第133話 授業

 スティングとイネスの学校生活。


 朝6時に起床。

 二人で近くの川までランニングに行きます。

 これは小さい頃からの習慣。(まだ小さいですが‥‥)


 川で軽い乱取り訓練をしてから寮に戻る。

 大体7時前には帰って、シャワーを浴びてから朝食に行く。

 こんな年頃で、そんな生活なんて!?と思いますが、そこは牙狼村クオリティ。

 物心着いた頃には、鍛える習慣が付きます。


 やはり、野生の心を失わないようにしようと、甘えていては生きて行けない暮らしを送っていた者たちの知恵が生きています。



 寮の朝食は、パンとご飯が交互に出ます。

 パンの日にご飯が良いと言う人は、有料で出して貰います。

 その代わり、パンの日にパンは食べ放題!スープもお替り自由!ご飯の日には、ご飯も味噌汁もお替り自由です。どうせそんなに食べられませんが。


 今日はご飯の日でした。

 おかずは朝定食で、鮭と卵焼きとハムと納豆または海苔。これにご飯と味噌汁が付きますが、要らないおかずは取らなくても良しです。


 食堂は男子寮と女子寮の中間にあり、どちらへも行けそうですが、ゲートが在って、来た側にしか出れません。

 寮と食堂は渡り廊下で繋がっているので、実質行き来は出来ないようになっています。

 もう1か所、学校の食堂とも繋がっていますが、こちらは職員専用で生徒には開放していません。


 因みに、イネスが納豆好き海苔嫌い。スティングは納豆嫌い海苔好きで、互いに『こんなに美味しい♪のに!』と、思っています。

 二人とも、小さい頃に(今も小さいですが)イネスは海苔ばっかり、スティングは納豆ばかり食べていた副作用でしょうか?


 食堂で海苔や納豆が出されてる事態が真悟人クオリティですが‥‥

(この世界では意外に高級品です。)


 巨大な食堂で、イネスとスティングはそれぞれの友人たちと朝食を取ってから学校に向かいます。


 8時半からホームルーム20分。9時から50分授業で10分休憩して10時から2時限目。

 午前中3時限、午後2時限の1日5時限です。


 まだ子供なので、読み書き計算の基礎や、魔法基礎、軽い運動の体育などが基本。

 そんなスゴイ事はやらせません。


 しかし、そんなスゴイ事が出来てしまう子供も中には居る訳で‥‥


「良し、魔法の基本的な発動方法は分かったな?各人、指先に炎を出して見ろ。くれぐれも人に向けるなよ?そんな奴は俺が燃やしてやるからな!?」

 グルっと見回して脅かしておく。

 相変わらずのヘルメスである。


「では、各人始め!あぁ、スティングとイネスはこっちに来い。」


「「‥‥‥何でしょう?」」


「お前たちは魔法の基礎なんてチャンチャラおかしいだろう?」


「「いえ、基礎は大事なので、そんな事無いです。」」

 息の合った二人である。


「お前たちは俺と模擬戦だ。」


「「えー!!」」


「つべこべ言うな!俺に勝てれば免除してやろう。」


「うわ~!無茶振りも良いトコだよ‥‥」

「スティ、しょうがない。前衛と後衛じゃんけんで決めよう。」


「俺、こないだユナママから新しい土魔法教わったから前衛やりたいな。」

「分かった。私もトゥミママから回復魔法教わったから安心して死んできて。」


「‥‥それ、安心出来ないじゃん。」

「大丈夫!何とかなる。」


「お前たち、相談は済んだか?行くぞ!」


 魔法で襲い掛かるヘルメスをスティングが土魔法で防ぐ。

 その間にイネスがバフを掛けて魔法を強化する。


 どんどん白熱する魔法戦。

 周囲の生徒は、最初はあっけに取られ、次第に応援に白熱するようになったが、今ではそんな事より、自分の魔法訓練に精を出すようになった。


「これ、授業じゃねぇよな?」


「ああ、ヘルメス先生のストレス解消じゃね?」


 魔法基礎の授業風景である。



「良ーし、全員集まったな。班長は点呼を取れ!」


「1,2,3、・・・・・」


「今日の体育の授業は、武器の基本使用のうち、剣だ!人によって向いている武器は違うが、弓の名人でもナイフくらいは使えないと命に係わる場合がある。だから一通りの修練は積んでもらう。」


