第182話 婚約式(移動)
危険な迷宮魔女の森。
危険な魔獣が跋扈するSSクラスの危険地帯。
最近知ったのだが、王国では危険な場所をクラス分けして立ち入りを制限しているそうだ。これは主に冒険者に対するものであるが、一般常識として認識されていると。
SS~Eまであって、冒険者ランクの基準にも当てはまる。
トリネコさんが護衛として連れて来た冒険者金級チームはランクA~Sの集まりだとか。一緒にゴルフに行ったダグラスはAランク冒険者だったな。
今の牙狼村周辺は危険度SSクラス地域。
誰も来れないじゃん!!と、思うがちゃんと通行できる方法がある。
そう。護衛を牙狼戦隊に依頼するのである。
他には、直接転移!エルフシティと牙狼村の高位魔法使いに依頼する。
昔はちょっと護衛を多めに付けてエルフ村に商品を運ぶだけで暴利を貪っていた時代もあった。今じゃエルフシティまでは子供でも行くことが出来る。
逆に牙狼村は‥‥‥住民か許可を貰った者しか行けない陸の孤島となっている。
だから、エリザベスとスティングの婚約式をするには絶好の場所であった。
一切の邪魔者は排除できるこんな場所は他には無い。
婚約式を行うに当たって、大義名分と本音を上手く使える場所が必要だった。
だから真悟人の辺境伯への陞爵は婚約式後として、式は内輪で行う必要があったのだ。
そして参加するメンバーは王族から大臣級の限られたメンバーと軍属の信用できるメンバー、後はトリネコさん達付き合いのある商人たち。
魔法少女隊のミネルヴァや冒険者ダグラス、冒険者「山猫の爪」など関りのある者たちが招待された。
商人たちと冒険者たちは依頼という形で来てもらう。
馬車を10台以上連ねて、周囲に冒険者たちが警戒する?風にして牙狼戦隊が護衛する。
「いやいやいや、今の魔女の森で護衛なんて無理ですから!」
「いやー!あそこあそこ!サーベルタイガー!?こっち見てるよ~!」
「あ………あのウサギって……カミソリウサギですよね?群れ?群れ作るの?」
「ダグラスさん。あれ?あれ?ダグラスさん?寝ちゃダメだよ!」
「ここって魔女の森だよな?お、襲って来ないんだよな?」
「それってサファリパーク!?大丈夫だよね?」
サファリパークを何故知っている?
「みんな!シー!シー!静かに!‥‥‥あそこ、角熊じゃない??」
冒険者たちはパニック状態だが、流石におバカな行動に出る者は居ない様だ。
まぁ、余計な事したらその場で意識刈り取りますが。
トリネコさん達は慣れたもんで、
「レッドさん、今回も宜しくお願いしますね。」
「はい。お任せください。今回はお言葉に甘えて新人研修も兼ねてますので人数多いですが、主要なメンバーは揃えてますのでご安心ください。」
「レッドさんも立派になりましたねぇ~。」
「止めて下さいよ。恥ずかしいじゃないですか。」
和気あいあいと昔話なんてしながら進む馬車の横では、角熊が追っ払われているという、冒険者達には信じられない光景が繰り広げられていた。
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では、王族の皆さん。
一気に飛びますよ?
