か追加で出してるので安心してたが、まだまだ甘かった訳ですな。

 ここでのメニューには改良の余地がアリアリですね。


 人間でも足りないんじゃ、例えばボスたちは5倍~10倍は必要と考えて頭が痛くなった。

 しかし、満足してもらう為には品数を増やすより量を増やす?と考えて、合間のお凌ぎのボリュームを増やす事にして、ここにも汁物を追加する事にした。

 例えば、今後はお強の握飯を一つから二つにして、お澄まし等の汁物の具材を増やそうと言う事になった。

 そこで考えたのが、蕎麦やうどんのお腹に溜まるものにする。

 ボス達の様に明らかに食う量が多い者の場合は、煮込みうどんやほうとう等の具材の多い汁物にする事になった。


 つか、あれだけの量を食って女性でも足りないなんて‥‥‥



 食事が終わって、最後に二人の挨拶。

 正装したスティングとエリザベスが前に出て挨拶をする。

 今後の目標や抱負などを口上として述べるのが一般的らしいが、我が息子スティングには基本的な事以外に余計な事は言うな。口は災いの元だと言い聞かせていたので、ここでは当たり障りの無い大義名分を述べて終わった。


 横目でチラッと見て来たので、サムズアップと共に頷いたら、スティングも目立たない様にサムズアップを返して頷き返していた。

 トゥミはもっとカッコいい事言って欲しかったみたいだが、俺としては我が息子の成長に感無量である。

 特に余計な事をしないで卒なく熟す姿勢には最大の賛辞を送りたい。



 婚約式も滞りなく終わり、参列者を送るのだが、ここで問題発生。

 王と王妃様がこれから親族になる者たちだけでお茶会を催したいと。

 だから大臣たちや官僚、側近は先に帰れと言い出しました。


 護衛も全て帰そうとするので、護衛達も王や王妃様を危険に晒す訳には行かないと一歩も引かない。


「それって神田辺境伯(まだ陞爵していません)の警備が甘いと言う事になりますよ?貴方たちは角熊が襲って来ても返り討ちに出来ますか?」


「王妃様、私たちは確かに角熊には太刀打ちできません。しかしながら神田辺境伯(まだ陞爵していません)の戦隊と連携して王と王妃様をお守りする事は出来ます。戦隊の方々が守りながら戦うより攻めと守りを分けた方が効率的に行動できます。だから我らが残ってお守りするのです。」


「ぐぬぬぬ‥‥‥」

 それ、王妃様が言っちゃいけないヤツです。


「よし、では大臣たちと側近及び一般警護の者は帰る事。近衛は残る事。それで良いな!」


 ちょっとブーイングが起きかけたが、宰相が纏めた。

「王のお言葉、了解いたしました。では、近衛の纏めとして私も残りましょう。残りの者たちは返る準備を行う事。以上、解散。」


 うわ~。この人上手く自分も残したよ。

 この立ち回りの上手さが宰相なんだろうなぁ。




 大臣以下、大勢の皆さんは不満そうだが大人しく返る準備をして整列している。

 彼らには準備してあった尾頭付きの鯛の焼き物とお赤飯の折り詰めを持たして送ってやる。この折り詰めが貰えるだけで全員笑顔になったので、お土産って大事だねって思った。


 後で聞いたんだが、お土産に海の魚の焼き物とお赤飯と言う新しい料理を貰って、その旨さに殆んどの者が感動したという。

 家族のある者たちは、高級なお土産に家族が感謝をして家庭内での地位向上を果たす。


 この時から、お父さんたちが家族へのお土産に折り詰めとなったのはまた別の話。




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