第72話 魔法付与

 ゲラルディーニとロンシャン兄弟の住む家を作る。

 海岸沿いで、ちょっと小高くなった丘に先ずは井戸を掘る。

 水が出ても、しょっぱく無いよね?と心配してたが、そんな事は無かった。

 排水は、海側では無く、後ろの川の方に流す。

 溜池を作って、スライム先生に頼んで浄化スライムを派遣して貰おう。


 改めて、川に何か居るかな?と、確認してみたら、メダカ、ドジョウ、タニシやカワニナ、シジミや手長エビ?結構色々いるので食卓に上る機会もあるだろう。


 家の材料は、牙猿達が森から運んでくれる。

 金具類も大量に用意してあるので、思ったより頑丈な家が出来るだろう。

 人間主体で進めているが、人魚さん達は住めるのか?

 それは問題ないそうだ。偶に海に戻れれば大丈夫だと。陸に上がりっぱなしは辛いが、その辺は上手くやるそうだ。


 家の下には地下室を掘って氷室にする。

 ‥‥‥そこで俺は思い出した!

 シャルを呼んで、聞いて見る。


「シャルが嫁になってくれて一つ魔法を覚えたんだ!‥‥魔法付与って分かるか?」


 シャルは驚いた!盛大に驚いた!

「それって!!魔道具作れるよ!?」


「やはり、そうか。どうやって使うか分かるか?」


「う~~~ん。流石に使い方は分からないなぁ。色々やってみるしか無いんじゃない?」


「そうだな。‥‥」


 俺が作りたいのは、マジックバック。

 イキナリは無理だろうから、例えば枯れ枝に火魔法を付与してマッチとか作れないかな?建築の木っ端を沢山集めて、片隅で色々やってみる。


 結果!マッチは出来た!!

 木っ端に魔力を流して、衝撃を与える。要するに擦って見る。

 自分では出来る。他の人ではどうか?

 エルフは出来る。牙猿は‥‥出来た!ちょっとコツがいるらしい。

 人魚さんも出来た。魔狼も出来た!人狼状態なら簡単だが、狼状態だと気を付けないと髭が焦げる。ちょっと笑ってしまった!ゴメンゴメン!!


 問題は、魔法が苦手な人間が使えるか?

 ゲラルディーニは難しい顔をして、「はっ!」とか言って擦ってる。

 なかなか上手く行かない様だ。

 逆にロンシャンは、枝を摘まんで、ヒョッと擦ると火が付いた!!

「おおーーーー!!!」出来た!何度か試して段々上手くなっていく。


 ゲラルディーニはそれを見て、ムキになって擦ってる。

 そこへ人魚さんが近づいて来て、

「こんにちは。パンタナルエンシスです。パンタンって呼んでね。」


 そう言いながらゲラルディーニの手を取り、枝を摘まむ手の上から手を被せてゆっくりと枝を擦ると、ボッ!と火が付いた!


「おおーーー!!パンタン付いたぞ!!」喜びの余りパンタンの肩を抱く。

「あっ!す、すまん。」


「いいえ。大丈夫ですよ。」

 ニッコリ微笑むパンタンの顔を見て、ゲラルディーニは赤くなってしまう。


「今の感じでやれば、一人でも出来るようになりますよ。」

 もう一度、枝を摘まんだ手に手を重ねて、練習をしようとするが、

 そこに別の人魚さんが突入する。

「パンタンばっかりズルい!私も一緒にやりたい!‥‥あ。こんにちは。パスタゼンシスです。パスタって呼んでね♪」


 その横から別の人魚さんがゲラルディーニの手を取り、手を重ねて火を点ける。

「ナポエンシスです。ナポちゃんって呼んでね♪」


 ゲラルディーニはかなりドギマギしてるようで、人魚さん達に手を握られて真っ赤になっている。


 その様子をみたロンシャンは、

「すっげぇ!兄貴のあんな姿、初めて見た!」

 ナルキス達にそう言って、ニヤニヤしていた。


 真悟人はと言うと、マッチを量産していた。

 木箱に大量に木っ端を入れて、いっぺんに魔法付与を試している。

 後は、濡れても着火するか?どの位持つか?色々試して見ようと思ってる。

 ここで、木っ端を集めて乾かして、大量生産すれば売れるかな?と思っている。


 因みに、木箱にも魔法付与が掛かってしまい、木箱で擦ったら木箱ごと燃えだしてメチャクチャ焦った!サラが水魔法で消してくれたが、マッチを大量に無駄にしてしまった。

 なんてこった!

