第112話 姫様
「やめなさい!!!」
「え!?‥‥‥姫様??」
「は?姫?」
「!!‥‥‥」
「シバ!!何をやっているのですか!?もう誓いは忘れたのですか!?」
「‥‥姫。」
「私はこの村の主、神田真悟人様に命を助けられました。私だけでなく、アルファを筆頭に全員の命を救って下さいました。そして私たちはこの村の一員として暮らしております。今までの様な理不尽な掟も無く、自由に伸び伸びと暮らしています。‥‥‥貴方達は、私たちからまた自由を奪うのですか!?あれ程、互いに守りあった筈なのに、今度は敵となって私たちに仇名すのですか!?」
「姫‥‥‥」
「シバ!!答えなさい!!貴方達は敵ですか!?」
「姫‥‥‥我ら魔狼のシバ一族は、シャマル姫に絶対の服従を誓います!!」
魔狼、総勢600余りは全員伏せた。
まさに壮観の一言。乱れなく伏せて姫の一言を待っている。
「この牙狼村、神田真悟人様の元に私たちは庇護されています。今ここで貴方達に問います!真悟人様の元、絶対の服従を誓うなら食事も住処も保証しましょう。しかし!一点でも曇りあるならば、今すぐ此処を去りなさい!!」
「「「「「曇りなく絶対の服従を誓います。」」」」」
「‥‥‥‥‥‥分かりました。誓いを破った場合、死を持って償って頂きます。‥‥後は案内に従って下さい。」
魔狼と牙猿達で、家族単位で組み分けをして、独り者は年代ごとに♂の集団と、♀の集団に分けられた。
案内は実力者揃いなので、牙猿が相手でも舐めた真似をする奴は少なかったが、中には暴走して簡単に鎮圧される奴らも居た。
呆気なく鎮圧されるのを見て、暴れるのは無駄だと悟ったようだ。
周囲でも牙狼戦隊が囲んでいて、牙猿を乗せた魔狼というのは羨望の目を向けられた。何故か?魔狼が乗せるのは、よっぽど信頼関係にある者だけだ。
そんなパートナーを乗せて、見るからに戦闘力の高い集団。
牙猿にとってもそうだが、魔狼にとっても「スゲェ!‥‥」と思うのである。
班分けされた彼らは、まず食事を振舞われた。
子供たちも痩せてガリガリである。
腹に優しい、消化の良い物を食べて、胃腸がビックリしない様に整えていく。
聞くと、やはり獲物が捕れた時は、いきなり肉を食うので体調を崩す奴も多かったらしい。だから肉と牛乳で煮込んだリゾットを振舞ったのだが、予想以上に好評で、涙ぐんでる親子も多かった。
食事を取って、一休みしてから村に向かって移動する。
班ごとに引率が付くので、村の様子や仕事などを話して聞かす。
仕事をすれば飯が食える。
ならば、どんな仕事が良いのか?どんな仕事があるのか?いきなり決めなくても良い。今はイメージしてもらう。
そんな話をしながら移動するので、大人も子供も楽し気に移動していく。
今日は全員が長屋に入ることは出来ないので、また急ピッチで長屋を増設している。長屋だけじゃなく、トイレや風呂や流し場など、基本的に人化して暮らせるようにしているが、別に強制ではない。暮らすのに便利だから自然と人化して暮らす者が多い。特にトイレは、洗浄便座に取り付かれる者達が圧倒的だ。特に女性はもう、その辺でトイレ何て考えられないそうだ。
大多数の集団が移動して行き、最後に残ったのは、シバ、シュナウザー、ブルとトサそれに真悟人達である。
皆、人化していた。
シバは‥‥イケメン!ちょーイケメン!人類の敵だな。
シュナウザーは、銀の口髭の渋い親父!
ブルとトサは、ブルドッグと土佐犬‥‥そのままじゃん!
「姫様、大きくなられましたな。」
「じぃ。久しぶり‥‥‥」
シャマルはシュナウザーに抱き着いた。
泣いているようだった。
彼は、シャマルの父、魔狼の王の側近だったそうだ。
主に暗部を纏めていたらしく、知ってる者は少ないと後から聞いた。
「お主がアルファか?」
「ハイ‥‥‥」
「姫を守ってくれて礼を言う。お主はインスパイアの息子だったな。」
「お、親父をご存じなんですか!?」
「ああ。勇敢な男だったよ。」
アルファの目にも光るものがあった。
その後、シルヴィアと結婚したことなどをシャマルにバラされて真っ赤になっていたが‥‥
「そうか、お前、シルヴィアとようやく一緒になったのか。」
「シバ、お前はどうなんだ?テリアちゃんとは?‥‥ヘタレだからダメだったか?」
「ぬかせ!もう、2男1女の親父なんだぞ!」
「おぉ!ついにか!なんだまた飲む理由が出来たな!」
久しぶりの再会の雑談になっていた。
互いの近況報告や、感動の再会などで終わりが無い。
いつまでも此処に居てもしょうがないので、
「ヨシッ!俺たちも移動するぞ!詳しい事は村に着いてからだ。」
「神田真悟人様、今回の件、姫を保護してくれたこと、本当に感謝いたします。」
人化していたシュナウザーが膝を着き、頭を下げた。
シバもブルもトサも、膝を着き一緒に頭を下げた。
「我ら、真悟人様の元、忠誠を誓います。どうか宜しくお願い致します。」
「「「お願い致します。」」」
改めて、忠誠を誓われた。
「俺からは一つだけ。‥‥‥幸せになろう!」
「‥‥‥はい?」
「抽象的すぎるかな?お前たちが何に幸せを感じるかは知らないが、周りに迷惑掛けずに幸せに過ごせるのが一番だと思うんだよ。‥‥だから幸せになろう。」
「なるほど。その通りですな。では、主の元、幸せになります。」
「ああ。その為に互いに協力して幸せになろうぜ!」
「「「「はい!!」」」」
村に移動する道すがら、村に状況や食糧事情などを説明しながら歩いた。
「私は、真悟人様のお嫁さんになって幸せになるんです!」
姫様の爆弾発言が飛び出した!!
まだ、何の状況説明もしてないのに、先にそれを言われるとややこしくなるから!
「おお!姫様は真悟人様のお嫁様候補ですか!そろそろ年齢的にも十分ですな。」
アルファは、あちゃ~~!って顔をしている。
俺は苦笑いするしかなくて、どう説明するかなぁ?と思案していると
「6番目のお嫁さんだから‥‥あっ9番目かな!私が一番若いの!!」
ありゃ~‥‥
シバやシュナウザーたちの俺への白い眼は他所に、姫様の暴走は続く‥‥
後で、トゥミ達やアンジェ達のフォローが無かったら、俺、殺されてたかも?
シュナウザー爺様に姫様の再教育をお願いします。
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