 体育の授業は、オークのウメヤマである。

 彼は、剣と言うより刀の達人だが、他の武器にも精通している。

 そこを見込まれて、魔法学校の体育の授業を受け持つことになった。

 彼はコワモテだが、面倒見が良いので生徒たちからは人気が在る。

 ただ、一部のクラスを除いて‥‥


 今日の授業は、剣の素振りと打ち込み。

 素振りで余計な力が抜けた後(腕が萎えてからとも言う)ダミー人形にひたすら打ち込む。体力的にキツイ授業である。

 しかし‥‥


「スティングとイネス!見てやる。」


「「えぇ~~!‥‥辞退します。」」

 ここでも息の合った二人。


「ほれ!多少は使えるようになったか?」

 渡されたのは、片刃の反りのある刃物‥‥刀、真剣である。


 スティングとイネスは、互いの顔を見合わせて大きく溜息をつく。

「しょうがない。時間内だけ我慢して相手しよう。」


「トゥミママから刀の技も一つ教わった。ちょっと試したい。」


「お?初披露か?」


「うん。出処はパパなので、ウメヤマさんに一矢報いたい。」


「それは、やってみる価値はあるな。立ち位置は?」

 ゴショゴショと相談をしてから挑む。


 直立して並んで挨拶をする。

「「礼!よろしくお願いしますっ!」」


 礼をした後、構えに入る。

「ほう、スティングは正眼で、イネスは居合か。面白い!」


 イネスの居合は、抜き付けに斬り掛けたが、ウメヤマの袖を切り開いただけだった。


「思った以上に速いじゃねぇか?スティングのフェイントも悪くねぇぞ。」


 真剣による剣戟で火花が散る。

 とても授業風景とは思えないが、周囲の生徒は黙々と打ち込みを行っている者と、順番待ちで並んでいる者、他に休憩してる者たちは、スティングとイネス組対ウメヤマの模擬戦を見ながら駄弁っている‥‥


「もう見慣れた光景だけど、相変わらずスゲェな。」


「ああ、スティングもイネスも身体強化使ってんのか?」


「あれ、使って無いらしいぞ?素であの動きらしい。」


「マジか!?本当に同じ年か?」


「牙狼村じゃ、あの位出来ないと暮らして行けないらしいぞ?」


「さすが、迷宮魔女の森の奥地だな‥‥遊びに行くのは無理そうか?」


「いや、牙狼戦隊が護衛に着くんで、かなり快適に遊べるってよ?」


「なんか、焼き肉とか味噌漬けとかメチャメチャ美味いんだってよ!?」


「おおー!楽しみ~♪そんじゃ、休みにスティングの村へ行くのには鍛えるしかねぇな!」


「「「おぅ!!!」」」


 単純な男の子たちである。



 一方、女の子たちは、

「はぁ~‥‥同じ人間とは思えない動きだよね?」


「イネスが言うにはね、美味しい物を採る為に鍛えるんだって?」


「そうなの?美味しい物かぁ。所で、休みにイネスのトコ行くのはOKだった?」


「ウンウン。戦隊が護衛に就くって言ったら即OKだよ!」


「うちも!一杯お土産持って行って、イッパイお土産持って来いって!」


「うちは魔法袋を準備しなきゃって言ってたよ!」


「イネスのパパがね、お菓子食べ放題やってくれるって!」


「「「キャアーーー!!!」」」


 どっちも食い物に釣られていた。

 平和な授業風景である。

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