第97話 帰還5
オーク村の作物や方向性が決まったところで、川沿いに養殖池を作ろう。
ヤマメ用、イワナ用、ニジマス用、ブラウントラウト用、キングサーモン用などを作るが、海に降りて戻ってくるのを考えなければならないので、ちょっと悩み処です。
ヤマメはサクラマスに、キングはマスノスケなど色々名前も変えるし、交配もする。
自然界じゃ交配しないが隔離された状況だと、色々混じるので出来たら純血を保ってあげたい。
基本は池で大きく育てて、卵を採取して人工孵化して大きくしてから放流。
そんな事したら、野生の魚たちを脅かすのでそれなりの餌を流す。
餌、流したら川が汚れるかな?色々バランスが難しいよね。
マンガリッツァは、骨酒が美味かったもんだから養殖池はめちゃめちゃヤル気です!更にマスコや川魚の干物の美味さも知ったもんだから、細かく指示を出し、報告も詳細に求めて、彼のやる気溢れる姿勢が皆に伝播して、一丸となって同じ方向に向いている今の状況は最高だと思う!
これで、上手く行けば魚の養殖は確立できるだろう。
養殖は上手く行きそうなのだが、次の心配は交易するためには外に出せるのか?
‥‥‥ダメかな。
交易要員はちゃんと育てないとダメだね。そこ等辺はジョゼットさん達に丸投げするか。
サラやユナに、鶏の事や畑の事を教えてもらうのに無理をお願いしたから、二人にお礼を言って置く。
そんな中で、ユナが、
「私もカレンも、まだ諦めて無いですよ!」
そう言って彼女は駆けて行った。
「ん?何の話だ?」
既にユナは駆けて行ってしまったが、何を諦めないんだ?
‥‥‥何の話だか分からない。
オーク村も方向性が決まって、後はマンガリッツァが引っ張って行くだろう。
人魚さんたちとも契りを交わしたので、指輪も用意したい。
また、しばらく開いてしまったが、日本に帰ろうと思う。
今回もトゥミ達にはお留守番してもらう心算だ。
怒るかな?
‥‥‥ちゃんと声を掛けて行くかな。
日頃の教育の成果が出ているとは気付かない。
トゥミを探すと、なんと!!
オーク達と戦っていた。
牙狼戦隊も一緒に‥‥‥
こ、これはどうした訳だ?
俺に気付いたブルーがこちらに来て、膝を着いた。
「主、ご無沙汰しております。」
「あ、ああ。ブルー、これは何が始まった?」
「??‥‥‥あ!主、これは戦闘訓練です。」
こうやって話してる間も激しい剣戟で火花が散っている。
「戦闘訓練?」
「はい。トゥミ様がオーク達の強さを見て、震える!と言い出しまして。」
「震える!ってか!?」
「one-on-one から3on3~1vs5、多人数戦など、多彩な訓練ができると、最近のトゥミ様は嵌りまくってますね。」
‥‥‥‥どこのアスリートだよ。
one-on-one から3on3ってバスケか!?あの剣戟はバスケのノリなのか?
「オークの皆さんも、やはり多種族で訓練すると身になると言って好評ですね。」
「そうか~。‥‥‥ケガしても大丈夫なんだろ?」
「はい。部位欠損とかで無ければ大丈夫です。」
それ、大丈夫じゃ無いじゃん‥‥‥
はぁ‥‥‥
「くれぐれも大事には成らない様にな。」
「はっ。」
「トゥミ!」
「はい!おっと!‥‥‥あぶねー!」
オークの槍がトゥミの脇腹を掠りそうになった。
槍使いのオークも一瞬焦ったようだ。
「真悟人!訓練中に声掛けちゃダメよ。」
「それで、やられるなら自分の未熟さだな。」
「あら?辛辣。珍しいじゃない?」
苦笑を漏らしながら(俺が一番焦ったなんて言えないじゃん。)
「また、出かけて来るから一言言いに来たんだよ。」
「え!?そうなの?」
「ああ、オーク村の方向性も決まったし、また少し帰ってくるからな。」
「え~!今回も置いてけ掘り?」
「まぁ、そう言うな。訓練楽しいんだろ?」
「まあね。また一回り強くなれる感じだよ。えへへ♪」
「じゃあ、お土産買ってくるからな。」
「あっ!真‥‥‥」
転移で家に戻った。
毎度の事ながら、換金対象物を行李にぎゅうぎゅうに詰めて飛ぶ。
いつも通りに‥‥‥‥‥‥覚悟ヨシ!
