第99話 カンダ株式会社
会社の皆にお菓子を配った。
一人当たり、¥1000も行かないお菓子で、約100人分用意した。
ちゃんと足りそうで良かった。
前回のお菓子も好評だったようなので、同じお菓子屋に頼んだのだ。
頼んだ時にそこのオーナー兼パティシエの男性に感謝されたのでまた頼もうと思う。「ご贔屓にして頂いてありがとうございます。」と言われれば、こちらも嬉しい。だからまた頼む。これが、売ってやるんだという態度だと2度と買わない。
人間、そういうもんだと思う。
さて、また会社を見て回ろうか。
~~~~~~~~~~
「京子~~!」
「和代かぁ‥‥‥」
「やらかしたんだって?」
「言わないでよぉ‥‥」
「でも、社長に褒められたらしいじゃん?ちゃんと案内できるって!門前払いされなかったって!」
筒抜けである。
「もう、小学生じゃ無いんだからぁ‥‥」
噛んでしまった事は言われないで良かったと思う井坂京子である。
「社長はどうだった?カッコ良かった?」
「‥‥うん。スゴくカッコ良かった。とても40代には見えないよぉ。」
「あたしも会いたかったなぁ!」
「まだ、居るんだからぁ会えるんじゃない?」
「いや~!あたしもやらかしそうだからねぇ?」
「そうねぇ。最初、ちょっと見た目の良いおじさんが来たな。としか思わなかったんだよねぇ。」
「かなり良いもの着てるもんね!伊達に億超えで稼いでないよね~!」
「なんか、穏やかでね、謙虚な感じだったんで、まさか社長とはなぁ~」
「大した事無いのに偉ぶる奴が多いからねぇ!実ほど頭を垂れるなんとやらだね。」
「ほんとに!何で独身なんだろぉ?彼女とかいるよね~?きっと!」
「だよね~。玉の輿は夢のまた夢かな?」
「うん。そうだねぇ‥‥」
~~~~~~~~~~
「お疲れ様でーす。」
社長に貰ったお菓子を持って、さっさと帰ってお菓子を食べようと思う富岡香。
「おーい!香、早いじゃん!」
「綾も帰り?」
近藤綾。富岡香の1年先輩だが、同年代で仲良しである。
因みに、3‥‥‥いえ、何でもありません。
「そそ。今日早番だったんだよね。」
「そうなの?早番なら遅くない?」
「社長来たっていうからさ、またお菓子貰えるかな?って。」
「なるほど!社長はいつもお菓子くれるの?」
「そうだね。中々来ないから滅多に無いけどね。」
「今日ね、やらかしちゃってさ‥‥‥」
「ん?香が?珍しいじゃん?」
「就職希望のおじさんが来たって、お茶を出しに行ったのね‥‥」
「まさか!?」
「そう、そのまさか!?‥‥社長って気付かなくてね。」
「あちゃ~!」
「ただ、お茶出して知れっと応接室出たんだけど、結構カッコいいおじさんだなぁって思って、服もスゴク良いもん着てたのね?‥‥あれ?って思ったときは、中から課長の叫びが!社長~~!?って!」
「やっちゃったねぇ‥‥気付かないのは問題だよね。」
「ね~‥‥最初、井坂が案内してて何も言わなかったし、気にもしなかったんだよね。」
「そりゃ気付かないかぁ。でも、怒られたの?」
「全然。すごく穏やかな感じで、井坂何て、挙動不審のオジサンなのに門前払いしなかったって褒められてたよ。」
「‥‥小学生かい。」
「あはは。謝り行ったんだけど、井坂が噛み噛みでね。生温い目で見られてたよ。」
「ぷぷっ!20代までは許されるって奴だね。」
「まったく!あたしを見る目は、お子さん何歳ですか?って感じだね。」
「あっはっはっは!ウケル!!」
「綾も一緒なんだからね!」
「がーん!そんなはずは‥‥」
「そんなはず‥‥‥ん?どした?」
「あれ!‥‥社長じゃない?」
「えっ!!‥‥ホントだ。」
タクシー乗り場に社長がいた。
「声、かけて見ようよ。」
「えっ!ちょっと綾!やめなさいよ!」
「社長!お疲れ様です。」
「はい。お疲れ様です。えーと?」
「すいません。システム課の近藤綾です。」
「初めましてだね。神田真悟人です。いつもお疲れ様です。」
「はい。」
「ちょっと綾!」
「あ。富岡香さんだね。今日もお疲れ様。」
「あ!はい!今日は、すいませんでした。お疲れ様です。」
ボロボロである。
「社長は街まで出るんですか?」
「そう。偶にはこっちで飲もうと思ってね。」
「いいですね!やはり彼女さんと待ち合わせですか?」
「いやいや、そんな人居ないからね。一人でぶらぶらですよ。」
「よろしかったらお供しましょうか?」
