第170話 連絡

 一連の騒動も落ち着いて来て、日本に居るようになって3カ月も過ぎた。


 その間に、日本で御座なりにしていた事を行っていた。

 先ずは日本での親類縁者に現状報告とお詫びの連絡。

 叔母ちゃん達にはお世話になってたんで、連絡入れたらお母ちゃんが連絡無いってお怒りだそうで‥‥あぁ面倒くさい。(そんな事言っちゃいけません!)


 兄ちゃんには連絡してるし、香とも食事会などやっているので問題なし!

 本当に香は良く出来た嫁で、日本では理想のお嫁さんだと思う。

 妙な柵や風習にも理解してくれて、上手く熟してくれる。

 多分、トゥミ達は日本の風習が違い過ぎて理解できないと思う。

 この辺りが国際結婚の難しい部分なんだろう‥‥国際?異世界?


 男尊女卑の色濃い日本では、政治家すらそんな事を言ってしまう老害が居る訳で、異世界の女性が理解できるとは思えない。

 そこを上手く熟せるのは、日本女性ならではと思う訳です。


 そんな事は置いておいて、香にご執心になった俺の態度を見て、トゥミ達はホッとしたそうだ。同じお嫁さんなのに仲間外れみたいにしたく無いと、もっと交流を持ちたいと思っていて、特にカレンは、日本の料理、香が作る家庭の味を教えて欲しいと熱心に頼んでいたので、俺が勝手に理解できないだろうと思い込んでたんだね。


 うん!前言撤回!

 異世界だろうと国が違おうと、互いに理解できるもんだよね!

 俺は日本人なのに香ともトゥミともアンジェとも上手く暮らしてるもんね。

 人もエルフも人魚も国も世界も超えられるのかも知れないね。

 俺自身が頭の固まった老害になってる気がする‥‥反省します。


 そんな時に一つの連絡。

 神田農園 社長 神田真悟人 宛の封書。


 ‥‥‥ん?

 ‥‥‥ん??

 元嫁?

 うん。俺は×1で離婚歴在りです。

 ある日帰ったら離婚届が置いてあったという漫画の様な離婚歴で、判を押して届を提出して終了だった。

 内容も何も、帰ったら蛻の殻で話し合いも何も無し。

 ただ手続きだけという離婚劇でした。


 それが、あれから何年?

 新聞や週刊誌で神田農園が公に出てきたから連絡したのかな?

 俺の写真や経歴も散々出されたもんな。


 それが今になって連絡して来るなんて、何の目的?‥‥って金しかないよね。

 そう言えば、元嫁がどんな思いでどうして離婚したかったのか?

 何も聞いていない事に気付いた。


 今でこそ、借金とか騙されてた?とか色々考えられるが、当時はそんな事も考えられなかったんだな。嫁なのに彼女の事、何も考えてあげられなかったんだ‥‥って事に今更ながら気付いて愕然とした。

 最低だよな。守るべき嫁さんなのに離婚の理由一つ聞いてなかったなんて。


 連絡の内容は至って簡単。

「お話できますか?」


 その簡単な内容に戸惑いを覚えた。

 お話?どんなお話?

 なんか怖い。

 嫌だ。


 拒否したい気持ちの反面、辛い状況なら助けてあげたい。

 どうしよう。

 相手は女性。元はお嫁さんだった人。


 逃げたい、係わりたくないと思うが、簡単なお願いや、単なる金の無心かも知れないから、そうだったら良いな。


「連絡をお願いします。090-1234-5678」

 携帯か、今は何をやってるんだろう。


 かなり動揺してる俺を見て、香は速攻でトゥミに連絡したらしい。

 エルフ嫁5人と日本嫁1人+魔狼嫁候補1人


「と、言う訳で対策会議です。」


「先ず、真悟人さんがかなり動揺してた事を報告します。」


「えっ!?それは何か疚しいに違いないの!?」


「いえいえ、こんだけ嫁が居て今更それは無いでしょう?」


「だって!まだお嫁さんにしてくれないの!?」


「……う~ん……上手い返しが見付からない。」

 まだ魔狼のシャマルとは結婚していない真悟人さん。

 もう成人しているとは言え、娘を見るような気持ちで居る事は容易に想像がつく。

 このままじゃシャマルも可哀想なので、この問題も早く解決しないとですね。

 シャルとサラはコソコソっと打ち合わせた。


「では、真悟人さん?状況の説明をお願いします。(華麗にスルー)」


「あ~、うん。皆も知っての通り‥‥‥」

 ちゃんとこの日本で離婚した事、何の問題も無かった事などを説明した。


「今の説明を鑑みる限り、真悟人さんの責任は無いと思われます。更に、この世界での金銭的トラブルも無しとして、ここで元嫁の要求は不当であると判断します。」


 ん?不当な要求?

 俺はまだ何の要求もされていないが、皆は知ってるのか?


「あ~!‥‥‥真悟人さん、純粋培養でしたね~。」


 は?何だそれ?一応日本で数十年生きて来たんだぞ?


「あ、ごめんなさい。嫌な言い方ですけど、もっと悪意に溢れた世界もあるんです。そこじゃ真悟人さんも悪意に飲み込まれちゃうんで、そんな意味です。」


 あ~‥‥‥そうだな。悪意に溢れた世界。

 誰も信じられない世界。

 そうだった。俺も最初はそうだったじゃん。

 忘れてた。

 改めて気付いたよ、ありがとう。


 今回のはどんな奴等?

 思い出の中の罪悪感に巣食う様な感じですね。


 あ、そうか!例えば子供出来てて養育費払えみたいな?


「おお~!バッチリですね~!まさに今回の内容通りです。」


 そうかぁ。予想通りと言うか、何というか。

 何でまだ連絡付ける前に全て解かってるかなぁ?

 ゴルフ場買収の際にも思ったけど、情報戦じゃ絶対に負けない気がする。


 子供の養育費なんて今更な内容で、DNA鑑定?親子の証明を調べれば直ぐ分かるよね?それに、離婚前は数年間に渡り性交渉は持っていないから俺の子供と言う事は在り得ない。

 それでもソコで攻めて来るなんて頭悪い?いや、何か作戦が在るのか?

 金が目的じゃなくて社会的に糾弾したいとか?

 ココでウダウダ考えても始まらないし、しょうが無いね。

 まぁ、言って来る事だけは聞いてみるよ。






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