第62話 農園
パソコンで様々な品を注文する。
砂糖や香辛料、塩、幹物、調味料、油、バターなどの乳製品。
下手なスーパーも真っ青な量を注文していく。
ネットで振り込み操作をするが、1日の上限は1千万円までなので、その範囲で購入する。
他にも購入する物は、服飾関係多数。今回は古着などで子供服も大量に買った。
金物関係は、パイプ類に加えて小さな金物類、アングルや釘やビス、ドライバーなどの手動工具類も大量購入。
もう少し、増築したいし、他にも建物が必要になって来るだろう。
ホームセンターやモモタロウのホームページから材料や生活雑貨を漁って行く。
何が必要か分からないから、取り敢えず種類を揃えよう。
後は、本屋のホームページから、手作り調味料レシピの本や、サバイバル本や、アウトドア生活本を漁って購入。
本来は、ここからスタートだろうに、随分遠回り?寄り道?をしていたなぁ。
ここ半年で、基本的な事は何も出来ていない気がする。
最初こそ、井戸掘りなんか頑張ってたのに、今は何もしていない!
もう少し、スローライフを満喫しようと思う。
一通りの注文を済ませると(支払金額上限まで)行李の現金を確認。
ぎゅうぎゅうに毛皮を押し込んで、やはり、1千万円オーバーな金額。
もっと価値の在るものを換金しないと、日本での現金が枯渇しちゃうな。
「祖母ちゃん、聞いて良いか?」
「なんだい?」
祖母ちゃんはお茶を飲みながら、俺がネットで買い物してるのを黙って見ていた。
「祖母ちゃんはこの世界に居て、俺は向こうの世界に居る。」
「それがどうしたんだい?」
「例えば、俺が向こうの世界で行李に毛皮を入れたら、祖母ちゃんはこっちの世界で現金として取り出せるのか?」
祖母ちゃんはニヤッと笑って「ほう?」と一言言った。
「あと、金銭的価値の無い物。例えば俺が祖母ちゃんに宛てた手紙なんかはどうなる?そのままこちらで取り出せるのか?」
「ほうほう、まだあるかい?」
「こちらで魔法は使えないって話だけど、魔道具とかも使えないのか?向こうではべらぼうな価値のマジックバッグなんかは、行李に入れたらやはりべらぼうな価値になる?それとも二束三文のバックの価値か?」
「お前さんも色々考える様になったじゃないか?普通は最初に持つ疑問だけどね?ひゃっひゃっひゃっ!」
「うぐっ‥‥そう言われると、確かにそうなんだが、考える前に色々在り過ぎたんだよ。」と、言い訳してみる。
祖母ちゃんはニヤニヤしながらも解説してくれた。
「まず、お前さんが向こうで毛皮を入れると、こちらで現金が取り出せるよ。ただし、直ぐにじゃない。早くても2、3日は掛かるね。」
「次に、金銭的価値の無い物。お前さんが言ってた手紙なんかはそのままだよ。これは入れたら直ぐに取り出せるさ。そんなときは、行李の蓋から紐でも垂らして置くと分かりやすいねぇ。」
「最後に魔道具。これはこちらで出してもただのガラクタだよ。この世界じゃ魔法は使えないんだ。マジックバックも二束三文だね。こちらから電化製品を行李に入れてもガラクタだね。基本的に電気を使ってる世界じゃ無いから意味の無い物とみなされるよ。」
「そうか。互いの世界の価値観で換金されるから、そうなるのか。んじゃ、祖母ちゃんに頼みがあるんだ。」
「なんだい?あたしに頼むと高いよ?」
そのニヤニヤ笑いは止めて下さい。‥‥言えないけどね。
「大きい行李にドンドン入れて送るから、小さい行李に移して欲しいんだ。」
「やっと思いついたかい。小さい行李に入れて置けば、どちらでも現金が出せるからね。いいよ。やってやるよ。その代わり手数料は3割だよ!覚えておきな。」
「さっ?3割は‥‥高くない?」
「嫌なら止めておきな。」
祖母ちゃん、相変わらず厳しいなぁ。(この業突くババアめ!)
「なんか言ったかい?」
「いえいえ、何も言ってませ~ん!」
サッサと外に逃げ出した。
ふと、辺りを見渡すと、周囲の景色が‥‥違う!
何だ?この観光地は??
家の前の通りは、まるで観光地の駅前通りのようである。
そう言えば、エルフ長屋は、ペンション村‥‥ほんとに村状態だ。
迎賓館は、小規模ホテルだったはずだが、デカくね?こんなに客が来るのか?