「ちょっとぉ!綾!何言ってんのよ!」
「あはは。僕が女性社員を誘ったらセクハラになりませんか?」
「全っ然、そんな事無いです!大丈夫です。」
「そうですか?富岡さんも大丈夫ですか?」
「ひゃい!だ、大丈夫です!」
人の事を言えなくなった。社長は笑ってるし。
「じゃあ行きましょうか。タクシーで行きましょう。何処か良い場所は知ってますか?僕はこっちのほうは疎くてよく知らないんですよ。」
「駅周辺で大丈夫ですよ。」
「了解しました。」
『ちょっと~綾、大胆過ぎ!』
『だってチャンスじゃない!』
『失礼がないかドキドキだよ~』
『でもさ、タクシーも一緒に座って密着するんじゃなくて、助手席に座るなんて紳士よね。』
『うんうん。ここぞとばかりにくっ付いて来るのが多いのにね。」
ヒソヒソとそんな話をしてる間に到着。
駅に付いたら、グルっと見回して「あっちに行きましょう。」
社長は私たちの歩くスピードに合わせてくれて、案内してくれる。
あれ?よく知らないんじゃなかったの?
ちょっとおしゃれな和食のお店に入って行った。
『スゴイね。高そうだよ?』
『知らないって言ってたのに、予約してたのかな?』
席について、お任せコースを3人分頼んでくれた。
一応、好き嫌いも聞いてくれたので、お任せをお願いした。
飲み物は、最初ビールを頼んで、キンキンに冷えたビールがすぐに出てきた。
「「「お疲れ様です!カンパイ!」」」
「ふぅ~!美味い!やっぱ日本のビールが一番だな。」
「社長、こんなお店よくご存じですね?」
「ああ、タクシーで移動中に検索したんですよ。」
「「なるほど!」」
「社長はずっとどちらに行かれてるんですか?」
真悟人が一番答えられない質問である。
「異世界ですよ。」
「「はい??」」
「あはは、あちこち行くんですが、何処も日本と違って異世界ですよ。」
「そういうことですか。」
上手く誤魔化せたらしい。
「ラノベみたいに異世界転移を考えちゃいました。」
「近藤さんはラノベ読むんですか?」
「結構好きなんですよ。元は香に教えられたんですけどね。」
「ちょっと~!バラさないでよ。」
「へ~!富岡さんも読むんですね。」
「お恥ずかしいです。」
いくつかコース料理が出てきて、食べながら話す。
予想以上に美味しいお店だった。
「社長、私たちに敬語は使わないでください。」
「それじゃ、僕の事も名前で呼んでくれます?」
「真悟人、さん?」
「香!何言ってんのよ?」
「あ!ご、ごめんなさい。」
「いやいや、大丈夫だよ。こんな綺麗な女性に下の名前で呼ばれるとドキッとするね。」
香は真っ赤になってしまった。(綺麗なんて、初めて言われた。)
実は周りの皆はそう思っているのだが、高嶺の花なのと、セクハラが怖いので言わないだけである。
「神田さんで良いですか?」
「ああ、ここは会社じゃないからね。それで良いよ。」
その後は、割と砕けた話になり、3人とも独身な事と特定の相手も居ないことで、際どい話も混じる大人の会話を交わしていた。
食事も済み、店から出ると、
「神田さん、ご馳走様でした。私、用事を思い出したので、ここで失礼します。」
『香、この後上手くやんなさい!お邪魔虫は消えるからね~。」
『ちょっと、綾!』
『じゃあね~!』
「それじゃあ、失礼します。ありがとうございました。」
「あ!ちょっと待ってね。」
社長は道に出て、タクシーを止めた。
そして、先に料金を渡している。
「女性が一人で帰るのは危険なので、タクシーで帰りなさい。料金はもう払ってるから心配しないで良いよ。」
「神田さん。ありがとうございます。お言葉に甘えさせて頂きます。」
「はい。気を付けて。お疲れ様。」
「香、また来週ね!」
タクシーのドアが閉まり、車は直ぐに見えなくなった。
「さて、富岡さんはどうします?タクシー止めますか?」
「神田さんはこの後は?」
「僕はもう少し飲んで帰りますよ。」
「あの、お邪魔で無ければお供させて下さい。」
「時間は大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です。」
「了解です。それじゃ静かに飲める所に行きましょうか。」
二人は夜の街を歩きだした。
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