第171話 お話を
「トゥルル‥‥トゥルル‥‥はい。」
女性の声で電話に出たが、元嫁なのかは判断が付かない。
「すいません、こちらの電話番号は090-1234-5678ですか?」
「はい。どちら様でしょうか?」
知らない番号で女性が安易に電話に出るとも思えないので待ち構えていたかな?
「神田農園の神田真悟人と申します。連絡をする様にと手紙を頂きました。」
「‥‥‥‥‥‥」
無言かよ!?
「ご用件を伺えますか?」
「あ‥‥‥いえ‥‥」
こりゃ困った系かな。
「ご用件が無いのであれば、このまま電話をお切りして宜しいですか?」
「いえ、その‥‥」
「あ、すいません。お電話替わりました。」
電話が男に変わった。
「は?どちら様ですか?」
「代理人をしています、弁護士の後藤雄二と申します。」
ビンゴ!掛ったね。
「どういう事でしょうか?」
「離婚後にご子息が生まれたのはご存じですか?」
「いつ生まれたどなたのご子息ですか?」
「ご存じないと?それはイケません!今回私共がご連絡を差し上げたのは、ご子息の存在を知って頂いて、ちゃんと親子の絆を確認して頂きたいのです。」
「繰り返しますが、いつ生まれたどなたのご子息ですか?」
「突然の事でご理解が追い付かないのはよく有る事です。宜しかったら直接お会いして確認して頂きたいと思いますが、ご予定は如何ですか?」
シャルや香たちに視線を巡らせて確認する。
「先ず、固定電話の連絡先を教えて頂けますか?こちらは神田農園代表電話からご連絡しています。後藤雄二さんは弁護士と言う事なので、どちらの弁護士会に所属していますか?また、弁護士事務所の電話番号も教えて頂けますか?」
「そ、それはお会いした時に名刺交換でもして頂ければと思いますが。」
「いえ、その前に教えて頂ければ幸いです。」
こりゃアウトだね。
こんなグズグズじゃ誰も騙されないよ?
「あぁ、すいません!お電話替わりました。杉本弁護士事務所の杉本と言います。」
「‥‥‥‥‥」
また電話替わるか?
もう詐欺だって言ってる様なモンじゃん?
「もしもーし!電話繋がってますか?」
「何故突然電話替わるんですか?余りにも失礼な対応ですね。お話にならない様なので、会社のメールアドレス宛に御社の連絡先等を記載してお送りください。では、失礼します。」
静かに電話を切った。
今の電話した時間で大体の場所は特定した。
後藤雄二は元嫁の今の旦那で間違いないだろう。
杉本弁護士事務所だけでは特定出来ないが、ネットで検索すると多分全部違うだろう。業を煮やして電話に出た奴が杉本なんだろうな。
悪手だよ。
単に弱みを握って強請ろうとする輩の様だ。
それも元嫁を使って‥‥
怒りが込み上げてきた。
「消すか?」
ギリッと歯を噛み締めていた様だな。
「「「「「賛成です。」」」」」
「‥‥‥」
香は反対か?
「私は‥‥前の奥様とお話してみたいです。」
「話を?」
「うん。だって一度は好きになって結婚までしたんだよ?その頃は裕福でも無かったんでしょ?それでも真悟人さんと一緒に居たいと思ったんだよ?一緒に頑張ろうと思ったんだよ?だから‥‥別れる理由も何も聞いていないって真悟人さんから聞いたから、話してみたいの。」
「‥‥‥うん。分かった。話してみよう。」
「うん。だから皆も消すなんて‥‥」
「あ~!言わんとする事は分かった!消すってのは周囲の邪魔な輩たちだよ。生まれて来た事を後悔させてあげるさ。彼女はちゃんと守るよ。それは約束する。」
「そっか、良かった。皆、誤解してゴメンね。」
「ううん。私たちも安易にそんな言葉使ってて、誤解させちゃったね。」
俺の思考が異世界モード?力ずくな感じがするかもな。
邪魔な奴等は排除する。敵対者は消えて貰う。
それだけの力を手に入れてた事に改めて気付く。
これは、封建社会での貴族の力だよね。白を黒とする力だ。
俺がこの世界で政治家になれば世直し出来る?
そんな事は直ぐに妄想だと気付く。
利権と柵が渦巻くこの世界で政治家なんて冗談じゃない!
後は、元嫁はどうしたいのだろう?
最初に電話に出た相手がそうなのか?特に何も言わずに電話が変わられてしまった。彼女の意志はソコに無いんじゃないかと思う。
偶然に元旦那が新聞を賑わした。
資産家になっていて利用できると思った?
子供の養育費と言った内容に一番違和感を感じるのは彼女自身だろう。
誰よりも身体で分かっている。
今の旦那が言い出したかは分からないが、周囲が計画したのは明らかだろう。
元嫁が計画したならぶった切るのに躊躇無いんだけどね。
ピコン!とメール着信の合図。
杉本弁護士事務所から今回の内容と連絡先が送られてきたが、相変わらずフリーメールアドレスと携帯の電話番号‥‥
これで騙される企業は無いって!
元嫁が係わって無ければぶった切りなんですが、彼女の安全が確保出来なければ安心出来ないし、‥‥‥一度は愛した人だから。
彼女とはネットで知り合った。
当時、嵌まっていたゲームで話をする様になったんだが、話してる内に意外と近くに住んで居る事が分かって‥‥会うようになった。
それから、普通の恋人同士になった。
知り合う切っ掛けなんて難しい事じゃない。
会って、話して、俺は彼女にのめり込んだ。
一挙一動が愛しくなった。
きっとそれが間違いなんだろう。
これまで女性にのめり込む事は無かったんだ。年齢イコールなんて事は無いが、何処か気持ちをセーブして本当の気持ちはひた隠しにして誤魔化してたんだ。
結婚して嬉しくて嬉しくて、彼女に溺れた。身も心も溺れた。
その愛しい気持ちも持て余した。
そんなある日、彼女からセックスを拒否された。
え!?なんで!?
女性には女性の都合もある。
そこまで馬鹿じゃない!と思ってたが、それ以上のバカだったようだ。
彼女の真意を理解できないまま自分の欲求を押し付けてた二人は擦れ違って行った。
その結果、机の上の離婚届になる。
当然の結果だと思った。
愛と勘違いした猿は捨てられて当然だと。
嫁さんを欲望の捌け口と思われても仕方ない位求めていた。でも、そうじゃないんだよ。本当に好きで好きで好きで‥‥分かって欲しかったんだ。
分かって貰えない事が分かって、彼女の言う通り離婚に応じて自分の心に蓋をした。
トゥミ達と結婚して、どれだけ恐ろしかったか‥‥
でも俺は開き直った。
そう、俺は好きな女性を抱いていたい。好きなんだもん。抱いて居たい。
女性がどう受け取るかは分からないが、トゥミ達を見ると分かってくれてるみたいだよ。
今はちゃんと言葉でも伝えるようにしてるよ。
男の生理?なんて女性には分からないよね。
理解できないから変態!とか斜め方向の理解になるんじゃないかな?
男は似たような生態だと思うが、性欲強い男と弱い女が一緒になると悲劇が起こるのかな?だって、嫁さん達だって1回すれば良いのと何回かしたいのと色々だからね。
話がずれたね。
男全般で話を進めてるのが間違いなのと、ちゃんと話しなくてゴメンねって話。
直ぐに身体に繋がるのも間違いなんだろうね。
改めて、嫁さんだった女とお話するのは、ちょっと怖い。
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