第155話 神官のお姉さん
ダグラスがクラブハウスに戻ってきたら、知った顔を見つけた。
「よぉ、珍しい所に居るなぁ。」
・・・・!!
「ダ、ダグラス兄さん!!」
「なんだよ?お化けでも見た様な顔して。」
「ど、どうしてココに?」
「ん?普通に参加してんだけど?お前こそ、神殿と孤児院の仕事は良いのか?」
「私は‥‥‥」
そう、ダグラスが話しかけたのは神官のお姉さんだった。皆が一見して神官のお姉さんと言うように、彼女は神官服を着ている。
見た目通り、神殿に勤めているようだ。
「予選から見かけなかったが、お前が参加してるなんて思わなかったぞ。」
「う、うん。」
「お前、あれだろ?」
「えっ!?」
「子供たちの為に賞金稼ごうと思ったんだろう?」
「‥‥‥」
ダグラスの予想に神官のお姉さんは思わず顔をそむけてしまう。
「それと、お前‥‥シスター達に黙って来たな?」
「あ、なぜそれを?」
「お前、分かり易いし‥‥まぁ、良いさ。」
「黙っててくれるの?」
「無断外泊までしてるんだ。俺が黙っててもこっぴどく叱られるだろうな。」
「だよねぇ、はぁ~それを考えると憂鬱。」
「そりゃ、しょうがねえだろ。んで、ゴルフの成績はどうだったんだ?」
「うん!それはね、何とか賞金貰えそうだよ!」
「お前‥‥すげぇな!」
「へっへ~!!頑張ったもんね!」
「そっか!賞金見せて、ちょっとはシスターの怒りを緩和するんだな。」
「うん。貧乏孤児院だから、少しは‥‥ね。」
「ああ‥‥」
「ダグラス!」
「おっと!お呼びだ。」
「うん。また後でね。」
「ああ。」
ダグラスはグッチに呼ばれて行ったが、神官のお姉さんは何やら考え込んでいるようだった‥‥
「ダグラス!」
「ん?どうした?」
何やらグッチは焦っているようだが、何かあったのか?
「ダグラス、あの神官さん知ってるのか?」
「神官さん?ああ、妹?みたいなもんだ。」
グッチは目を見開いて!
「ちょ、ちょっとこっちへ‥‥」
ちょっと豪華な応接室のようなところに連れて行かれた。
「こんな所に入っていいのか?」
「ちょっと話を聞きたいって人が居るんだ。ちょっとだけ付き合ってくれ。」
「それは、構わんが‥‥」
イマイチ状況が呑み込めない。
神官のお姉さんと話をしたから?
その事が問題なのか?
「お待たせしました。」
「真、真悟人様!!」
登場したのは真悟人様だった!
思わず直立不動になる。
「ああ、そんなに緊張しないで良いよ。先ずは座って、話を聞かせて下さい。」
~~~~~~~~~~
ダグラスから色々話を聞いた。
まさか知ってる奴が居るとは思わなかったな。
彼女の名前はシェリー。
ダグラスより10歳下の18歳。
ダグラスは王都の孤児院出身で、シェリーは孤児院の前に捨てられていたそうだ。
シェリーは、普段は明るく、思いやりのある優しい娘だという事。
ずっと神官になるために頑張っていた事。
憶測にはなるが、このツアーへの参加動機は、孤児院の経費を稼ぎに来たらしい事。
神殿のシスターたちには内緒で参加してるらしい事。
分かった事はこのぐらいで、具体的に事件に繋がる様な物は特に無い。
「囮だったね。」
祖母ちゃん?
相変わらず神出鬼没だな、この祖母さんは!突然現れるとビックリするっつーの。
「何か言ったかい?」
いえいえ、何も言いません!
「分かり易い囮だったね。それらしい風に見せかけて、部屋にも結界を施して置けば、確実に疑うからね。」
「それはそうだけど‥‥食事とかは?彼女は全然部屋から出てきてないよ。大浴場だってトゥミたちがいつ来ても良いように交代で入ってたのに。」
「食事は部屋に用意したんだろ?風呂は部屋にあるから問題ないさね。」
「そりゃそうか。そうするとまた振り出しかぁ?」
「そんな事は無いさ。あの娘に接触した痕跡を辿れば‥‥」
「そんな事やってたの?」
「あのスライム先生と河童の庄吉は中々優秀だね。あんたも見習いな。」
‥‥河童以下ですか、そうですか。
~~~~~~~~~~
表彰式が始まった。
3位は神官のお姉さん!
