第82話 竹水筒
マッチと保護小袋のプレゼンは上手く行った様だ。
トリネコさんは、いきなり1000セットの注文をくれた。
それって、小袋1000枚とマッチ20000本だよね?金貨30枚ですけど、良いんですか?
小売の値段は、幹部会で相談して決めるそうだ。
俺の、一般家庭にも!という意思を尊重してくれるみたいですね。
それだけじゃ無かった!
冒険者マッチも1000セット!え?え?大丈夫ですか?
不良在庫、買い取れませんよ?
ルミックとポメロが一生懸命作った甲斐が在ったなぁ!
マージンはどれくらいバックすれば良いかなぁ?
そう。ルミックとポメロは冒険者マッチも作れるようになっていた。
普通のマッチなんて、もう鼻歌歌いながら魔法付与している。
もう、俺より上手いかも知れないね。
偶に、ラダンとポメロがイチャイチャしているのを、ルミックがチッと舌打ちしながら見ているが、誰か周囲に男の子を配置してやって下さい!
マッチの話が落ち着いて、〇真印の登録もお願いした。
コレの登録も簡単で、ちゃんと魔道具で登録するので真偽の鑑定もばっちりだそうだ!ギルド職員を呼びつけて、魔道具を持って来させて登録する。
なんだ?行かなくていいんだ?思ってたらトリネコ商会ほど大手ならではの事らしい。恩恵に与りありがとうございます。
では次に!
「えぇ~!?まだ次が在った!?」
「はい、次は竹水筒です!」
・・・・・・・・・・
「あれ?静かですね?」
「う~ん。水筒って有り触れてるし、重いからそんなに需要もねぇ‥‥」
「まぁ、見て下さい。」
30㎝位に切り揃えられた竹水筒を取り出す。
まぁ見慣れた竹水筒だろう。
「う~ん。普通の竹水筒だね。」
「はい。そうですね。」
大きなバケツを持って来て貰った。皆さん??不思議そうな顔をしている。
「では、持って見て下さい。あ!栓は抜かないでね。」
皆さんそれぞれ竹水筒を手に取る。
空の竹水筒だから軽い。当たり前ですね。
「では、皆さん栓を抜いてください!」
軽かった竹水筒が見る見る内に重くなってくる。
「な、なんだ?」
「重くなって来たぞ?」
「な、中に水が入ってるぞ!?」
「も、もしかして!栓を抜けば水が充填される竹水筒!?」
「ご名答です!」
「「「「「「おおぉぉーーーー!!」」」」」」
「こ、これは需要あるぞ!」
「水は重さが問題だったからな!」
「軽く運べて、必要な時に栓を抜けば、水筒1本分の水が得られる。」
「うん!良いかも知れないね。」
「まぁ飲んで見て下さい。」
皆自分の持つ竹水筒から水を飲んでみた。
「おう。美味いな。」
「仄かに香る竹の香りが良いな。」
「この香りが、湧いた清水みたいで良いな。」
概ね好評である。
では、残った水を空けて下さい。
皆の前にバケツを出す。それぞれ、中の水をバケツに空ける。
「では、栓を閉めて下さい。」
最初の状態である。中身が空の軽い竹水筒。
「じゃあ、もう一回栓を抜いてみましょうか?」
「‥‥‥‥‥まさか?」
「‥‥‥うそ?」
「‥‥‥本気か?」
栓を抜いた水筒には、再度水が充填される。
「「「「「「おおぉぉーーーー!!」」」」」」
「おいおいおい!これ、ヤバすぎるぞ?」
「これって何回出来るの?」
「空けて栓をして、また栓を抜けば水が得られるのか?」
「「「「「すっっげぇ~~!!」」」」」
「今回持って来た竹水筒は、3回使えます!」
「マジか?」
「もう一回出来るのか?」
「やっべぇぞコレ!」
「‥‥‥いくらで出す?」
「「「「「‥‥‥‥‥」」」」」
「銅貨3枚でどうですか?」
「「「「「はっ??」」」」」
「ぶわっはっはっは!!無いない!そんな安い訳は無い!」
「本気ですよ?水1本銅貨1枚。3本分で銅貨3枚です。」
「おいおい、本当に本気か?」
「空で運べて、使えるときに水が出せるんだぞ?」
「真悟人さん、これは、冒険者が生き延びられるように!って事ですか?」
「トリネコさん。察しが良いね。重いと辛いし水の確保は一番重要だろ?」
「確かに、水が生死を分けるって‥‥」
「水筒、重いから‥‥」
「コレが数あれば、砂漠も超える?‥‥」
「真悟人さん、本当にこの値段で良いんですか?」
「いいよ。売値は任せるよ。」
「「「「「「おおぉ!!」」」」」」
「ちゃんと水筒の横に〇真印が入ってるんですね。」
「ああ、うちのブランドだからな!」
「真悟人さん、素晴らしいです!これもトリネコ商会で売らせて下さい!」
「ああ。任せるよ。必要数は何日か前に教えて貰えれば揃える様にする。足りない時はごめんなさいだな。」
「い、今は何本あります?」
ニヤッと笑って、「1000は有るぞ!」
「お、お願いします!全てうちで買い取ります!」
「うん。ありがとう。」
~~~~~~~~~~~
良かった!ちゃんと売れた!