ルバン王国、王城では特別な部屋で転移を行おうとしている。
ゴルフの時は、衆人の目もあったので皆の前で飛んだが、実は王城と牙狼村にはホットラインルームがある。
此処には魔法陣を設置してあるので、魔力を流せばお気楽に飛べるようになっている。しかし、招待されて居ない者が飛ぶと‥‥‥どっかに行ってしまう。
飛べるけど受け入れないので、何処に消えるかは不明である。
ただ、関係者が消えちゃうと大変な事になる。一応登録制にしてあり登録してある者が無断で飛ぶと、飛んだ先の部屋から出られず警報が鳴り響く。かなり恥ずかしい思いをして助けてもらう事態になる為、今のところ真悟人以外にこの警報を鳴らした奴は居ない。(鳴らした際はかなり大騒ぎだったが、訓練と称して事なきを得ている。‥‥正直には言えない。)
今回最初に飛ぶのは、王族の方々と宰相を始めとする大臣たちとその家族。
第2便でお付きの方々。
トゥミが王族他偉い方々とご家族を連れて飛ぶ。
殆んどがゴルフの時に経験してるから、緊張してるのは子供たち位かな。
次に俺が執事、メイド、他、所謂お付きの方々を連れて飛ぶ。
前もって説明しているのだが、飛ぶ前にも再度注意喚起。
「いいですか?どんなに上手く潜り込んでも、飛んだ後じゃ取り返しつきません。人間同士じゃ分からなくても魔法陣は見逃しません。消えたくなかったら今ここで正直に申告して下さい。今なら悪いようにしません。飛んだ後じゃ行先不明です。生死も不明です。今のうちです。宜しいですか?」
「あ、あの‥‥すいません私、隣国のナビスコ帝国の者です‥‥‥」
メイドの女の子が恐怖に耐え切れずに泣き出した。
座り込んだ女の子に、周囲の近衛兵は決して乱暴な態度はとらずに女性衛兵が肩を抱き、大丈夫と宥めている。
「よく申告してくれました。悪いようにしません。隣の部屋でお茶でも飲んで気を落ち着けて下さい。」
「真悟人様の仰る通り、決して悪い様にしません。あちらのお茶とお菓子で気を落ち着かせて下さい。」
お菓子と聞いて少し笑顔になったナビスコ帝国のメイドさん。
彼女は後に語っている。
「命を懸けて、あそこで亡命した私を最高に褒めてあげたい!お菓子の美味しさに涙が止まらなかった。」
その後、もう一人のメイドさんと執事の男が正体を申告して、計3人がその場で亡命をした。
ルバン王国、牙狼村のお菓子。
金貨を叩いても食べる事の難しいお菓子の魅力も手伝ってか、想定の人数が名乗り出た。お菓子の後は、ちょっと厳しい尋問が待ってるけど命を取る事はしないし、今のうちだよ?
「後は居ませんね?今のうちです。大丈夫ですね?」
「‥‥‥行きます。」
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「全員、揃ってますか?‥‥‥」
心の中で思う。
(‥‥‥1人、飛びましたね。)
人数が1人合わない。
何処の関係者だったのかは後に分かるが、そんなに自信があったのか?言い出せなかったのかは分からないが、目出度い席に相応しい事じゃないので黙殺する。
「では、移動しましょうか。」
流石に王宮のお付きの方々だけあって誰も騒がない。
あいつはやはりそうだったのか。
そんな空気が流れるが、誰もその事に言及しない。
登録内容にそもそも偽証があったのだろう。
執事たちとメイドさん達を引き連れて牙狼村の迎賓館に入る。
牙狼村迎賓館。
此処を訪れた王侯貴族は、是非ここで結婚式を挙げたいと誰もが希望するほど有名になってしまった。
ここにはシスティーナ礼拝堂を模した作りにして、ミケランジェロの天井画やウニヴェルサーレ の壁画「最後の審判」などサンピエトロ寺院の天使画など様々な壁画、天井画で思いっきり宗教色の強い空間にして見た。
この世界に神等の宗教はまだ聞いた事無いので芸術的間知から、勝手に模写してみたんだが‥‥‥想像以上の反響を呼んで、牙猿や魔狼やオーク、エルフ達も涙を流しながら拝んでく者たちが増えた。
なんでこんな事に?と、聞いてみたら‥‥‥
「牙猿の夫婦で奥さんが重度の難産で、旦那がどうして良いのか分からずに村中を駆け回っていた所、偶々迎賓館の扉が開いていたんだって。そこで天使画を見て、幼い子供が羽を付けて降りて来るのが見えたって。
思わず跪いて両掌を組んで、どうか無事に母子共に無事にって祈ったんだって。そしたら産声が聞こえて来たんで慌てて帰ったら、母子共に無事に生まれてたんだってさ。それから噂を呼んで、奥さんが妊娠した夫婦がお祈りしてく様になったね。」
どうか無事に。そんな思いが祈りになって、信仰になって行くのかな。
子供の無事、奥さんの無事、夫の無事。
そんな事を祈って行くそうだ。
それからロープを張って順路を作ってお祈りコースを作ったんだが、連日大盛況で長蛇の列。
無料だったんだが、果物や木の実などをお供えして行く奴が出てきて、しょうがないから参拝用の祭壇作って、お供え棚と賽銭箱を置いたら凄い事になった!!
宗教は金儲けにしちゃイケないと思うので、ちゃんとお供え棚と賽銭箱には、設備の維持に使いますと明記した札を付けた。
そんな迎賓館に王族と高位貴族たちを招く。
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