第83話 冷凍庫
おーい!
皆~!
帰って来た。
エルフの里を飛び越えて、一気に牙狼村まで帰って来た。
「あ~!やっぱり、自分の村がいいわ~!」
トゥミが伸びをしながら言う。
「そうねぇ。里も良いんだけど、一回出ちゃうとやっぱり他所の村になっちゃうね。」
「「うんうん。」」
トゥミ、サラ、シャルの3人でそんな事を話している横で‥‥
ジョゼットさんとクアガールさんが青い顔してへばっていた。
「うぅ‥‥きぼぢわるい‥‥」
「ゥぅぅぅ‥‥‥」
「あ~。やはりキツかったよねぇ‥‥」
「最初はどうしてもね。」
「まぁ、速さには代えられないけどね。」
「「「うんうん。」」」
そんな事言って無いで、お部屋に案内してあげてね。
彼らの事は、取り敢えずサラに任せて置いて、冷凍庫を作って見るか。
現在の倉庫。
そこには氷室は在るが、冷蔵庫や冷凍庫は無い。
普段、まったく使わない自動車が意外と場所を取っている。
ソーラー充電器が付いているが、車庫に入れてしまったら、日は当たらない。
当然、充電出来てない訳で‥‥ダメかな?思いつつもキーを持って来たら、ピピッと開いた。恐る恐るエンジンを掛けると、心配してたのがウソのように自然に掛かった。一旦降りて、何処に移動しておこうかな?と見回すと、迎賓館の横に廂の長く伸びた場所があったので、そちらに移動したが‥‥
皆、集まってこなくて良いからね?オロオロしないでね。こらこら!拝まない!
カレンやグッチ達も何事かと集まって来て、あんぐりと口を開けて見ている。
ユナやディオも、す、すごい魔道具だ!と感動している。
もう、メンドクサイからいちいち説明しないけどね。
自動車の移動は一大イベントだな。
せめて、エルフの里まで道があれば自動車も使えるんだが‥‥
人間の街は、ダメだろうな。何が起こるか想像も付かない。
そのうち道も、作るか。
倉庫に戻る。
建築班を集めて、倉庫に手を入れて気密性を高くする。
どうせなら、倉庫ごと冷蔵庫にしてしまおうかと思ってる。
中に冷凍庫を作って、風魔法を付与した魔道具(サーキュレーター)で空気を循環させればイケるんじゃないかと?
倉庫番のビーフォとビーファイブも、基本的に食料が多いので問題は無いと言ってくれた。ダメなら、食料以外の別の倉庫を作れば良いだけだしね。
倉庫の中に倉庫を作る。
壁を厚くして、間に乾燥した草などを大量に挟み込む。
中に棚を作って番号を振って整理しやすくした。
棚に合わせた籠も大量に準備させて、形だけは出来た。
冷凍庫にするには氷魔法の付与をするのだが、どれくらい持つんだろう?その辺、まったく考えて無かったな。
サラ達の所に戻って、魔道具の魔力ってどれくらい持つものかを聞いて見るが、付与した魔法や、術者の力などによっても変わるので一概には言えないと。氷魔法で氷室を作るのは、氷が解けるまでと、見た目で分かりやすい。しかし、氷魔法付与で冷凍庫になると見た目で分かるモノじゃ無いので、サッパリなんだそうだ。
う~ん見た目で効力が分かるって難しいな。
こりゃ安請負しすぎたか?‥‥研究する必要があるね。
魔石で魔力を維持する?
どうやって魔石から魔力貰ってんだろ?その魔石に魔力を充填って出来るのか?
実は、村には魔石は大量にある。
狩りをして、解体時に魔石を取り出してるのだが、全て集められて俺の元に来るので、集まったら換金行李に入れたりする。
ちゃんと大きいのは残してあるし、色とりどりで結構キレイなのだが、先に魔石の事を聞いて見るか。
困ったときのスライム先生です!
魔石には、属性が在る物と、無い物が存在する。
色によって見分ける事が多いということです。赤いと火属性だったり、青いと水系とかそんな感じ。無色は属性ナシが多いが、付加効力みたいなのが付いてる場合がある。
しかしそれはドラゴンの魔石とか、そういうレベルの魔石の話で、そこらの魔物にはまず無いだろう。
魔石に魔力を充填?‥‥出来るかも知れないね?やってみたら?
