第163話 夜会

 海の世界を離れたルバン王国御一行様。

 山に入り「お母さん牧場」の横を抜ける。

 今では神田農園のライバル牧場であるが、神田農園は牧場だけで売ってる訳じゃ無いので、上手く共存共栄を図れるように交流を持って情報交換なども行っている。


 途中にある湖をチラッと眺めながら、再度海に向かう。

 そこから海の上を走るのだが、ここでも皆は歓声を上げる!

「う、海の上に道がある!?」

「信じられない!?」

「これはどうなっているんだ!?」

「魔術的な物が感じられない‥‥」

「浮かべている訳じゃなさそうだが?」


 それぞれに考察を述べるが、海の底の岩盤に柱を建てているんです。

 なんて、誰も信じないであろう。

 魔法で発展してると、何でもかんでも魔法的解釈をする様だが、この建設に魔法的要素は何もない。

 素人だから、何がどうやってるか?なんて知らないけどね。


 海の真ん中にあるパーキングエリアで休憩を取る。

 様々なお土産や、海産物が売っている‥‥皆さんは金銭感覚が違うので、こんな海産物を買っても銀貨でお釣りが来る!?

 なんて喜んでますが、銀貨一枚\10000相当ですからね?金貨なんて\100000だからね?まぁ、物価が違うので単純比較はできないけどね。

 俺の所に来て、ニコニコしながら金貨を日本円に換金してますが、お土産値段なんだから、もっと安く買えるから!なんて言うのは野暮なんだろうなぁ。


 皆さん思い思いにお土産を買って、それぞれに渡したアイテムバッグに収納する。

 アイテムバッグの容量は3mx3mx3mくらい。

 これいっぱいにお土産買うなんて王妃様くらい‥‥なんて思ってました。


 補償金を取ってバッグを貸与したんだが、王妃様?そのバッグ何個目?

 他にも複数個のバッグを借りてる人たちがゴロゴロ居る様だ。

 折角の日本ツアー!皆さん気合入れてお金持ってきたみたいだな。

 そう言えば、メイドさん達だって何処かの貴族の娘さんだったりするし、商人たちだってそれなりの大店の旦那さんや若旦那だったっけ?

 やはり、ゴルフ自体が金持ちのスポーツなんだろうね。

 庶民じゃスポーツにそこまでお金掛けられませんから。


 では、出発しましょう。

 パーキングエリアに居る間に気付いた人も居る様だが、この先は海の下です。

 そう海の中じゃ無く海の下。


 海にポッカリ空いた中に飲み込まれる様に入っていく。

 中はオレンジ色の薄暗いトンネル。

「え~~?」という溜息が漏れる。

 殆んどの人が、シーワールドで見た海の中を想像してワクワクしてた様だが、海の中を通る訳じゃ無い。

 単なる長いトンネルでしか無いので、皆さん期待外れでの溜息でした。


 トンネル内は退屈だろうから、地図を出してこんなルートを通ってますよと説明したら、内湾をショートカットしてる事実に感心の声が上がっていた。

 それと、こんな詳しい地図を公開して軍事的に大丈夫か!?など、日本人とは違う感覚なんだなぁ。と、こちらが感心してしまった。


 そんな間に上陸して、外の光が見えてきた。

 トンネルから出て来たら、飛行機が飛んでいた。

 コレを見た一同。

「あ、あ、あれはなんだ!?」

「そ、相当巨大なモンだぞ!?」

 あっちにも飛んでるぞ!?」


 全員窓にへばり付き、空を見上げている。

「あれは、飛行機と言って今皆さんが乗っているバスと同じ目的の移動手段です。」

 なんと!?

 全員が口を開けて空を見上げる。

 その間にまたトンネルに入ったり、外に出たりで、周囲の景色が変わっていく。

 その先は都心に入って行くので、道路が立体的に交差してたり、ビルの間を抜けたりで、全員窓に貼り付きっぱなしだった。


 辿り着いたのは、高層ビルの立ち並ぶ中の高層ホテル。

 途中での景色が衝撃的だったせいか、皆さんグッタリしている。

「なんと、こんな想像も付かない景色で疲れてしまった。」


 素直な感想ですな。

 逆に王妃様たちは、道行く女性を見てファッションチェックに余念がない。

 この辺りは男性と女性で感性が違うのだろうなと思う。


 ホテル前ではトゥミ教官の号令。

「整列!」「点呼!」「「「サー・イエッサー!」」」

 相変わらずの大注目である。


 トゥミ達の美貌に道行く人たちも足を止め、スマホで撮影する奴らも居る。

 どんな集団なのか謎だらけだろうが、しっかり揃った返事に拍手する方々も居る。

「すげえ美人!?」

「この集団、めっちゃレベル高くねぇ?」

「芸能人?」

「うわ~!あのメイド服の娘、オレ好み!」


「解散!」「「「サー・イェッサー!」」」

 解散したら、サインを強請られるトゥミ達。

 一人に対応したら、後ろに列が出来ていた。

 王妃様やメイドさん達にも列が出来て、いきなり握手会になってしまった。

 商人のオジサンやアルファにもOLさん達が並んでたりするし、ホテルに怒られる!なんて心配してたが、ホテル側も駐車場脇なら大丈夫ですよ。と、パイロンで仕切ってくれた。