で、どちら様ですか??
次は各賞の授与です。
出ました!!ホールインワン賞!
「神官のお姉さん!」
「‥‥ってあなたの素性いい加減に吐いて下さい。」
「では、皆様、ありがとうございました。」
「「「「パチパチパチパチ・・・」」」」
シェリーは賞金を受け取ると、部屋に戻って来て、何をするでもなくベッドに腰かけた。
「まさか‥‥ダグラス兄さんに会うとは思わなかったなぁ。」
頭を抱えてそのままベッドに倒れこむ。
「あたしの事、軽蔑するだろうね。ゴルフなんてやった事無いのに、インチキして賞金貰って‥‥」
その時、ボワッと何かが転移してきた!
「おじさん!!来る前に一声掛けてって言ってるでしょ!いきなり転移し、て‥‥えっ!ダレ!?」
「あ、驚かしてすんません。あっしは河童の庄吉っていうしがない河童でございます。」
「カッ‥‥パ?‥‥」
シェリーは全力で扉の方に逃げて、扉を開けようとするが、開かない!
バッと振り返り、杖を取り出す。
「近づいたら滅するからね!」
物凄い形相で河童を睨みつける。
「え~っと‥‥あっしは邪悪な悪霊とかじゃ無いんで、滅せられる覚えは無いんですが。」
「サッサと出てって!」
「まぁ、落ち着いて話を聞いて下さい。な~んも危険な事は在りませんから。」
「そんなの信じられない!」
シェリーの言葉を無視して河童は語り始めた。
「先ずですね、貴女さんの言ってたオジサンですか?アレはこちらで確保させて頂きましたんで、もうこちらには来られません。」
「!!っどういう事?」
「アレは色々と悪さをしまして、人様にも被害が出てるんですわ。だからお仕置きされます。それで貴女様ですが、貴女様も被害者という事で罰はありません。賞金もお受け取りになって下さいとの事です。」
「な‥‥んで?全部バレてるの?あたしがインチキしたのも?」
「そんで、あっしが来たのは魔道具を回収させて下さい。それさえ頂ければ帰りますんで。」
「あたしは?あたしはどうなるの?‥‥魔道具を渡したら殺されたり?とか?‥‥」
「ははっ!ドコの殺し屋ですか?そりゃ映画の見過ぎです。貴女様はさっきも言ったように、罰はありません。賞金もそのままです。賞金に関してのお話もダグラスはんから伺ってますんで、裏は取れてます。だから大丈夫です。」
「ダグラス兄さん!?兄さんもこの事を!?」
「いいえ、ダグラスはんは知りません。ただ貴女様の事は補償してくれました。Aランク冒険者の言葉です。滅多な事は言わないでしょう。」
「兄さんが‥‥あたしの事を‥‥」
「はい。思いやりのある優しい娘だって褒めてました。」
「ダグラス兄さん‥‥」
シェリーは首からペンダントを外して河童に渡した。
模倣の魔道具。
人様のスキルなどを模倣することが出来る。
今回は、ゴルフのビデオなどからデータを採取したのであろう。
何の努力も無く模倣出来てしまうので、禁制品となっている。
「へい。確かにお預かりしました。それでは、あっしはこの辺でお暇します。」
「待って!」
「へい。何でございましょう?」
「この事は、この事は誰の言い付けなの?」
「ん~、真悟人様です。真悟人様の計らいですね。それでは、お邪魔しました。」
河童の庄吉はボワッと転移して行った。
シェリーは転移して行った後を茫然と見つめていた。
~~~~~~~~~~
ボワッと転移で現れる。
「へい。回収して参りました。」
「ああ、ご苦労さん。あの娘の様子はどうだった?」
「へい!御屋形様。最初は少々取り乱しましたが、ダグラスはんの名前を聞いたら、大人しく渡してくれました。」
「こんなモン使ってまで孤児院の金を稼がなきゃイケないなんて‥‥あそこの神主周辺は腐ってるようだねぇ。」
ルバン王国の神殿付孤児院には十分な経費で賄われているハズである。
それが滞っているという事は‥‥
「最後にですね、誰の差し金か聞いてたんで、真悟人様の名前を出しました。」
「ああ、それで良いよ。」
「では、あっしはこれで‥‥」
ボワッと転移して消えた。
「また、祖母ちゃんの仕業かって叱られるねぇ~クックックッ‥‥」
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