第71話 宣言4,5,6
トゥミとアンジェのダブルノックアウト。
牙猿と魔狼達は、海岸に簡易小屋を設営していて、そこに二人運び込んだ。
サラにシャル、フラビーにムルティ、誰も口を利かない。
皆それぞれ使える魔法を行使して回復させている。
どっちがどうじゃない。どちらも互いに回復させ合い、互いを気遣っている。
あれが、それが、と会話も生まれて来た。
俺は直ぐに小屋から追い出された。
女性なんだから当然だけど、離れがたくて小屋の周りをウロウロしてたら、ワフワンに追っ払われた。
ショボ~ンと砂浜でのの字を書いてたら、ボスが来た。
「主、人魚さんを嫁にするんですか?」
「ん?そんなこと考えてなかったぞ。」
「彼女たちの中ではそうなってますぞ。」
「は??なんで?そんな事何も無いぞ?」
「主がどうこうじゃ無くて、人魚さん達がそう思ったんじゃないですか?」
「はぁ!?大体嫁が居るから人魚さん達とそう言う仲になれないって‥‥」
「あぁ、だからですね。」
「あ?何でだよ?」
「主、考えて見て下さい。嫌われてる訳じゃ無い。嫁が居てそう言う仲になれないなら、嫁から奪えばイイじゃないですか?そうすれば問題なく自分達の者です!」
「はぁ!?何言ってんだよ?そんな道理、が‥‥‥(ここは日本じゃない。欲しい物は実力で奪う弱肉強食だった‥‥)ある、のか。」
「はい?欲しい物は自分で奪うんです。人魚さん達はそんだけ、主の事欲しかったんでしょう。」
それをちゃんと理解せずに、どっち付かずの態度じゃダメダメじゃん。
トゥミは間違いなく俺にとって必要だよ。
じゃあ、アンジェは?必要ないのか?要らないのか?
‥‥‥いや、アンジェも要る。フラビも要る。ムルティも要る!!
ただ、それは嫁としてじゃない。
それをどうしたら良いんだ?それって?
「なぁボス、俺は人魚さん達を必要としてるよ。でもな、嫁としてじゃない友人として必要なんだ。」
「私は主の言ってる事が分かりません。必要な相手が、♂同士なら仲間に、♀なら嫁にします。それじゃダメなんですか?だからトゥミ様が身体張ったんじゃないですか?」
「え?‥‥」
皆、最初からそんな事は100も承知で、俺だけが分かってないのか?
俺だけがキレイ事言って、一番現実を分かっていなかったんだ。
このままじゃ、トゥミとアンジェを、彼女たちの気持ちを踏みにじって仕舞うだろう。ちゃんと考えろ!この先どうしたいんだ?ちゃんと考えろ!
「ボス、俺は分かって無かったよ。だから、人魚さんたちも仲間になって貰おう。」
「嫁じゃ無いんですか?」
「嫁は3人までだな。アンジェ、フラビ、ムルティは嫁になってくれるかな。」
「それは、トゥミ様たち次第ですね。」
そこへワフワンが来た。
トゥミ達が気が付いたらしい。
直ぐに小屋に戻り、入り口で声を掛ける。
「トゥミ、アンジェ、入っても良いか?」
「どうぞ~。」とサラが呑気な調子で答える。
中に入ると、6人が整列してこちらを向いていた。
トゥミもアンジェもボコボコに腫れ上がっていたのが、キレイに治っている。
今更ながら、俺も回復魔法が使える事に気が付いた。
なんか俺ってダメダメだなぁ‥‥
そして皆の真剣な眼差しに気後れしてしまう。
まだ覚悟が出来ていないのだ。
アンジェが口を開いた。
「私達、人魚族のアンジェリカスと、」
「フラビタエニアタスと、」
「ムルティプンクタータスは、」
「真悟人様のお嫁様になれるよう、トゥミ様たちからお許しを貰いました。
どうか末永く。「「よろしくお願いいたします。」」」
頭、真っ白である。
トゥミを見たら、黙って頷いている。
まだ覚悟も出来てないのに、そう言う話がすっかり出来上がっていて!
ワフワン達におめでとうございます♪と言われて、倒れそうだった。
トゥミが口を開く。
「序列も決まったわ。私が筆頭。」
サラがにこやかに言う。
「私は第2席ね。」
シャルが言う。
「私は第3席、真悟人、改めてよろしくね♪」
アンジェが真剣ながら赤くなって言う。
「私は第4席だが、人魚族筆頭。しかし、真悟人の愛次第で下克上もあると言う!いつか筆頭目指して精進します。どうか宜しくお願い致します。」
誰?誰が言ったの?下克上在りなんて?
トゥミさん?いつからそんな話になったかなぁ?
いつでも返り討ちとばかりに、獰猛な笑顔を見せるトゥミ。
トゥミさん?そんなキャラだっけ?
フラビが口を開く。
「真悟人さん聞いてる~?私は第5席、人魚の次席ね。今後ともよろしくお願いいたします。」
そして、ムルティが言う。
「最後は私ね!第6席で人魚3席。だけど直ぐに筆頭かな?二人で甘~い夢見ようね♪」
皆の口上を聞いてるうちに覚悟が固まってきた。
正座をして、姿勢を正して、皆に向き直る。
「私、神田真悟人は大変に幸せ者だと思います。こうして、トゥミを筆頭に私を愛してくれる人が居る。不束者ではございますが、皆の愛に答えられる様に精進します。どうか末永くよろしくお願いいたします。」
深く頭を下げる。
頭を上げると、皆満面の笑顔で頷いていた。
「じゃあ、今回訪問の趣旨を話し合いながら、宴会しよう。」
皆を呼んでくれ!
