第79話 魔道具

 トゥミがやって来た。

「真~悟人!ウフフ♪」


「おぅ!なんだ?どうした?えらいゴキゲンじゃん?」


「ニコル達、やっつけたんだって!?」


「ニコル?誰だ?」


「ありゃ!名前さえも知られてなかったか‥‥」


 トゥミはニヤニヤしながら、嬉しそうにそんな事を言っていた。

 後で聞いたが、ニコルってあのいじめっ子5人のリーダー格で、俺をオッサン呼ばわりしてた嫌味な奴だ。


 体調が優れないと言い訳してたが、あの後、魔法付与が使える3人に絡んだそうだ。・・・やはりか。テンプレだな、どうしようもねぇな。


 ~~~~~~~~~~


「おい!ラダン!お前どんなインチキして、あのおっさんに取り入ったんだ?」

「お前があんな威力の魔法を打てる訳無いだろ!?」

「そうだ!ルミックとポメロだってインチキしてんだろ!?白状しろ!」

「真面に魔法が打てなかったのに、いきなり出来る訳ないだろ!」

「そうだ!そうだ!」


 ラダンはルミックとポメロの前に出て、

「見た通りの事で、何に言いがかりを付けてるのか分からないな。彼女たちだって、僕と一緒に努力しただけだ。その結果の何がインチキなんだ?」


 ラダンは真悟人に言われていた。

 男の子なんだから、女の子たちを守ってやれと。

 絡まれても、絶対に真面に相手にするな!と。


「大体、お前達はこないだまで真面に魔法が発動出来なかっただろう!それが突然出来るのがインチキの証拠だろ!」

「そうだ!落ちこぼれのくせに!」

「出来損ないのくせに!」

「ラダンのくせに!」

「そうだ!そうだ!」


 ラダンは盛大にため息をついて、

「ルミック、ポメロ、行こう。真悟人さんに呼ばれてたろ?」

「うん。そうだね。」

「うん。相手にしちゃダメだよねェ!」


「おい!待て!ラダン!」


「僕らに構って無いで、君たちのやるべき事をやった方が良いよ。」

 ラダン達はサッサと行ってしまった。


 まったく相手にされず、あしらわれた事にニコルのプライドは大いに傷付いた。

「覚えてろよ!誰に言ってんのか分からしてやる!」

「あいつら、いきなり強気になりやがって!」

「こないだまで隅っこで小さくなってたくせに!」

「なんで突然、魔法が打てるようになったんだ?」

「さあ?」


 ~~~~~~~~~~~~


 真悟人とトゥミの所にラダン達がやって来た。

「真悟人さん。遅くなりました。」

「すいません。」

「到着ですぅ!」


「おう。またいじめっ子たちに絡まれたって?」


「あれ?耳が早いですね?絡まれたって程じゃ無いですが。」


「また、嫌味をイッパイ言ってました。」


「インチキで可笑しいそうですぅ!」


 トゥミが笑いながら、

「突然出来ると言われるもんだよね。私も散々揶揄われたなぁ‥‥」


「なんだ?トゥミも虐められてたのか?」


 首をブンブンと振って、

「違う違う。回復が使えるようになった頃に、皆、私の所に回復しにくるのね?そんで私が回復しないと死んじゃうとか、私の経験の為にケガしてやったんだ!とかを言うの!そんなの知るかぁ!ってよく言ってたなって。」


「私達もこないだまで全然魔法が発動しなかったから、余計言われるんですぅ」


「まぁ言いたい奴には言わせておけ。んじゃ、また魔力操作からやるか。」

「「「はい!」」」


 全員で輪になって手を繋ぐ。

 今はトゥミも居るから、火魔法の魔力操作だ。

 トゥミはグッチから火魔法を教わって、大分使えるようになっていた。

 教わるのに手を繋ぐから、それを見た真悟人が嫉妬して家出したのは、痛い思い出だ。‥‥恥ずかしい。


 真悟人も火魔法は使えなかったのだが、シャルから魔法付与を貰った時に最低限の火種魔法くらいは使えるようになった。だからマッチが出来たと言っても過言では無い。これが普通の火魔法であれば、威力が大きすぎて小枝など一瞬で燃え尽きてしまうだろう。


 魔法付与を使える彼らも、最初の火種魔法から入ったのでマッチが作れる。

 魔法は大きくするのも大変だが、小さくコントロールするのはもっと大変な訳で、大きくするのは皆やるが、小さくコントロールするのはあまりやらない。

 だからこそ難しく、練習も地味である。


 魔法付与は普通の魔法発動より、何倍ものイメージ操作が必要である。

 その上、精密な魔法コントロールも必要なので実践出来る者は殆ど居ない。

 だから、魔道具は高価なのであり、失われた物も多い。


 その魔道具を作り出せるなら、こんな売り物は他に無い!