 ‥‥心遣い、痛み入ります。


 因みに女性人気1位はトゥミ。握手してウットリする男たち。

 男性人気1位はアルファだった。ハグしてもらって頬を染める女たち。

 王妃様がちょっと悔しそうなのが面白い。

 ボスの所には、気合入れて下さい!!と、ビンタを強請る人々が並んでた。

 燃える闘魂の人じゃないからね?



 この後は、長めに休憩を取って、ゆっくりと休憩時間に風呂でも使って貰い、高層階での夜景を見ながらの夕食となる。


 夕食はバイキングなのだが、何故だか皆さん正装してらっしゃる。

 王妃様を筆頭に、ゴージャスなイブニングドレスを着て、男たちは貴族然とした格好をしている。

 女性をエスコートして席に付き、メイドさん達が給仕をする。


 あの~、そんなつもりの夕食じゃ無かったんですが‥‥

 もう、誰も止められない。

 貸し切りのレストランは貴族の夜会の様相をして、ウェイトレスの女の子たちも女性たちのドレスを見て、「「「ステキ♪」」」とため息を付いている。


 取り分けた肉や魚を食しながら、シャンパンを傾け、夜景を眺める。

 最高の夜会だと、王妃様からお褒めの言葉を頂いた。

 いや、あの~、そんなつもりじゃ‥‥


 フロアの真ん中にスペースが作られ、ダンスを始める者たちも出始め、店側も宣伝用にビデオを回して良いか?とお願いされる始末。


 こうなったらもうしょうがない!

 すっかり店の宣伝ビデオ撮影現場になってしまった。


 王妃様も褒め称えられて、満更でもない様子だし、シャンパン片手に夜景を眺める姿は例え様も無く美しかった。


 ダンスシーンはイケオジが可愛いメイドさんにダンスを申し込み、貴族とメイドさんが踊ると言う、如何にもなシーンが演出され、メインのダンスはトゥミとアルファが踊り、皆の溜息を集めた。

 他にも、ボスがメイドさんを片腕でヒョイと抱っこして廻ると言うパフォーマンスを見せたり、店の女の子までアルファと踊りたがったりと、正にカオス!


 最後は店のオーナーからお礼の挨拶と、素晴らしいビデオが撮影できたお礼として今夜の飲食は全て店の奢りとしますので、閉店まで存分に召し上がって下さいとの申し入れがあり、ありがたく受けた。


 一応、この集団はとある国の本物の王侯貴族で、お忍びで来日しているのでどうか詮索しないで下さいとお願いしたら、心得ていますとの回答。

 都心のこんな高層ホテルの高級レストランは、それなりの方々がお忍びで来ることが多いそうだ。得てしてそんな方々は傲慢な振る舞いが多いのだが、こんな謙虚で高貴な方々は珍しいと言う。


 名刺交換をしたら、神田農園のオーナーだと言う事に驚いていた。

 何でも家族で何回か利用したことも在って、最近は忙しさに中々行けていないとの事だ。折角なので、無料優待券とゴルフ無料優待券を渡しておいた。

 このオーナー、ゴルフも好きでやるらしいので、是非利用してください。


 その夜は、トゥミと同じ部屋の日だった。

 今日一日楽しかったが、握手会では気持ち悪いのも居たし、夜会では俺とあんまり一緒に居られなかったし、撮影が在ったから俺と踊れなかったと拗ねていた。

 なんてカワイイ奴だ♪

 二人で夜景を見ながら話していたが、いつしかお互いしか見えなくなって一つになっていた。


 トゥミの中で果てた後も、離れないでと繋がっていた。

 肌の温もりと鼓動を感じながら、トゥミの香りを胸いっぱいに吸い込む。

 首筋から肩、腕、形の良い張りのある胸、先端のつぼみと感じてる内に、もう一度動きたくなってきた。

「もう一度、来て。」

 感じ取ってくれたトゥミとまた高め合う。


 次に果てた後には、そのまま意識も落ちて行った‥‥

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る