・・・・・・・・・飛べ!・・・・・・・・・・・
酩酊感と浮遊感・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お帰り。」
「お祖母ちゃんタダイマ!」
「今回も、長かったね。」
「う~~ん‥‥‥」
祖母ちゃんは相変わらずニヤニヤと見ている。
「先に買い出ししてくるよ。」
祖母ちゃんに何て言って良いのか分からず、その場は逃げた。
それもお見通しだろうけどね。
今回の買い出しは材料だけじゃなく、工具類を大量に準備する。
それと、今の村で最大の弱点は金属加工が出来ない。
そう。鍛冶屋が居ないのである。
必要な金属は建築に必要な物がメインだが、これを全て日本のモノで補っていたら俺が居なくなった後は立ち行かなくなってしまう。
だから今回は、釘やビスなどの材料からそれを使う工具を大量に準備する。
いつ、俺が居なくなるか分からないので、鍛冶屋が来て準備できるまでと思うが、まったく心当たりも無いので、万が一のその後は何とか考えて欲しい。
建材の大量購入の後は、食材の大量購入。
調味料、香辛料からお菓子の材料やレシピ本、更に発酵食品レシピ本や醤油や味噌の作り方、酒の作り方は流石に無かったが、酒に関する物や酒自体。
ネットが繋がれば良かったが、それは無理みたいで、検索三昧して大抵の知識は入手した心算だが、また必要な知識が出来たら帰ってくれば良いか。と、お気楽である。
他には、都会に出てアンジェ、フラビ、ムルティへの指輪を選ぶ。
色も、アンジェは火で赤。
フラビは土で緑。
ムルティは水で青。
それにサイズ自動調整と、さらに属性対抗と防御の付与を付ける。
指輪は準備できた。
仕入れは納入を待つだけである。
祖母ちゃんの尋問?を熟せば自由時間だ。
「一通りの仕事は終わったよ‥‥‥」
「そうかい。‥‥‥」
「何も聞かないで良いのか?」
「お前さん‥‥‥気付いたのかい?」
「ああ。もう、ダメかも知れないなぁ‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥もう、疲れちゃったなぁ。」
「そうかい。異世界生活って、甘くないか。」
「ああ、祖母ちゃん頼んで良いか?」
「なんだい?言ってみな?」
「俺を‥‥‥逝かしてくんねぇか?」
「本気かい?」
「ああ、多分、このまま帰ったらあの世界の全てを破壊するぞ?」
「はぁ。しょうがないね‥‥まさか、孫をこの手に掛けるとは思わなかったよ。」
「あはは。そうなるって分かってたんだろ?」
「‥‥‥‥あの世界はもうダメだ。お前さんの周辺が最後の楽園だったんだけどね。‥‥‥あそこに来るとは‥‥‥」
「ああ、人間はやり過ぎた。あの片田舎じゃ分からないが、今頃‥‥‥トゥミ達は全員逝ってるんだろ?」
「間に合わなかったね。‥‥‥」
「もう、もう‥‥こんな悲しみ背負って生きられないよ。‥‥‥」
「いつ、気付いたんだい?」
「さっき‥‥さっき気付いたよ。‥‥‥最後、トゥミ達と一緒に居たかったよ‥‥
‥‥‥う、う、うぅ‥‥うおおおおぉぉぉぉぉ‥‥‥」
俺が、俺が暮らしてたのは、地球で言えばアマゾンの奥地だった。
あの世界は、もっと高度な文明があったんだ。
さっき‥‥‥ほんの先ほど、俺の居た所は核爆弾で消滅した‥‥
山も、海も、全てが炎の中に消え去った。
知らなかった。気付かなかったよ‥‥
トゥミは最後、何を言いかけたのかな?
俺は…………
「祖母ちゃん、サヨナラだ。」
「真悟人。あたしのせいだな。ごめんな、ごめんな‥‥‥」
「祖母ちゃんのせいじゃないよ。もっと早く気づけば良かったよ。」
「最後に、幸せな夢をありがとう。女神様。」
そして意識は暗転した。
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