第179話 思い悩む
スティングは困っていた。
ロレーナ公爵家の婚約の打診を受けて、平民だし年下だし特に覚えも無い。
何故?自分が選ばれたのか?
接点と言えば、イネスに頼まれて一緒に街に行ったり、一緒に食事に行ったりしたくらいだ。
そんなの皆なら(牙狼村の皆)いつでもやってるし、どうして俺なのか?サッパリ分からなかった。
そりゃ、エリザベスさんはキレイだし、お家も公爵家だから皆んな群がるけど、彼女の良さはソコじゃない。
従者や御者にも優しいし、人の見ていない所でも街の孤児にも優しくしていた。
一緒に街に出た時に、不意に見失った事が在って目茶苦茶焦ったんだが、気配察知で検索してたらスラムに居た。
こりゃヤバイと大慌てで向かってみたら、案の定ヤバい奴らに絡まれてた。
それも、怪我して動けない孤児の子を庇って、魔法の杖まで抜いていた。
何とか魔法を打つ前に止めに入ったが本人の反応は‥‥
「あれ?スティ?どうしたの?」だってさ!
絡んでた奴等は、孤児たちから上納金?が少ないと難癖を付けてたようなんで、取り敢えず叩きのめしてレッドさん達に通報した。
レッドさん達は、俺たちより先に騎士隊に連絡してやれよって苦笑いしてたけど、解決したから良いよね!
被害に合ってた孤児の子たちは、結構大勢いたようで、孤児院ぐるみで孤児たちに稼がす様にしてたみたいだ。
孤児院出身のチンピラに仕切らせて、孤児院自体は知らぬ存ぜぬとして尻尾切りして知らん顔なんて事をしてたみたいだな。
結局、孤児院の院長やシスターたちは全員連れて行かれて強制労働で孤児たちにお金を返すそうだよ。
あれは皆、助かったって泣いて喜んでたね。
それから孤児院の検査が厳しくなったって、お父さんも喜んでたね!
おっと、話がそれたな。
まぁ、エリザベスさんが街中で魔法打ったら、周囲は大惨事になるんで止められて良かった!って話。
だって、あの子の魔法を受けれるのは俺かイネスしか居ないからね。
あの魔力量は凄いよ!?それも極大魔法を連発できるって、トゥミママが驚いてたからね。
俺も真面に受けちゃうと飛ばされちゃうから、なるべく相殺できるようにするんだけど、イネスは真面に受けても何ともないんだよな?
なんだろ?才能の差かな?‥‥ちょっと悔しい。
だから、俺とエリザベスさんに友達以上に大した接点は無い訳で、家の都合で婚約させられるとしか思えないんだよね。
その事言っても、お父さんもトゥミママも苦笑いするだけだし、このままじゃエリザベスさんが可哀想だと思うんだよな。
だから、スライム先生に相談してみた。
「ねぇ、スライム先生どう思う?」
スライム先生は、相変わらず日向ぼっこをしてたんで、そこに押し掛けた。
「先ずねぇ、スティはどうしたいかな?」
「そりゃエリザベスさんが可哀想だから止めてあげたいよ。」
皆にしたのと同じ話をしてみる。
「ううん。そうじゃなくてスティはエリザベスさんが嫌い?」
「えぇ!あんな娘を嫌いな奴なんかいないと思うよ?」
スライム先生は知らないかもだけど、本当に良い娘なんだよ。
「スティはエリザベスさんと結婚したくない?」
「え~!だからそれはエリザベスさんが可哀想だって~!」
も~!何回同じ事言わせるのさ!
「クスクス。僕が聞いてるのはスティの気持ちだよ?エリザベスさんがどうとかじゃなくて、スティは嫌なの?」
「え?俺は‥‥」
ぽよぽよしてるスライム先生をまじまじと見てしまった。
俺の気持ち?
