第78話 裁定
実は、彼等の話しはゲラルディーニから聞いていた。
現在の状況はスライム先生から聞いた。
本当は彼等はサラを可愛がっていた事、また、基本的にお人好しで頼まれると嫌と言えなくて、ズルズルと深みにハマってしまったのだろう。
頃合いを見て、再度下に降りてみる。
サラと二人は何か話をしていたが、降りて来た俺に気付いて何か頷き合っていた。
「真悟人さん。話しは聞きました。本当にありがとうございます。サラを不幸にせずに済むのは貴方のお陰です。どうかサラをよろしくお願いします。」
二人から頭を下げられた。
サラからも「真悟人。ありがとう。何か胸のしこりが解けたみたい。」
胸を押さえながら、落ち着いた表情に戻っていた。
「ありがとうございます。サラは幸せにします。」
深くお辞儀をした。
「それと、お願いと言うか、提案があります。」
「提案?ですか?」
「はい。宜しかったら、僕らの村に来ませんか?」
「はい?サラの居る村、ですか?‥‥しかし、私たちは犯罪者です。ここで、はいと言う訳には‥‥」
「僕たちの村はまだ出来たばかりです。色々と人材が不足していて、ジョゼットさんとクアガールさんは、交易をずっと行なって来てますね。その知識を役立てて頂けないかと思っているのですが、如何でしょうか?」
「し、しかし犯罪者の私たちじゃ村の方々に迷惑になるかと思います。」
ゆっくりと頭を振って、
「迷惑なんて、とんでもないです。皆んな歓迎しますよ。」
サラもウンウンと頷きながら、
「トゥミもシャルも歓迎してくれるよ。」
「し、しかし、まだ裁定も下って無いから‥‥」
「儂からもお願いするかの。」
ヴィトンが降りて来た。
「長老‥‥」
「お主ら二人の事は、真悟人から聞いておるぞ。改めて裁定を下そうかの。」
ヴィトンが背後を見ると、
「プラダ長老とヘルメス長老‥‥‥」
「久しぶりだな。ジョゼットとクアガール。」
「海の魚は美味かったかい?」
「では、裁定を申し渡そうかの。‥‥ジョゼットとクアガール。結果だけ伝えよう。二人は真悟人の下で村の発展に尽力せよ。‥‥以上じゃ。」
「そ、それでは、私たちの罪は?」
「だから、村の発展に尽力せよ。簡単じゃ無いぞ?さらに深い森の奥じゃ。牙猿どころか角熊さえ出現する場での村起こしじゃ!儂も偶に見に行くからの!精々精進せいよ!」
「わ、私たちはまたサラと暮らせる?‥‥ああぁぁぁ!感謝します!ああ‥‥」
「お養母さん。村は、結構大きくなったの案内するからね。い、一緒に‥‥‥」
サラとクアガールさんは、もう言葉にならなかった。
「あ、ありがとうございます。ありがとうございます。」
ジョゼットさんは、長老たちを懸命に拝んでいた。」
「ヴィトン、プラダ、ヘルメス‥‥ありがとう。恩に着るよ。」
「嫌だなぁ!真悟人には色々お願いしたいからね!」
「うむ。竹水筒の話も聞いたしな!ちょっと詰めた話をしたいもんだ。」
「真悟人の作ったマッチとやらもよく話を聞かんとな。新しいこの里の名物になるかも知れん。さぁ!詳しい話を聞こうかの?」
あ!失敗したかも知れない‥‥
余計な事を言ったお陰で‥‥真悟人はそのまま連れ去られた。ちーん!
~~~~~~~~~~
翌日・・・・・
やはり、死屍累々。
「返事がない。ただの屍の様だ‥‥」
つんつんと動けない奴らを突いて遊んでいた。
ワインと日本酒の破壊力は半端ないな!
敵対する国の軍隊に日本酒を届ければ、それで勝てるかも知れない。
今日は一日仕事にならないだろう。
昨日、連れ去られてマッチと竹水筒の魔道具説明と、作り方レクチャーをしたが、まだまだイマイチで売り物にはならない。
エルフの里で魔法付与を使えるのは3人。女2人に男1人。
彼らは今まで使えない奴扱いだったらしいが、俺がこの概念を持って来たら、一気に脚光を浴びた!使えない奴が、里の経済を担うかも知れない。
多分、俺が付与した程じゃ無いにしろ、使える様にはなると思う。
例えば、マッチは濡れたら使えないとか、竹水筒は1本半とか下位互換なカンジ。
今迄の生活や、交流関係を聞いて見たが、エルフの里でもイジメってあるんだぁ!?
