第154話 振り返り(最終日)

 ゴルフツアー最終日。

 本日の結果次第でそのまま帰るか、日本ツアーに行けるかが決まる。

 この時点で結果は分かり切っていたので、よっぽど何かが無い限り優勝は決まりである。


 だから、みんな割と遊びに走る!

 最後まで楽しんでくれるのは良い事です。


 スタートは真面目組、上位の方々から。

 良い音を響かせて、ナイスショット!今日も調子は良さそうです。


 見知らぬ神官の女の子が何組目かに居て、なかなか良いスコアを出して来ていると、少し話題にはなっていたようだ。


 係の者には、彼女に関してやたらと突っ込まない様に話はしている。

 一緒に周っているメンバーも面識無いと言っているし、何時から居たのかも分からない。

 という事は、なかなか上級の認識障害を掛けて潜り込んだみたいだね。

 祖母ちゃんは鼻で笑ってたから、気付いていたのか?

 食えない人だね。相変わらず。



 ダグラス:

 順調に進み、ボスさんと俺たちの順番。


「クラブ壊して、ワフワンに叱られたからな。クラブを壊さない方法を考えたぞ。」

「‥‥ナニ考えたか、分かるけどね。グッチとダグラスはどうする?付き合わなくても良いぞ?」

「やりますよ。その方が面白そうだし。ダグラスは?‥‥身体強化掛けようか?」

「いや、大丈夫だよ。俺も身体強化は使えるよ。」

 ボスさんが何やら考え付いたようだ。

 身体強化が必要?‥‥何を思いついたんだろう?クラブを壊さない様にだから、槌でも使うんだろうか?

 うん、クラブの代わりに槌を使うなら、振り回すのに身体強化は必要だな!


 そんな益体も無い事を考えていたら、アルファさんが突然振り返って、イケメンスマイルで聞いてきた。

「‥‥‥夕べは、どうだったんだ?」

「はい!?えっ?なんでアルファさんが!?」

「あ~、あれだけやらかしてれば、有名にもなるだろ。」

 ボスさんが良い笑顔で親指を立ててくれた。

 幸い、煩く聞いてくる様な方々じゃないのが救いだが、アルファさんやボスさんにも聞こえるほど、こうも有名になるとはな。


 改めて、自分がやらかした事の大きさを感じたが、今更取り返しは付かないし、ボスさんの笑顔が見れるとは思って無かったよ。


 ただ、俺はまだ良いけど、女性であるミネルヴァが嫌な思いをしなければ良いな。とは思ってる‥‥



 ボスさんがティショットグラウンドに入って、徐にゴルフボールを握った。

 握り心地を確かめるように何度か握り直す。

 キャディさんがアイアンを出そうとした時、振りかぶって~~投げた!


「あっ!!」

 キャディさんが固まっている。

 しかし、直ぐに再起動!懸命にボールを目で追いかけ、落ちた辺りで双眼鏡を取り出した。

「フェアウェイど真ん中です!‥‥けど、ボール投げると失格ですよ?」

「いいんだ。これならクラブを壊さない。」

「‥‥そうですか。250yd近く飛んでるのが恐ろしいですよ。‥‥」


 キャディさんは、速攻で諦めたようだ。

 しかし‥‥投げんのかよ。

 俺も諦めた。


 ボスさんに続いて、俺らも投げる!最大限の身体強化でも、素で投げるボスさんに届かない。

 でも、クラブ使ってる時よりかは近い!グッチも同じ事思ったみたいで、

「まだ勝負になるかもよ?」

 うん。 

 それでも50ydは離れてるからな。

 普通の人間にあの距離は無理!

 それでも精一杯気張らせてもらいますかぁ!




 ミネルヴァ:

 ボスさんやダグラスが登場して、顔が熱くなった!

 いきなりボスさんがボールを投げたのを見て、笑ってしまったけど、ダグラスがちゃんと身体強化をして投げるのを見たら、嬉しくなっちゃった♪

 あ!イケない。嬉しくなってしまった。


 夕べは、部屋に戻ったら直ぐにルフから電話があって、3人に詰め寄られた。

 なんで泊まって来ないんだって?そんな事出来る訳無いでしょ!!