「スティの話はさ、エリザベスさんの気持ちがこうだと決めつけてるみたいでね?エリザベスさんに聞いてみた?」
「えっ?‥‥聞いてない。」
そんな事聞けないよぉ。
「そうかぁ、聞いてないんじゃエリザベスさんの気持ちは分からないよね?」
「でも、きっと家の都合を言われれば、あの娘は優しいから反対しないよ!」
分からない。そりゃそうかも知れないけど‥‥
「でも、本当の気持ちは聞いてないんでしょ?」
「はい。」
聞いてません。
「じゃあさ、エリザベスさんはスティと結婚したいと思ってるかも知れないよね?」
「え~!それは無い!」
そんなにお互い知らないもの!
「クスクス。だ~か~ら~!エリザベスさんの気持ちはスティは聞いてないでしょ?それなら分からないよね?」
「うん‥‥」
そりゃ分からないけど‥‥
「エリザベスさんの気持ちは分からない。それじゃスティの気持ちは?」
「‥‥‥‥」
俺の気持ち‥‥
「そこから考えた方が良いかもね?それにエリザベスさんもまだ11歳だっけ?」
「うん。俺のいっこ上。」
「結婚までに、まだ最低5年は在るよ?十分考える時間は在ると思うけどね。」
「で、でも、一回婚約したら破棄なんて出来ないよ!」
一回決めたのに、やっぱり止めた!なんて言えないよ。
「じゃあ、そう言って断ったら?」
「は?」
「婚約したら破棄できないからって断る。」
「そ、そんな事言える訳ないじゃん!」
「僕にはスティがただ言い訳を人のせいにしてるだけに見えるよ?」
「あ‥‥‥」
何も言えなくなっちゃった‥‥
「スティがちゃんと自分の気持ちと向き合わなきゃダメだよ?それに人のせいにしちゃダメ!分からないなら聞いてみなよ?そこでスティと結婚したいと言われたら君はどうするの?誤魔化さないで、ちゃんと答えを用意して置く事。出来る?」
「はい‥‥」
「ほら、しゃんとしな!」
「はい!ちゃんと考えます。先生ありがとうございました。」
「うん。自分で出した答えなら大丈夫でしょ?」
「はい!」
そのまま駆け出した。
気付けば結構良い時間になってる。
お父さんの家に戻るとイネスが待っていた。
「答えは出たの?」
「ううん。でも先生と話して良かったよ。ちゃんと考える。」
首を横に振って、でもちゃんとイネスを見て答える。
「そか。‥‥いっこ貸しだからね?」
「う、うん。分かってる。今度借りは返すよ。」
イネスはちょっと悪い顔しながらも嬉しそうなカンジだった。
ここ、牙狼村にはイネスに飛んでもらった。困った時のイネス様様です!
後は、見つかる前に王都に帰るだけだ!
「はぁ~い!スティング~!」
!!‥‥こ、この声は‥‥
壊れかけの人形の様にギギギッと二人は振り返る‥‥
そこには、眼が笑っていない笑顔のトゥミが立っていた。
「こんな所で何してるのかな~?‥‥ねぇイネスちゃ~ん?」
「「あ、あはは‥‥」」
ちょいちょいと指で家の中に呼ばれる。
こりゃ、お説教だ~!と覚悟決めた。
青い顔をしながらもトゥミの後を大人しく付いて行く。
笑顔?じゃない何とも言えない表情をトゥミママはしてた。
そのまま僕らの前に跪くと‥‥抱きしめられた。
僕とイネス、二人纏めてギュッとされた。
「答えは出たの?」
「「えっ?」」
「悩んでるのは知ってる。でもママにも相談して欲しいな。ちょっと寂しいよ。」
「ママ。ゴメン。」
「うん。イネスも話してね。」
「うん。トゥミママ、ごめんなさい。」
「謝る事じゃないんだけどね。心配しちゃうの。」
「うん。俺、先生と話したんだ。ちゃんと考えてみるよ。」
「そうか。答えが出たらママにも教えてね。」
「うん。」
ちゃんとトゥミママの目を見て頷いた。
その後、イネスにも頷いたら分かってくれたようだ。
戦いで使うアイコンタクトだね。
「じゃあ帰ろうか?」
「「はい!」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます