第103話 報告

 毎朝の朝礼。

「おはようございます。」


「「「「「おはようございます。」」」」」


 日常のお知らせから、仕事の伝達事項、全体としての作業状況などの話をする。

 個々の職場の細かいことは、それぞれの職場でやってもらう。


「朝礼の最後に、幸せな報告があります。はい‥‥グッチから、どうぞ。」


 グッチとシルヴィが二人で壇上に立つ。

「おはようございます。私、グッチから報告です。この隣にいるシルヴィと結婚いたします。皆様のご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。」


「「「「「おおぉぉーーオメデト~!!」」」」」

 皆からの拍手喝さいを浴びて、腕を組んで壇上から降りる。


 此処での結婚は、皆の前で報告することで認められるのだが、「ちょっと待ったー!」とか物言いを付ける奴は見た事がない。

 報告した後で、皆の予定を合わせて宴会である。


「さて、今回はもう一組。‥‥ディオ。どうぞ。」


 ディオとティーネが壇上に立つ。

「すぅ~~、はぁ~~‥‥すいません。緊張してまして、」

 皆から笑いが零れる。

 緊張してると言ってる割には、落ち着いて深呼吸してるディオである。


「改めまして、皆様おはようございます。私、ディオはティーネをお嫁さんに貰います。未熟な二人ですが、温かい目で見守って下さい。以上よろしくお願いします。」


「「「「「オメデト~!ヒューヒュー!早く子供作れよ~!」」」」」

 ヤジに笑いが起こる。皆の拍手喝さいと冷やかしのヤジを浴びて、手を繋いで壇上から降りる。


 4人ともに顔が赤い。幸せの熱だね。

「グッチ、シルヴィ、ディオ、ティーネ、4人ともお幸せに。もう一度盛大な拍手をお願いします!‥それでは今日の朝礼は終了します。あっ!宴会は明日です!」


 それぞれの挨拶に性格が表れていると思う。

 周囲の反応も当然それぞれに違うのだが、祝福する気持ちは一緒である。


 宴会は明日にしたのは、グッチは厨房担当だからである。

 今日のうちに仕込みなどをやっておいて、明日は人に任せる様にしないと、主賓なんだから厨房をやっている場合ではない。

 カレンにはウェディングケーキを頼んでいる。

 2組分なので、ワフスリとジーワンの配下を使って準備を始めている。

 オーク達、大食いのメンバーが増えたので、厨房は大変な事になるだろう。

 迎賓館の厨房は、200食分対応の規模に拡張しているし、設備も大幅にパワーアップしているが、それでも足りないのは目に見えている‥‥

 料理人の数も限られているので、グッチの分の穴埋めは大変だろう。

 オークの中にも料理人は居るらしいので、皿洗いや野菜の皮むき等は任せられるそうだ。

 これを機会に、オーク達も此処の厨房に慣れて行って欲しい。


 今回、日本に帰った時に食器や厨房用品を大量に買って来て置いて良かった!

 ガラス製品やプラスチック製品、それとアルミ製やステンレス製が大量なので、この世界の人間には見せられない。

 自重どこ行った?

 外に出すのは、この世界の物で作ってるが、村の中では少々タガが外れて来てると思う。

 この世界の人間たちより、この村の牙猿や魔狼やオーク達の方が、高水準な文明生活をしていると思う。


 最近は、土木建築もかなり進歩して、各家庭も上下水道完備で竈から魔導コンロに変わりつつある。照明なども街灯が設置されたり、道路の舗装もされている。

 全て、スライム先生が技術本を読んで、皆に講習をした成果である。

 牙猿とオークの有志が、鍛冶場を作って鍛冶にも挑戦しだした。

 スライム先生に色々相談しているようだが、職人技は流石に説明できないと項垂れていた。

 いやいや、職人技が説明して再現出来たら職人さんの立つ瀬無いから‥‥


 そうやって村の中の様子も変わりつつ在って、当然、集会場というか宴会場というか、そこもBBQサイトと合わさって大きくなっているし、舞台も作られている。

 普段はオープンだが、雨の時はテントが張れる様になっている。

 両側からロールになっているテントシートを引っ張って来て頂上で合わす。

 継ぎ目の上に細長いシートを載せれば立派な天幕の完成である。

 牙猿の身体能力の成せる業ですね。



 閑話休題


 グッチ達が挨拶したのは、集会場の舞台の壇上な訳で、マイクならぬ拡声の魔道具使用である。

 また話がズレてしまうが、魔道具作成の技術もかなり向上した。

 エルフの里で、ラダン、ルミック、ポメロが頑張ってマッチや水筒を作成していたが、技術は更に進んだ。

 今までの魔法の付与は、自分で発動できる魔法だけだったのだが、人が発動した魔法も付与できるようになった。

 魔法を発動する人と付与する人で、協力して行えば人の魔法も付与できるのである。


 因みに、拡声器、投光器、掃除機、ドライヤー、魔導コンロ、冷蔵庫、冷凍庫、湯沸器、扇風機、魔導ポンプ、などなど電化製品の様である。

 まだ、冷凍冷蔵庫を売る予定だけで、量産はしていない。魔法付与が使える人材を増やさないと、量産は難しいだろう。


 いつのまにか、サラとシャルも簡単な魔法付与なら使える様になってたので、地道に増やせると考えている。


 また結婚報告と宴会の話からズレてしまった。


 宴会に当たっての食材と料理の目処は立った。

 会場に関しても大丈夫だろう。

 ワフワンに頼んで、ウェディングドレスみたいな衣装を準備しようと思っている。グッチとディオには内緒にしてるので、当日驚いて惚れ直してくれ!


 後は、折角なので新郎新婦の両親も呼んで、お涙頂戴なんて事も出来るかな?

 BGMはどうする?って?‥‥

 この世界で音楽を聴いた事は無い。

 楽器などがあるのかも不明だが、スライム先生に聞いたら、一応有る事はあるらしい。しかし、王室の宮廷楽団くらいで音楽自体が一般的ではない。

 音楽は貴族がダンスをする為の物という認識なんだそうだ。

 これは今後の課題だね。


 指輪は‥‥彼らに指輪の交換という風習は無い。

 俺が嫁さんたちに渡したのは、俺なりのけじめ何だが‥‥

 グッチ達から結婚についての報告を受けたときに、指輪の話も出た。


 女性の間では、結婚指輪というのがトゥミ達の話から広まっていて、憧れになりつつあると言う事だ。

 ここでグッチ達から指輪を渡せば、それは不動の行いとなるだろう。

 結婚の際には指輪を渡し、男も同じ指輪を左手の薬指に嵌める。

 既婚者かどうかは一目瞭然。

 誰の者かも一目瞭然。

 恐ろしい風習を伝えたのでは無いだろうか‥‥‥


 指輪自体は、俺が準備してたものを渡した。

 カレンとユナとに準備していた指輪。


 ‥‥‥かなり罪悪感というか、申し訳ない気持ちになったが、無いよりはと思い、グッチとディオには事情を話してそれでも良いか、了承を得た。

 嫁さんたちには内緒である。と、思ってたがあっさりバレた。


 4人集めて、指輪の事情を説明した。

 女性2人は嫌がるかなと思っていたが、意外にも素直に納得してくれた。

 理由は、俺が選んだモノだから。

 旦那になる男が、他の女に準備したなら絶対に嫌だけど、俺がカレンとユナの為に準備した物なら大丈夫だと。ただ、後日ちゃんと二人の指輪は新たに用意することになった。









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