 もぅ~!と言いながら、ちょっぴり残念だったかな?エヘッ♪

 既成事実で、もう私の物に‥‥いえいえ何でもないですわよ。


 ゴルフの方は、話の流れからもう上位は狙えないから楽しもうって事になった。

「あんたは十分楽しんでるみたいだけどね~!」

 そんな嫌味もフフフン!と流してたら、何故か魔法比べの話になってしまった。


 上位はもう狙えない。

 真悟人様は人に迷惑掛けずに楽しんでくれれば良いと言ってくれてる。

「よ~~し!明日のゴルフは魔法勝負ヨ!」


 売り言葉に買い言葉で、そんな事に‥‥。

 ‥‥ティグランドに立つとキャディさんが、

「あの?クラブは?‥‥まさか投げるんですか?」


 ダグラス以降、投げるチームが何組か居た。

 身体強化も使えないならやらなきゃ良いのにね?

 私たちは身体強化なんて魔法は使わないけどね。

「飛べ、行けっ」

 ほぼ詠唱無し。浮かして飛ばした!


「はっ!?今、何が??」

「ん?見て無かった?大丈夫よ!」

(何がだよ?)

 キャディさんが焦ってたけどテキトーに誤魔化した。(誤魔化せてねーよ)


「そういえば、ココは魔法の無い国だっけ?‥‥ルフ!こっそりね。」

「どの口が言うか?この女は!」

 そう言うルフも、何も考えずにボールを吹っ飛ばしてた。


 ルバン王国から来た人たちは、当たり前におお~~!!とか言ってるけど、キャディさんたちは‥‥後でフォローが必要みたいね。


 ティショットは良かったんだけど、第2打?目から‥‥

「飛べ、行‥‥あああ~~~!!横から邪魔したなぁ~~!もう許さないんだからね~!」

 浮かした瞬間に横から飛ばされた!

「この女たちは油断も隙も無いんだから~!!」


 もう真剣勝負です!

 打つ瞬間に目の前で、風が蜷局巻いてるなんてありえない!でもね、

「ふふん!風のミネルヴァを舐めるんじゃないんだからね!」

「ああ~~!!」

「風は舐めないけど、ミネルヴァは夕べ舐められちゃったかな~!?」

「ふぇ!?そ、そんな事はある訳無いしぃ~‥‥」

「あんたのボール、アッチ行っちゃったよぉ~!!」

「あっ!‥‥ムキーー!この女わぁ!?」


 ‥‥低俗な争いは続きます。



 ~~~~~~~~~~



 神官のお姉さん、動かないねぇ‥‥

 終盤なのに動かないという事は、日本ツアーに行くメンバーに対して動くのか?

 そりゃ、リスク高すぎるでしょ!?

 まぁね、現状じゃ王妃様チーム確定だろうし、あそこのメンバーは、それこそ無理だろ。

 ん~~‥‥あれは?BINGOの商品、日本ツアーの当選者!

 そうだな‥‥でも、いつ行くか、まだ打診が無いから微妙だな。

 だから狙い易いかもよ?今のうちに施して置けば‥‥ね?

 やっぱ、そうなるかなぁ?



 ~~~~~~~~~~



 ダグラス:

 あぁ~~!!!

 結局勝てなかった!‥‥まぁ、分かってたけどね。でも、グッチとは良い勝負できたから、まぁ良いか。

 しかし、10ホール、パー5、540ヤードのロングコース。

 あれは参った!!

 ボスの第2投、真っ直ぐグリーンに大遠投!!

「あぁーーーーー!!!!」

「‥‥‥‥入ったぁ!!!」


 ‥‥‥‥うそ?‥‥えーーー!!マジで!?

 アルバトロス(-3打)‥‥そんなのがあるんだ?

 イーグル(-2打)より上があるなんて知らなんだ。

 だったら、-4打(パー5でホールインワン)これが最高だろうが!

 それはなんて言うんだろう?ボスさんなら、ウッドクラブ使えばやるぞ?

 そんな快挙!を見てみたいと思ってしまった。


 因みにパー5でホールインワン(-4打)は、コンドルと言うそうです。

 ー2打でイーグル・・・鷹ですな。

 ー3打でアルバトロス・・・アホウドリだそうです。

 ー4打でコンドル・・・コンドルは飛んで行く‥‥。

 全部、鳥の名前ですね。

 コンドルはアンデス山脈に住み、翼を広げると3mにもなるそうです。

 飛ぶ鳥の中で最も重いコンドルは「1回も羽ばたかず」に170キロも飛行することができると確認されています。効率的に飛ぶ最重量の鳥類らしいですね。



 閑話休題


 クラブハウスに戻ってきたら、知った顔を見つけた。

「よぉ、珍しい所に居るなぁ。」


 ・・・・!!






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