第121話 クラス

 魔法学校の入学式。


 スティングとイネスは優秀な成績で合格したが、新入生代表の挨拶は王子様がやる様だ。

 王子様の年齢はもしかしたら同級生位?と思っていたが、ドンピシャだったみたいだね。


「お父さんゴメンね。代表の挨拶出来なかったよ。」

 ちょっと残念そうにスティングは呟く。


「何言ってんだ。そんなのはイイのさ!スティングはほぼ満点だったんだろ?そんな自分を誇れ!」

 スティングの頭をワシャワシャと撫でる。

 トゥミ譲りの綺麗なサラサラの銀髪が乱れてしまった。


「パパ!あたしも満点だったんだよ!スティに負けなかったよ!」


「おお!イネスも頑張ったな!でも勉強は勝ち負けより、ちゃんと自分の身になったかが大事だからな。」

 そう言うと、ちょっと不満な顔をしたが、髪を優しく撫でてやるとニッコリと笑ってくれた。


「あたしね!パパの為にイッパイ勉強頑張るからね!ちゃんと見ててね!」


「僕だってお父さんの為にイッパイ頑張るよ!」


「ああ。二人ともちゃんと見てるからな。俺の自慢の息子と娘だからな!」



 入学式は校長のヴィトンの挨拶。


「「あ!ヴィトンの爺ちゃんだ!」」 

 思わず小さく手を振ったら、ウィンクで返してくれた。


 それを見た真悟人は、絶対後で弄ってやる!爺のウィンク誰得よ?そんな益体も無い事を考えていたら、

「真悟人、後で余計な事言わないでね。」

「そうそう。誰得?とか考えてそうだから、止めてね。」

 トゥミとアンジェに釘を刺された。


 先生紹介で、プラダやヘルメスは安定の挨拶。

 オークのウメヤマと魔狼のシルビアが出てきたときには、思わずニヤけてしまってトゥミとアンジェに小突かれた。


 入学式も滞りなく終わり、父兄はこれで帰る。

 後は新入生たちは各クラスに分かれて、オリエンテーションの後に寮に戻る。


 クラスは学力順に分かれている。

 S、A、B、C、Dの5クラスで、学年途中の学力測定テストと、学年が上がる際の進級テストの結果でクラス分けがある。

 勉強すれば上のクラスに、サボれば下のクラスになるが、一芸に秀でてる者はRクラスがある。

 Rクラスとは、勉強は出来ないが魔法はピカ一!、魔法はダメだが勉強サイコー!など得意分野を伸ばそうクラスである。別名レアクラスと呼ばれる。

 これは2年生以降なので新入生は関係ない。

 それでも、Rクラス狙いは一定数居るようで、大抵は脱落していくようだ。


 スティングとイネスは仲良く揃ってSクラスだった。

 入学式はクラス毎に並んだはずだが、緊張していたので周りは見ていなかった。

 移動時にそう言えばSクラスだっけ?と呑気なもんである。


 教室に入ると、席の半分くらいは埋まっていた。

 机に張られた名前を見て、自分の席に着く。

 男子列、女子列と交互に名前順に座る。

 既に友達同士の者たちは集まって談笑しているが、スティングはイネス以外に知り合いは居ない。イネスの方を見たらイケメンに話しかけられてた。

 余りジロジロキョロキョロするのもみっともないかなと思って、黙って前を向いていたら、先生が入ってきた。


 入ってきたのはヘルメスだった。

 目が合ったスティングはニヤッと笑った。

 それを見たヘルメスもニヤッと笑った。


「はい。みんな席に着け。」


 みんなバタバタと席に着いて時期に静まる。

 静まった皆を見渡して、とんでもない一言を発する!


「よし。スティング、号令!」


 は!?

 一瞬だけ固まったが、直ぐに気を取り直して

「起立!!‥‥‥礼!!(おはようございます!)(((‥‥お、おはようございます!)))‥‥‥着席!!」


「よし。ちゃんと出来たな。俺はこのクラスを受け持つヘルメスだ。」


 誰かが小声で、「土のヘルメス‥‥」そんな呟きもしっかり拾われて、


「ああ、そう呼ばれる事も在る。先ずは、さっきの号令だがこれは毎日やってもらう。今日はスティングにやって貰ったが、明日は別の奴‥‥かも知れない。」


 そう言ってクラスを見渡す。

「毎日、始業と終業に号令をしてもらう。誰が何回やるかは未定だが、沢山やった奴はご褒美を考えて置く。やりたい奴は事前に予約しておけ。」


 みんな何故かゴクリと唾を飲み込み、緊張している。

 今日のヘルメスさんは、いつもと雰囲気を変えて、厳しい風味のようだ。

 慣れてる僕は笑いを堪えて、無表情を装っていた。


「じゃあ、次はお約束の自己紹介をしてもらおう。自己紹介した奴は次の奴を指名しろ。それでは最初に真ん中でニヤけて居るスティング!お前からだ!」


 うわ!もう、狙い撃ちじゃん!

 ガタガタっと席を立って自己紹介を始める。

「皆さん、初めまして。牙狼村から来ましたスティングです。村から余り出た事無いので世間知らずな面があります。そんな時はドンドン指摘してやってください。これからどうか宜しくお願いします。では次の自己紹介は‥‥‥イネス。お願いします。」


 イネスも次は来るだろうなと予想していたみたいで、こちらを見て少し頷いてから立ち上がった。


「こんにちは。初めまして。イネスです。スティングと同じ村の出身です。不束者ですがよろしくお願いします。‥‥‥では、お隣の方、よろしくお願いします。」


 イネスは簡単に纏めたなぁ。あんまり余計な事言ってもしょうがないから、そんな感じが無難だろうなと思って聞いていた。

 次にイネスが指名したのは、さっき話しかけてたイケメンだな。


「イネスさんにご指名に預かり光栄です。私はシモン・アルノー・ド・ポンポンヌ・ルバンと申します。名前の通りこの国の第1王子となります。しかしこの学園に入ったので、身分より皆さんとの切磋琢磨を期待しています。どうか宜しくお願いします。‥‥‥では、次は隣の御方にお願いします。」


 次に指名された何処かの子息は、しどろもどろに自己紹介を行っていた。

 そうか、あいつが王子か‥‥‥まあ、イネスがどうするかは俺には関係無いし、この6年間を無事に過ごせる様願っていた。


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