最後は、やってみたら?になってしまった。
この村で、魔石を使ってるのは・・・厨房ですかね。
厨房で、カレンやグッチが火魔法で料理に使ってる筈だ。
よくよく考えたら厨房のコンロも魔道具なんだね!
作動に火魔法が必要なんだそうだ。それで火加減も火魔法の応用なので、料理に火魔法を使うって事だった!知らなかったよ!
確かに魔石は入っているが、毎日火魔法を掛ける訳だし、スープみたいに放置して置くものは普通の竈に移すから、そこまで魔石を消費する訳じゃない。
それってまた魔石に火魔法の魔力を充填してる感じなのだろうか?
グッチに、根掘り葉掘り魔導コンロについて聞いて見た。
グッチもえらい親切に教えてくれるので、精神的にも安定したのかなぁ?なんて関係ない事を考えてしまった。
グッチにしても、ここで真悟人が来て、火魔法の事と魔導コンロに付いて聞いて来るだけなので、特に緊張も無く落ち着いて対応できてるのでホッとしていた。
あんなにギスギスした自分を思い返すと、何だったのかと憑き物が落ちた様だ。
一通り、魔導コンロに関して説明した後に、水魔法というか氷魔法は使えるか?と聞かれたが、残念ながら使えない。
そうかぁ‥‥と何か考えながら、お礼を言って去って行った。
後で冷凍庫を作ってるのを聞いて、納得するグッチだった。
前にいくつか作った冷凍冷蔵庫を出して並べて見るが、確かに中はまだ冷えている。周囲は単なる木材にも関わらずだ。しかし、アイテムBOXは時間停止なので作りたてと変わらない。器に水を入れて氷が出来るまでの時間をそれぞれ比べて見るが、バラツキがある。同じ様に作ったつもりだったが、実際に使って見て貰おう。
先ほど聞いた話で、魔導コンロの応用で冷凍庫‥‥金属に魔石を嵌めるポケットを付けて氷魔法付与してみるか?
そして、放置したものと偶に氷魔法を掛けた物を比べて見ようか。
金属加工は、実は土魔法で多少出来る。
金属で何か道具を作るのは無理だが、ちょっと曲げたりとか形を変えるくらいなら出来る。
ユナの所へ行って、薄いステンレスの板と設計図を渡してお願いした。
見返りに甘味を要求されたので、その部品を使って完成したものを食わしてやると約束した。
冷凍庫が出来たらアイスを作るつもりだ。
秋も深まってきてるが、暖かい所で冷たいアイスを食うのは良いもんだ!
~~~~~~~~~~~
さて、色々試したところ、氷魔法を付与した場所に魔石が置いてあるだけで、効果延長される事が判明した。魔法付与のコントロールもやりやすいうえ、サラに氷魔法を何度かやって貰ってたら、サラも魔法付与が使える様になってたから驚きだ!これらを考えると魔石ポケットは必須だね。
結論として、金属に魔石ポケットを作って氷魔法付与を掛けておいて、そこに偶に氷魔法を掛けるだけで持続する事が分かった。
魔石は水属性か、無属性で大丈夫みたいだな。水属性が一番性能が良いが、凍るスピードが速いとかの性能差で、長く持つかは魔石の質次第だね。
火属性はダメ。使えない。当然っちゃ当然だな。
倉庫の冷凍庫はステンレス板を屋根部分に敷き詰めて上下は格子状にして支える。
倉庫の壁に風魔法付与した扇風機?を付けて空気を循環させてみる。一晩置いたら、倉庫内は十分冷えていた。冷凍庫内の海鮮品も解けてる様子は無いので、このまま試験運用ですね。
来年の夏に真価が発揮される筈だ!
そうして、木枠でコンテナを作り、天井を格子状にして、その上にアルミ板を敷いた。
屋根は断熱材代わりの干し草を挟んで、木材を乗せる。壁も同じ様に二重構造にして断熱性を高めた。
魔石ポケットに魔石を何個か入れて氷魔法を付与する。日当たりの良い所に出して置いて、中の棚には水を入れたコップを何個か置いておいた。
秋とは言え、日向は暑くなる。
一週間程、毎日開け閉めを繰り返して、中の水の様子を見に行く。
幸い天気も良く。暑くなる日もあって、試験には都合良かった。
中の水は、翌日には凍ってた。そのまま解ける事もなく凍った状態は維持出来たので、試験は合格としよう。
これで、冷凍庫の目処は付いたが、これからの季節は寒くなって行く。
トリネコさんは本当に今欲しいのか?また聞いて見ようと思う。
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