皆と同じように出来ないと使えない奴。個々の個性は無視!出来ない奴は使えない奴との認識なんだ。
彼らの話を聞いていて、かなりイラつかせて貰った。
日本での自分とダブったせいもあるが、一旦そういうレッテルを貼られると二度と浮上出来ないエルフの社会制度にも憤った!
ヴィトンにふざけんな!と糾弾したが、個々の能力という認識さえ無かったので、これからの制度作りに頑張って貰う事にした。
しかし、その前にエルフの若い奴らの認識改革からだよね?
では、エルフの能力学校の開校です!!
集められたのは、トゥミと同年代から下の20人。
その中でいじめっ子は5人。
25%がいじめっ子ってどうよ?
まず、話の発端となったマッチと竹水筒。
どんな能力だかみんなで確認してもらう。
ちょっとの魔力と刺激で着火出来る。それがマッチ。
はい、皆点けれますか?
皆100%使えますね!
では、これを作れる人は?
最初の通り3人だけ。皆、魔法付与は使えませんか?
「は!?そんな役立たず使えてどうすんだよ?役に立つのかよ?」
「そうだよ!出来たからって何だってんだよ!?」
「役立たずがようやく役に立つかも知んないだけだろ!?」
「エルフなのに魔法使えないのが可笑しいし!」
「そうだよ!」
彼らは、今までの価値観しか知らないし、自分が分かってる物しか信じられないようだね?
「それじゃ、今言った5人は何が出来るかな?俺に使って見てくれるかな?」
「は?何言ってんの?おっさんに魔法打ったら死んじゃうよ?どうすんの?」
「俺に魔法打ったら死んじゃうって事は、攻撃魔法しか使えないの?」
「なんだ!?おっさん!俺らを馬鹿にしてんのか!?」
「あのな?最初から俺の言った事を理解出来てるとは思ってなかったけど、十分馬鹿にされるだけの返答だと思うぞ?ちゃんと人の話聞いてるか?」
彼らは最初から話を聞く気も無いし、その後の事も全く考えていないのはよく分かった。じゃあ、どうするか? 彼らの得意分野を自慢して貰おう。
「俺も魔法は頑張ってるからな!俺を殺せる魔法が打てるのか?打てるならやって貰おう!俺が死んじゃっても大丈夫だぞ!瞬間で生き返る魔法が使えるからな!俺にその魔法を遣わしたら、そいつは本物だな!」
そんな魔法ある訳無い!ただの結界魔法で、牙猿の攻撃も防ぐ優れものだが。
鵜呑みにするこいつらが阿呆な訳で、精々頑張って貰おう!
「ヨシ来い!!」
・・・・;;・・・・どうしよう。話にならな過ぎて、つか、話を続けるのも辛いんですが?う~~ん‥‥
「よし!ウォーミングアップは終わったか?そろそろ本気で打って見な??」
「な、なんか今日は調子悪いんだよ!」
「ん?全員か?」
「そ、そう!全員、今日は体調悪いんだよ!」
「そうか。それじゃしょうがないな。」
「付与魔法使えるお前達!今はこんな程度しか出来ないって見せて置いてやれ!あいつら本調子ならスゴイらしいぞ!これ以下だったら死んで詫びるだろうな!?」
「ヨシ来い!!」
「ヒュン!ヒュン!ヒュン!!チュドーン!チュッドーン!チュッッドーーン!!」
「「「「「は!????」」」」」
「おおう!相変わらず、痛ってぇ~なぁ!!」
「あいつ等これ以下だったら死んで詫びるってよ!?楽しみだなぁ!」
「いえいえ、彼らはそんな口を利くだけの実績があるんですよ。僕たちは仲間外れなので知らないですが。」
「そうか!どんな実績があるんだ?あんだけの口を利くんだ!相当だろうな!?」
「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」
「よし!今日は解散!お前達の魔法、痛いって!」
「すいません。でも、真悟人さんの指導のお陰です。」
「ただな、これでタカビーになんなよ!?そうしたらあいつ等と一緒だからな。」
「はい、肝に銘じて!自分を見失いません。」
「ヴィトン~!あいつ等どうしようか~?」
「まぁ、後はプラダに扱いて貰おうか。ヘルメスもやる気になってたし、楽しませてやってくれい!」
偶には、エルフ魔法教室も面白いかも知れないね。
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