第119話 エルフシティ

 エルフの集落はいくつかに分散していた。

 何故分散したか?

 その原因は謎だが、単に趣味嗜好の違いで別れて行ったと言われている。


 何故かと言うと‥‥


「お~!ヴィトンかぁ?相変わらずむさ苦しいなぁ。そのキタネー髭、剃ったらぞうよ?」


「なんじゃ?カルティエか?少しは乳離れできたんか?ママのオッパイから離れて、こんなとこまで来て大丈夫かのう?」


「なんだと!?死にぞこないの爺ィが!人間の庇護下に入ってエルフの教示捨てたんじゃねぇか?」


「フッ。まだエルフの教示とか言ってるからオッパイから離れられないんじゃろうの?」


「まだ、そんな下らない言い合いをしてるのか?お前達みたいなのがエルフの進歩を妨げてるんだ。少しは学習出来ないのか?」


「ほう。ロレックスの学習は少しは進んだのかのう?」


「なんだぁ?ロレックス?何しに来たんだ?研究バカの堂々巡りは飽きたのかよ?ヴィトンの爺ィとお前は本当にエルフをダメにして行ってるよなぁ!」


「「なんだ(じゃ)?カルティエのくせにエルフを語るんじゃない!!」」



 ‥‥‥あ~~、エルフの大きな集落は、現在3っ!

 ヴィトン率いる「エルフの里」

 カルティエ率いる「エルフ街」

 ロレックス率いる「エルフ村」


 それぞれ文化が違う。

 ヴィトンのエルフの里では農業がメイン!魔女の森の果実が目玉!

 カルティエのエルフ街では商業‥‥風俗業と美容や芸術。感性と本能の街!

 ロレックスのエルフ村では、工業、鍛冶、細工物の街。


 それぞれに良い所が在るのだが、互いに交易したりもしないのでエルフという種族として、効率が悪いったらありゃしない。

 全員一緒にやれば、種族としてかなりの収益と発展が望めると思うのだが‥‥


 そこで!エルフ共通の特技!魔法を伸ばすべく共通の事業を立ち上げられないか?

 それに食い付いたのは、ヴィトン!流石である。

 魔法学校を作って、エルフの子供たち全員を教育できないかと?

 それぞれの集落ごとに得意魔法も特技も違う。集約して子供たちに教えられないか?めちゃくちゃ前向きな意見が出てきた。


 実は、大昔にはエルフの魔法学校があって、ヴィトンはそこで魔法を学んだ。

 多分、カルティエが最後の卒業生で、その後は戦争やら人間とのなんやらで、魔法学校は廃校になってしまった。

 ヴィトンはこの魔法学校を復活したいと思っていたようだ。



 今回、それぞれのエルフの集落の長に集まって貰った訳。

 エルフの集落を統合して、エルフシティにしないか?という提案。

 それに当たって、魔法学校を復活させて、それぞれの得意魔法を後世に残そうとする思惑も話して、互いに忌憚ない意見を出し合って貰おうという趣旨である。


 最初は互いにケンカ腰で、罵倒の応酬だったが、少しずつ前向きな話になり、互いの持ってる物をどう活用するかという話になった。


 エルフの里は、商売が苦手で悪い商人が搾取しようとする場面が多くあった。

 エルフ街は、生産性が無く、自分達から生み出せるものが無かったので、高額で売買するしか物資を入手できなかった。

 エルフ村は、工業技術は在るが商売として売買するのは苦手。

 安く叩かれて食品などは高額で入手していた。


 これを纏めれば、食に困らないし売買もエルフのカルティエ商会で一括で手広く販売出来るうえに、取引先がトリネコ商会なので不当に搾取されることも無くなる。

 なんせ、真悟人がトリネコ商会との間を介すので、不当な取り扱いをしたら直ぐに別の商会に取って代わられるだろう。

 トリネコさんは律儀で生真面目な男なので、彼の目が光っている限り系列の商会も決して阿漕な真似はしない。


 エルフの生産物が纏まり、カルティエ商会を介するなら互いの利益は計り知れない。食品も工業製品も嗜好品も、今までとは比較にならない値段で取引されて、飛ぶように売れる。

 あれだけ、いがみ合ってた3つの集落は、実益が出だすと掌を返すように協力しだした。そしてエルフシティが完成したのである。


 美容関係はカルティエのこれまでの実績と、真悟人の知識と、実際の効果で、信じられない売れ行きを見せている。


 工業品は、魔法付与製品がメインで灯りや白物魔道具と呼ばれる家庭の必需品となっていた。真悟人の作ったマッチや水筒もこれに含まれるが、それは冒険者向けの製品の為に家庭用とは分けられている。

 家庭用白物魔道具とは、冷蔵庫、洗濯機、魔導コンロを指す。

 これらは巨大な工業用から廉価版の家庭用まで爆発的なヒットとなっている。


 此れが在ったからエルフが統合できたと言っても過言ではない。

 更に最近は風魔法を応用した掃除機というのが開発されて、まだ発売前だが貴族などから大量の予約注文が入っている。


 大量の注文に応える為には、魔法付与術者という技術者が大量に必要となる。

 その魔法付与術者を大量に教育をして、その発展形として魔法学校となるのである。


 エルフの統合によって人材が増えた分は、恩恵を預かるのは工業だけではない。農業も道具の発展と人材の増加により、効率的に収穫率も上がり、なにより美味しくなって売れ行きも上がる。


 そして人が増えて消費が進み、余裕ができると美容や芸術に目が向けられ、風俗業も盛況になる。生活に余裕が出来て、趣味などを楽しめるようになった。


 経済的に潤うと、少数派のエルフの部族も統合して、今、エルフという種族は乗りに乗っている。


 ただ、やたらとエルフの女の子を俺の所に派遣するのは止めて欲しい!

 トゥミやシャルたちの表情が険しくなるので、平穏な毎日を過ごさせて頂きたい。


 特にシャルは、母親の相手の男(父親)がカルティエの街から来たクズだったので、余計に警戒している。


 母親の相手の男(父親)は、先日他界したらしい。

 原因は女性に刺されたと。刺した女性には娘が居て、母親だけでは飽き足らずに娘にも手を出した。幸いクズの手からは逃れて未遂に終わったが、その際に娘を助けるために母親の女性が刺したそうだ。

 クズには相応しい最後である。

 女性には温情が掛けられ、情状酌量の余地があるとして執行猶予が付いた。


 シャルの気持ちはどうなんだろう?と思ったが、二度と顔を見ないで済む安心感と刺した女性に対する親近感と‥‥出来れば私が刺したかった?


 ‥‥‥‥‥。







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