BBQサイトも広過ぎねぇか?竈、いくつあんだよ?‥‥って、見慣れたスーパーがカモフラージュされてこんなところに!道具は貸し出し。食材は現地調達。
手ぶらで来れてゴミのお持ち帰りも無し。分別しっかりやって残飯は家畜の餌に!気楽に来れて楽しめる様に考えられてますねぇ。
牙猿長屋のバンガローサイトも広い!稼働率何%だよ!?。
リス猿園も、大きいですね。丸い目でこっち見てます。あっ!オジサンが眼鏡取られた!係員が手際よく取り返してます。餌を持った子供が猿に埋まってますねぇ?
大丈夫かな?
放牧場は、小さなミニ牧場どころか、お母さん牧場みたいだよこれ!
あ~牛が鳴いてます。首にベルが付いててそれっぽいね。
放牧場と畑の間の湧き水池と水路は、畑の区画をしっかり流れてて、マス釣り場は大きい川みたく整備されてます。子供が落ちない様に、浅瀬の中に柵が在るのは‥‥
そうか、浅瀬はくるぶし迄も深くないから、子供はちょっと水に触れば満足すると?色々考えてるねぇ。
家と松の木は、そのまま。なんだかホッとしますわ。
畑は‥‥広大な農場になっていて、区画された案内地図がある。
番号が振られて、地図の下には番号ごとに何処の畑と言うのを表示している。
ドコドコ幼稚園とか、ナニナニ小学校1年A組とか、○○様とか個人名もある。
広大な賃貸農園と化していた。
簡単な説明文とパンフレットも置いてある。
「なになに? 自由に農園生活を楽しんでみませんか?‥‥畑でも田んぼでも、貴方の望む農園のお手伝いをします。週末農家でも、お子様の情操教育にも、是非お役立てて下さい。‥‥‥」
すげぇ!区画の周りに水路もあって、田んぼでも畑でも出来るようになってるのか。
種蒔きから収穫まで面倒見ますって、農耕機械完備!トラクターも冷暖房完備だし、田植えの機械も、刈入れの機械も揃ってるのかぁ~!はぁ~~・・・
全部レンタル出来て、初心者は教えてくれて、肥料や農薬も販売してますか。
至れり尽くせりの農園ですね~。別区画でビニールハウス区画を造成中ってか!
大区画から小区画まで、最少は5mx5m。家庭菜園なら十分だよな。
これで、採算取れるのかねぇ?
自分の家?を楽しんだ後、車庫に戻って来る。
スタッフの管理棟が隣接してるので、何人かスタッフさんが戻ってきた。
不審者と思われてもイヤなので、「お疲れ様でーす!」と、挨拶しておいた。
その途端!
「しゃ、社長!お疲れ様です!」「「「「お疲れ様でーす。」」」」
「お戻りになられてたんですね。」
「えっ?あ、あぁ、うん。」
「また、お出かけですか?」
「あ、うん、街まで買い物行って、直ぐ帰ってくるよ。」
「はい、お気を付けて、いってらっしゃいませ。」
「「「「いってらっしゃいませ~!」」」」
「ああ、ありがとう。行ってきます。」
そそくさと車に乗り込んで、サッサと発進した。
見えなくなるまでスタッフの女の子たちが見送ってくれてドギマギしてしまった。
俺って社長なんだ?‥‥よく俺の事知ってたな?
祖母ちゃん、どんな話になってんだよ~??
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
スタッフ棟、女子更衣室。
「あ~!ビックリした!社長に会うとは思わなかったね。」
「あたし、戻ってるの知ってたよ。グルっと視察してたから、男の人1人で珍しいなぁ?と思ってたら社長だった。」
「なんだ~教えてよぉ!」
「リス猿園でオジサンが眼鏡取られたの見てて、心配そうにしてたね。笑うんじゃなくて。優しそうな人だよねぇ?」
「まだ若いんでしょ?お婆様と二人でこの農園をここまで大きくして、今は外国暮らし?外国での収入も、物凄い!って噂だよ!」
「玉の輿じゃ~ん!見た目も可愛いし、狙い目じゃないの?」
「ひと月か、ふた月に1回しか帰って来ないからなぁ。中々機会がないよね。」
「上手く機会狙って既成事実を作っちゃえば!!」
「「「「きゃ~~~!!」」」」
こんな事を言われてるなんて、知る由も無い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます