第70話 トゥミとアンジェ
ゲラルディーニとロンシャンを連れて、村に帰る。
立つ前に聞いて見た。
「意識なければ直ぐに着く。意識あれば、初めての者は試練となる。」
森にゲラルディーニの絶叫が響き渡った。
オダーラの街で休憩をするが、お前はどうする?と聞いては見たが、そんな元気が在る筈もない。
俺とトゥミだけ街に入った。
街の門で、早速「おおー!真悟人様が入らっしゃった!!」
それからは、マウントフジ以上の騒動に成り掛けたが、リアム・オダーラが出張って静めた。この辺りは流石である!
リアム・オダーラの屋敷で、マウントフジでの話と王家の話などを掻い摘んで話したが、リアム・オダーラ曰く、王家のちょっかいは想定できない。王家の誰が興味を示したのかによって状況は変わると。王家も一枚岩じゃ無いので相手次第との話だった。
その次はゲラルディーニとロンシャンの話をしたが、苦い顔をしたまま、考えてる事の判断は付かないとの話だった。ただ、過去にそんな従順な姿勢を見せた事は無いのだが、相手が違うと理解して、その態度になったのでは?
次は本命の商人の話。
トリネコからの報告は上がっている。
ただ、内容が‥‥内容がこれで大丈夫なのか??
塩、砂糖、胡椒などの値段もそうだが、海の魚まで入っている。
それでこの値段で良いのか?と。
ん??商人の仕入れ値が分かるのか?
そうじゃない。商人と儲けの算段が出来ている。だいたい何%乗せるかの話だ。と言う事は海の魚の仕入れも察しが付く。それに、香辛料と海の物がこんな値段で仕入れられる訳が無い。
これは、普通の卸値以下で、在り得ない値段であると。
このまま流通したら、それこそ王家に殺されてしまう。だから、オダーラとマウントフジで価格を押し上げる。‥‥税金をごっそり付けて販売する。
それでも安いだろう。王家の取り扱う物は、それなりの価格を維持する。
問題は海の物。今回は魚だけだが、家のコック長達と作ったような物が出回れば‥‥あの味が広まってしまったら、王都の貴族は値段に糸目を付けないだろう。
貝1個金貨1枚が当たり前になって、乱獲が進んで人魚と戦争になるだろうと。
その辺は考えている。頭の良い奴を窓口にしようと思っている。
海の物は、多分宝の海!キリが無いほど儲けの宝庫だろう。
しかし、コントロールが難しい。だからこそ頭の良い、賢い奴が必要だと。
まだ当人には話してないが、海の交易を取り仕切って貰おう。
人魚さんと家庭を築くもヨシだ!
まだ本人には言って無いので、どうなるか分からん。
ヒョっとするとヒョッとするぞ?‥‥どう化けるか分からんからな。
取り敢えず、その辺は、海との交易は何とかするぞ!
人魚さん達とは仲良くやって行きたい。
正直言うと人間より人魚さんである。
だって、人間と仲良くしても恩恵は無いが、その他民族との恩恵は計り知れない。
海の幸のインパクトがここまで大きいとは思ってなかったが、それを知ったのは人魚さん達のお陰か?今後の交易はゲラルディーニにやらそうと思っている。
オダーラを立ち、一旦エルフの里の帰る。
ゲラルディーニの絶叫も減ったので、割と早く着いた。
ロンシャンは気付きそうだったので、もう一度意識を刈った。
そんな事を簡単にするボスって‥‥そんな顔をしてたら、俺に言われたくないとばかりに盛大に嫌な顔をして不満をアピールしている。
え~~!だってボスの‥‥あっ!すいません。俺の所業を広めないで!!‥‥
互いの所業を言い合っても負ける俺‥‥‥なんか、解せぬ。
そのまま、人魚さんの元に走る。
ロンシャンは寝てて良いからね!
ゲラルディーニには人魚さんの所に行くと伝えている。
殺されることは無いからと口では説明しても不安だろう。
森を跳び、途中で野営をして、海産物を食わしてやる。
その頃はロンシャンも意識を取り戻しているが、俺の事を目を剥いて殺してやる!位の顔をして見ている。海産物も、日本の調味料も、特に感想も無く淡々と食っている。食い物を味わうのではなく、必要な栄養素を取り入れてる感じかな?
ゲラルディーニはまだ、味わってる感じだが、基本的に食事に癒し?を求める事は無かったのだろう。美味しいを知らないのかも知れない。
そうして、海に着いた。
ゲラルディーニとロンシャン兄弟は、海を見て暫く放心していた。
初めて見る海。初めて見る波。
海は衝撃的だよね!