 長老たちが飛びつくのも当然であろう。


 真悟人を拉致って相談した結果、他に魔法付与を使える者を探して、真悟人に鍛えて貰う事になった。

 彼らが作れるようになれば、真悟人の下位互換だとしても十分に商品として通用するし、真悟人制作の物は高級品として売れば良いのである。


 ここに真悟人印の魔道具ブランドが誕生した!!

 〇丸の中に漢字の真の字。

 この世界に漢字を書ける奴は居ない!(筈である)

 この印をマウントフジとオダーラで登録して、マッチと竹水筒を売り出そうとする壮大な計画で、長老たちは夢見てウハウハである。


 その様子を、捕らぬ狸のなんとやら‥‥と冷静に眺めてる真悟人であった。


 マッチは、長さと太さを揃えて小袋に入れ、20本で銅貨2枚。

 銅貨1枚¥1000換算とすると、1本¥100!日本のマッチの感覚からすると、べらぼうな値段であるが、実は1本で3回は使える。小枝が燃え尽きる迄使えるのである。だから、着火1回¥30と考えれば、十分実用に耐える。これは、魔道具としては破格の安さであった。


 エルフの男衆に木を伐り出して貰う。当然落ちてる枯れ枝なども全て回収する。

 女衆とお年寄りたちに、長さと太さを揃えて貰う。

 しばらく乾燥させた後、まとめて魔法付与を行う。

 これは、ルミックとポメロが行った。


 均等に魔法が付与できるか、何回も実験を行って、漏れの無い申し分なしの製品が出来るまで、少しの期間を要したが、何回も練習することで、魔力操作も向上するし、魔力の総量も上がった様だ。



 次に竹水筒であるが、これは、当然竹を使う。

 そうすると、竹の節と節の間の長さはバラバラである。

 これは製品としては頂けない。だったら、節止めの切竹にして長さを揃えるか?

 開いた方の蓋はどうするか?これは皆で、相談しましょ!そうしましょ!


 まず、両節止めの場合、30㎝弱から40㎝位になる。

 これは1ℓ弱から1.5ℓ前後かな?‥‥太さ8㎝位の場合だけどね。

 蓋と言うか、栓は柔らかい木を使ったが、中を洗えないのが玉に瑕?


 片節止めなら、太さ揃えれば1ℓで揃えられるか?

 中も洗えるし、コップになるので良いのだが、蓋はどうする?

 水筒なら水が零れちゃダメでしょ?‥‥これは良い物があるそうだ。

 膠の様な物で蓋を接着出来ると!それに栓を付ければ、両節と同じ様に使える。

 しかし、コップには出来ない。贅沢言い過ぎか?


 手間を考えても、片節止めで長さ揃えて蓋をする。

 栓にする木材も良いのがあるらしい。

 これらもエルフ男衆で伐採、女衆で洗浄蓋付け。

 並べられた竹水筒をラダンが魔法付与していく。

 1日に30本が精一杯だったのが、段々と能力向上してきて、1日100本なんてへっちゃらになって来た。

 抜き打ちでテストするのだが、これを酒が湧くように出来ないかとヴィトンが詰め寄って、トゥミに叩かれていた。ラダンの引き吊った顔に笑わかしてもらった!


 この後、気付くのだが、マッチの材料は木じゃ無くても良いんじゃね?

 竹材は沢山余るから、竹マッチで良いんじゃね?‥‥と言う事でこの後のマッチの材料は竹に変わって行くのである。


 そして、竹林の保護と育成、栓にする木の植林など、伐採するだけじゃなく育てる事を行う様にしないと無くなっちゃうぞ!と林業の概念を論じたら、エルフさん達は昔からやっているそうだ!森の恵みを絶やさない様に。


 根こそぎ奪うのは人間であった!

 だから牙猿も怒るって言ってたね。つい忘れてたよ。


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