「「「「「「おお~~!」」」」」」
「「「「「「きゃぁ~~~!」」」」」」
あ!ゲラルディーニとロンシャン兄弟の話をしてないや。
まぁ、宴会の中ですれば良いかな?
恒例のBBQ。
肉や野菜だけじゃ無く、魚介類も盛り沢山!
鉄板の上には大量のアワビが踊っている。
黙って見ていると、ちょっとエロい気分になってくる。
今回はイカ焼きや焼きトウモロコシなどの屋台定番の物も取り入れて見た。
タコ焼きの焼く行程に皆、釘付けだったりする。
千枚通し1本で、液体からまん丸いタコ焼きに変わる。
中のタコもデカいんで、足がはみ出してる。
好みが分かれたりするかな?と思ったが、人魚さん達は火を通した魚介類は新鮮だし、陸の者は当然、魚介類なんて食う機会は無い。
アワビのバター焼きや、タコ焼きなどの海の物と陸の物のコラボの様な料理が人気である。
片隅でひっそりとゲラルディーニとロンシャン兄弟がタコ焼きをハフハフしていた。そろそろ頃合いかな?
ボス達が作ってくれた、お立ち台の様な所に上り、皆に声を掛ける。
「皆!聞いてくれ!俺はココで、人魚さんの嫁さんを貰う事にした。」
視界の隅で、アンジェが慌てて咽込んでいた。
ありゃ?先に声掛けするべきだったか?
もう、今更だね。
アンジェが復活したのを見計らって、
「嫁さんに貰うのは、アンジェリカス!フラビタエニアタス!ムルティプンクタータス!彼女たちと幸せに成ります!どうか宜しくお願い致します。」
「「「「「「おおおおおぉぉぉーーーー!!!!」」」」」」
「「「「「「きゃああ~~~!!!!!!」」」」」」
祝福の歓声をあげてくれた。
「そして、今日から人魚さんとの交易を正式に始めたいと思います!その担当者も連れて来ました!」
ゲラルディーニとロンシャン兄弟を手招きする。
思いっきり動揺しているが、何とかお立ち台の所までやって来る。
「ゲラルディーニとロンシャン兄弟です。皆さん、暖かく迎えて下さると嬉しいです。因みに!‥‥‥二人とも独身です!!」
「「「「「「きゃあああああああぁ~~~~!!!!」」」」」」
物凄い歓声が人魚さん達から上がった!!
アンジェ達の3人だけじゃない。自分達にも希望がある!そんな歓声だった。
ほら!お前ら、挨拶しろ!
「「あ、はい。」」
この期に及んでは、流石のロンシャンも覚悟を決めた様だ。
兄のゲラルディーニに色々諭されていた様だが、ようやく腹を括ったかな。
「皆さん、初めまして、兄のゲラルディーニです。自分はこれまで思い上がって生きて来ました。散々悪い事をしました。もう命は無いと言うときに真悟人様に救われました。‥‥真悟人様に対しても無礼な振る舞いをしていたにも関わらず、救ってくれたんです。もう、過去の自分は死にました。これからは、真悟人様に付いて行こうと思っています。そして、此処で人魚さん達との交易を任して頂ける事になりました。真悟人様と人魚さんの双方の為になる様に努力いたします。色々と至らない事があると思いますが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」
「「「「「「おおおおおぉぉぉーーーー!!!!」」」」」」
「「「「「「パチパチパチパチパチパチ!!!!」」」」」」
「こ、こんにちは。お、弟のロンシャンです。‥‥‥‥」
どうやらテンパって、頭真っ白のようだ。
眼が泳いでアウアウと言っている。
助け舟を出そうかな?思ってたら、3人の人魚さんが上がってきた。
「こんにちは。私はナルキッスス。」
「こんにちは。私はパレアタス。」
「こんにちは。私はエレガンス。」
「ロンシャン君ですね?」
「は、はい。」
「お兄さんと一緒に来たんですね?」
「は、はい。そうです。」
「お兄さんは、真悟人様に命を救われたって言ってたけど、ロンシャン君もそうなの?」
「はい。‥‥‥そうです。」
「何が在ったのか聞いても大丈夫?」
「はい。‥‥僕も思い上がっていたんです。兄より酷かった。色んな人を傷つけて、何とも思わなかった。最低な奴なんです。兄と此処まで来て、それでも理解できなくて‥‥いや、本当は分かってたんです。ちっぽけなプライドで強がって、真悟人様に暴言を吐いて、そう、そうしないと自分が保てなかったんです。‥‥‥」
ロンシャンは泣き出してしまった。
小さな声で「ごめんなさい。ゴメンナサイ、ゴメンナサイ‥‥」と繰り返している。
人魚さんの3人は、そっと抱き締めてあげている。
少し、落ち着いてから、
「じゃあ、ロンシャン君はこれからどうする?」
「はい。取り乱してすいません。‥‥僕は、兄程才能や知識は無いんです。でもこれからは、此処で兄の手助けをして、真悟人様のためになる様に精進します。」
そして、俺の方をしっかり見て。
「ほ、本当にゴメンなさい。命を助けて頂き、ありがとうございました。今後は兄に付いて頑張ります。どうか宜しくお願い致します。」
「「「「「「パチパチパチパチパチパチ!!!!」」」」」」
「「「「「「パチパチパチパチパチパチ!!!!」」」」」」
盛大な拍手は、しばらく鳴り止まなかった。
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