砂浜と岩場と、カニとフナ虫。
さて、ゲラルディーニと、ロンシャン。
もう期限は来た。
最初に言ったようにお前達の命は俺が握っている。
お前達の心次第だと何度も言っているから分かってると思う。
人魚さん達と友達になれるなら問題無し。
お前達の心に、人魚さんに対する蔑みがあるならそこまでだ。
海の底で人生を悔やむが良い。二度と浮上出来ないがな。
さあ?どうする?
ロンシャンは相変わらず状況を正確に理解できずに、聞くに堪えない暴言を吐いている。
ゲラルディーニは目を合わせて頷いた。
じゃあ人魚さんを呼ぶぞ?覚悟は出来たな。
ゲラルディーニは黙って頷くが、ロンシャンは、あうあうと言葉にならない。
「おーい!アンジェ~!フラビ~!ムルミ~!」
一呼吸置く間も無く、
ザッバァァァーーーーンン!!!!!!と登場!!
いきなり俺に抱き着いてきた。
「あーーー!真悟人!やっと来たぁ~~!!」
「も~~!真悟人遅いよぉ~!」
「やぁ~っと会いに来たねぇ~♪」
3人で抱き着いて、俺は揉みくちゃにされる。
これには、一緒に来たトゥミが反応!
「おい!こらぁ~!お前ら人の旦那に何しとんじゃ~!!!」
トゥミさん、めっちゃお怒りです!
それに対する人魚さんは‥‥
冷たい目で、「は?この猿は何?」
「真悟人が旦那?‥‥ぷっ!恥ずかしげも無くよく言うわ。」
「ここで、そんな身の程知らずな発言する勇気は買ってやるわ。」
あ~~。滅茶苦茶、喧嘩売られてます。
「あ、あの、人魚さん?交易に来たんですが??」
「もぅ~!真悟人ぉ!この猿何なのぉ?」
「真悟人!真悟人ぉ!嫁を自称する勘違い猿が来てるんです~!」
「陸ではこんなのしか居ないの?今すぐ海にお出で~♪」
トゥミさん、益々お怒りです。
「はぁ!?この魚類が何言ってんですかぁ?魚は魚と契れば良いでしょ?
人に相手されるなんて1000年早いわ!!」
「何だと!?この雌猿がぁ!」
「上等じゃ、この魚類がぁ!」
うわぁぁぁぁぁぁぁ!!止めてくれ~~~!!
そこに救世主が!!
「何やっとんじゃ!こら~!」
「ボケどもが騒いでんじゃねーぞ!」
は?・・・・・
サラさんとシャルさん?‥‥‥今のセリフは??
そこにワフワンが!
「主!間に合いました!こうなる気がしてました!」
はい?そのドヤ顔は何??
「てめぇら§◆§※§¶×Δ」
「上等だ◆Δ±Θ※Λ」
「Ξ居×kΛΨΠ・・・・」
「Ψβ×ΜЁ※§・・・」
トゥミにサラとシャルが加わって、もう何言ってるのか分かりません。
人魚さん達の返答もピー!ピー!!ピー!ばかりです。
彼女たちの本気を見た事無かったのを、今初めて知ったぞ‥‥
トゥミとアンジェが浅瀬で殴り合いを始めた!
一切の遠慮のない本気の殴り合いだ!
サラとシャルは、トゥミ側のセコンドで声援とサポート魔法が飛び交っている。
アンジェ側は、フラビーとムルミィが声援と罵倒とサポート魔法で支援している。
人魚さん達と半魚どん?達が集まってきた!
牙猿と魔狼達も集まってきた。
半漁どん、初めて見たんだけど誰か紹介してくれない?
みんな、アンジェとトゥミの殴り合いを応援している。
殴り、殴られ、回し蹴りや尾鰭ビンタも織り交ぜて!
「ワッショイ!わっしょい!ワッショイ!わっしょい!」
「わっしょい!ワッショイ!わっしょい!ワッショイ!」
あー~!!!!トゥミが足に来た!
踏ん張る!踏ん張る!そして殴り返す!
お~!!!!!!!今度はアンジェが足に来た!!!!1歩2歩揺らぐがぁ!
踏~~……ん張る!まだまだぁ!!
「ワッショイ!わっしょい!ワッショイ!わっしょい!」
「わっしょい!ワッショイ!わっしょい!ワッショイ!」
トゥミ渾身の右ストレート!!
あー!アンジェ左ストレートで迎え撃ったぁ!!
決まったぁぁぁーー!!クロスカウンター!!
・・・・・・・・・・・・・・
二人、互いに入っている!ピクリとも動かない!
あ!あ!少しずれ出した!アンジェが揺れる!揺れる!倒れる!
トゥミがアンジェを胸に抱えて!‥‥‥そのまま倒れたぁ!!!
ダブルノックアウトだぁぁ~~!!!!
カンカンカンカンカン!!と、ある筈のないゴングの音が聞こえた!
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