〇真印は、オダーラで登録すれば、商人ギルドを通して拡散されるので、態々マウントフジで登録しなくても大丈夫なんだそうだ。
それに、マウントフジへもトリネコ商会が運搬するので、俺はここで卸せば良いみたいだ。つか、今後は定期的にエルフの里に来るので、態々持ち込まなくても良いと。何か新商品があったら呼んでくれれば駆けつけます!とまで言ってくれた!
相変わらず良い人だ!
他にも来たついでだからと、野菜や魚介類なども大量に卸した。
ここでの価値が分からないから言い値で卸してるが、鑑定さんの表示金額より高いので黙って売っている。
喜んでるから良しとして置こう!
卸した魚介類はどうするのか見せて貰った。
魔道具の冷蔵馬車で、夜通し走って届けるんだそうだ。
溶けたらアウト!なので途中で馬を変えながら(馬を潰さない様に)貴族家に納品するんだと。
それで、莫大な金額になると教えてくれた。
そうかぁ‥‥‥
「そんじゃあさ?氷の溶けない冷凍庫が在ったら買う??」
「は?そんな物はこの世に?‥‥ま、まさか、つ、作れるんですか??」
またまたニヤッと笑って、
「教えてあげない!」
「そ!そんなぁ!」
「在ったら買う?」
意地悪そうにニヤニヤしながら聞いて見た。
「もちろんです!そんなものが在ったら金に糸目は付けません!」
「大きさは?」
「えっ?」
「大きさは、屋敷位と、馬車に積めるくらいか?」
「そ、そんな大きさのものが!?」
「屋敷サイズx1と馬車サイズx2ってとこか?」
「は、はい‥‥‥」
「ハウマッチ?」
「は?」
「いくら出す?」
「い、今出せる最高額を!」
決意の籠った目を向けるトリネコさん。
正直言って、今から倉庫行って冷凍庫にする事も可能である。
しかし、皆が言っていた、入って瞬時に凍り付かせる冷凍庫なんて使えない。
人間が出し入れできる余裕が無いと意味無いのだ。
「んじゃあさ、馬車サイズのを今度持ってくる。性能的にそれで良ければ、屋敷サイズの冷凍庫と馬車サイズをもう1個で良いか?」
「は、はいぃ!」
まだこの世に存在しないと思っていた冷凍庫。
中に水を入れておくと、氷が出来ると伝説の冷凍庫!
そ、それが、手に入る??
話し、半分だとしても、屋敷サイズは無理だとしても、あの真悟人さんが約束してくれた!今まで、伝説的な眉唾ものの話すらサラッと現実にして来た方だ。
牙猿達しかり、魔狼達しかり、マウントフジとオダーラの騒乱さえ静めて見せた。
中には自作自演じゃね~の?と悪態をつく奴も居る。
それならば、自作自演出来るだけの地力があるって事だ。
しかし、自作自演するならば、その後に何の行動もしていない。
今まで通り、商品を売りに来るだけ!まぁ、その商品も普通じゃ無いが、おかげでトリネコ商会の名は、一気に躍り出た!
唯一、海産物を扱う商会!エルフの里の特級農産物を扱う商会。
そう、エルフの里から入る農産物は特級扱いで、普通の農産物の3倍~5倍で取引される。果物に関してはもう、一般取引は規制されていて王侯貴族しか入手できない物になっているのだ。
そ、それを気軽に食うか?と放り投げられても!?!?
心臓が止まるかと思った!
渡されたリンゴ。ツヤツヤと光るリンゴを真悟人さんと並んで齧ったのは忘れられない!‥‥おっと涎が、じゅる。
元々、ジャニやメイ達が持ってた交易権。彼らを取り込んだ事により、私も扱える様になった。彼らは順調に育って来ている。独立すると言われたら止められないだろう。しかし、商人は信頼が財産。今まで通り、欲張らず騙さず惑わされずにやって行けば、きっと悪い事は無い。
また、あのリンゴ食いたいな♪じゅる。
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