 対象を明確にしてから魔法付与しないと余計なものまで燃える結果になるね。


 次は水魔法付与を試す。

 竹を大量に切って来て貰って、竹コップを作り水を満たそうと思う。

 問題は、発動をどうしようか?と、どんだけ出すか?どこで止めるのか?が難しかった。

 結果的には、コップでは無く竹水筒。栓を抜けば発動。閉めれば停止。

 水はゆっくりと湧くようにして、竹水筒3本分位の水を出せるようにする。

 それ以上になると魔石が必要になるようだ。

 魔石無しでこの性能は、破格に高性能な代物なんだそうだ。

 この竹水筒はゲラルディーニもロンシャンも問題なく使えて良かった。


 マッチと竹水筒、さてハウマッチ!?

 ゲラルディーニもロンシャンも難しい顔をしている。

 あれ?もしかして売れない?面白くない?すんません。


 そうではなくて、有用なので値段に糸目を付けない商人も多いだろう。

 ただ、余りにも高価だと一般人は買えないので、裕福な冒険者などがターゲットになるが、そんな人間の数は知れている。

 だったら値段を落して、一般の商人たちでも買って使える方が長い目で見て儲かると、ではいくらなら?というのが難しいんだって。


 そうかぁ。リアム・オダーラや、アーサー・マウントフジに相談してみようか?

 一同、それが良いとの結論だった。丸投げとも言う。


 それでは、本題!

 街で皆が普通に使っている麻袋。

 これをマジックバックに!と、思ったら全員から猛反対にあった!!


 マジックバックが本当に出来たら、超がイッパイ付く高級品である。

 そんな安い鞄じゃ無くて、最低でも魔物の革の鞄にしろと!

 まぁ、日本でも鞄は割と高級品で、数十万円なんてのも珍しくないもんな。


 鞄は帰ってから、ワフワン達に作って貰うとして‥‥‥

 しっかりした丈夫な木箱を冷蔵庫風に作って貰った。

 それにアイテムBOXの魔法付与を試して見る。


 ・・・・・・全っ然、上手く行かない。

 ぺっと吐き出されたり、入れたと思ったら戻ってたり、そもそも入らなかったり。


 気分を変えて、氷魔法を付与してみた!

 これは上手く行った。なんと冷凍庫の完成である!!

 入れると凍る!カッチカチである。

 これならある程度は日持ちするが、量は入らない。


 あっ!氷室自体に氷魔法を付与すれば良いか!!

 これも全員から全力で止められた。

 氷室自体に付与してしまったら、誰も入れなくなる!入った途端に氷漬けは勘弁して下さいと。

 そりゃそうだね。


 フラビが素朴な疑問を口にする。

「さっきから思ってたけど、何を凍らせたいの?何で凍らせたいの?」


「そりゃ、獲ってきた魚を保存するんだよ。」


 アンジェが、「ん~?わざわざ殺しちゃうって事?」


「はい?そうしないと持って帰れないから。‥‥」


 ムルティがとどめの一言!「持ってく時に凍らせたら?海では生かして飼っておけるよ?獲った魚達は水牢に入ってるからね!」


 がーーーーん!!

 そうか!人魚さん達は、魚介類を態々殺す必要無いんだった!

 水揚げして貰って、いっぺんに氷魔法掛ければ問題なし。

 振り出しに戻った気がした。


「ま、まぁ、冷凍庫あれば、真悟人さん居ないときにも(様付けは止めて貰った)焼き肉とかがみんなで食えますし、かなり便利だと思いますよ? それに辺境伯に売ったら莫大な金額になると思います。」


 そ、そうか?良いように持ち上げられて、その気になった。

 この立派な木箱をいくつか作って貰う。

 上下2段の2ドアにして、上に冷凍庫、その冷気で下は冷蔵庫と2ドア冷蔵庫の完成である。


 開発はそこまでにして、後はゲラルディーニとロンシャン兄弟の生活に必要な物を揃えて行く。テーブル、椅子からキッチンで使う鍋釜や五右衛門風呂の設置。

 ベッドや予備の服なども準備する。それらを見て、兄弟は感激していた。風呂まで準備してあって、下手な貴族以上の生活が出来るかも知れない。


 一応、兄弟別々に暮らせるように作ってるが、一緒に使った方が便利で効率的な物もあるだろう。後は二人に任せる。


 他に、真悟人が此処で暮らせる家も、離れて作っている。

 それは、渡った島で、ドーナッツ状の中に崖側にくっ付けて、海に張り出す様に作った。水上バルコニーにして人魚さん達はここから出入り出来るようにしている。

 ちょっとした別荘であるが、アンジェ達と過ごすのに最適な別荘である。


 島に渡るのには、カヌーを出して一声かければ、アッと言う間に到着する。

 前みたいにえっちらおっちら漕ぐ必要もないし、漂流記になる事も無い。

 安心安全確実な水上移動だが、自分だけという特別感も最高だね。


 アンジェ達とは、まだ結婚の契りは交わしてないが、今度来た時に、順に契りを交わす約束をした。


 次回来るときが楽しみである。(メチャクチャ楽しみである。)

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