第59話 オダーラ
街の外でオダーラ遠征隊を作る。
一般市民で、オダーラの街まで行ける者。基本的に自己責任で、途中の色々は自分で何とかしなさい。
俺らは一足先に行って開放しておく。
後から来て、街の復興を頼む!‥‥それに不満な奴らも居る。
そんじゃ、一緒に行こう!でも待たないよ?付いて来れなくても文句言うなよ?
なんか、デカい魔獣?が引いた馬車?みたいなので行くと言う。
あの魔獣って、トカゲ?小さいTレックス?みたいだけど、大人しいんだ?草食なの?欲しいかも。今後の交易の足に良いかもね。
そろそろ出発の準備が整う頃に、辺境伯達がやって来た。
「皆、ご苦労!真悟人に付いてオダーラの解放と復興に尽力してくれる者達と聞いている。オダーラの民も、ここ、マウントフジの民も変わらず我が民である!
どうか、彼らの解放をよろしく頼む!!」
真悟人は横で聞きながら、
「誰が責任者として行くんだ?」
そこで紹介されたのが、あの冒険者ギルドでのサブマスター、ロンシャンであった。当然、全員がイヤな顔をする。
しかし、当のロンシャンは自信満々である。
「なぁ、辺境伯。こいつはダメだわ。俺らに対する態度がなってねーもん。」
「最初に在った行き違いはまた後程謝らせよう。今はこいつを筆頭にオダーラに向かって欲しい。」
全員が白い目である。
当のロンシャンは、
「私が今回、この部隊の責任者として同行する。私の指示の元、オダーラの街を開放して欲しい。ギルドでの事は水に流して、協力してくれるな!?」
「辺境伯。ダメだ。こいつじゃダメだよ。‥‥」
うん。思いついた。
「ヨシ!皆!出発しよう!!」
ボスとアルファに目配せして、戦隊達にも伝える。
「行くぞ!!」
「「「「「おぉ!!!」」」」」
号令と同時に、辺境伯を拉致る。
意識を刈り取って、無理やり担いで、森に飛んで行く!
それを見送りながら、
「お坊ちゃん。頑張って付いてお出で!」
呆気に取られているロンシャンと街の者を見ながら、ボスとアルファで飛んで行く!
あのロンシャンって奴は、辺境伯の甥っ子だそうだ。
そこから腐ってきたんだな。
このまま腐って行くなら、この街も見捨てる事になるだろう。
もうヴィトン達も回収したし、なんの柵もないから、後はどうなろうと構わない。
オダーラの街の商人の兄弟を回収すれば良いだろう。
後は、オダーラに着いてから考えよう。
途中で一旦、休憩を入れる。
皆で水を飲み、簡単な食事をとる。
俺のアイテムBOXがあるので、普段取ってる食事と変わらず、スープもパンもある。
そんな間に、
「真悟人って何気に演説好きだよね!」
は?シャルさん?いったい何を?
「そーだよね~!何かあるたんびに皆の前で喋ってるよね~!」
え?いやいやトゥミさん。なんでそうなりますか?
「さっきも街の皆の前でやってたもんね。」
「「内容はともかくね。」」
あ~~‥‥少し自覚はある。俺って実は目立ちたがり屋じゃん?
余計な事言って、自滅するタイプだよな~。
今迄の鬱憤が出てきてるのだろうか?気を付けないと取り返しが付かなくなるね。
反省しながらもオダーラの街が見えてきた。
簡易ながらも、城壁に囲まれた町は、十分に堅牢そうである。
マウントフジの街ほどじゃ無いが、多少の人数は居るのだろう。2千か?3千か?
大きな扉は固く締められている。一切の出入りが遮断されているのだろう。
街の外で、幾人かの商人が野営をしているので話を聞いて見る。
ボス達を見て引き吊った顔をするが、仲間だから大丈夫だと言って、それでもボス達には一応は離れててもらう。
そして話を聞くと、皆、ここまで来たら街の扉が閉まっていて困惑してると、幸い野営する物資はあるが、何時まで閉まってるのか?状況によっては他の街に移動しないとイケない。
積み荷を聞いたら、塩や食料である。
それじゃあと、買えるだけ売って貰う。
荷物全部は現金では買えなかったが、香辛料などで物々交換して貰った。
それを見た、他の商人も交換できるならお願いしたいと集まってきた。
砂糖や香辛料は凄く喜ばれた!ここまで来た甲斐があったと。
これは、エルフの里から運んだもので、良かったら直接取引も応じると、営業活動を行っておいた。
周囲の商人が出払った所で、本来の目的である街の解放をしよう。
先ずは、辺境伯を起こす。
うっすらと覚醒してきて、がばっ!と起きる。
これから街の解放を行う。目ぼしい人間を捕まえて来るので、殺すか生かすかの判定をしろ。
「そ、そんな事が簡単に?」
「皆殺しにしたくないだろ?あの坊ちゃんにそんな判別付いたか?」
「・・・・・・」
「結局全て、お前の甘さが招いた事だよ。改めて聞いてやるよ。街を開放したいか?どうしたい?‥‥俺らはオダーラの街の奴らに付いても良いんだぞ?」
目を見開いて、「そ、そんなことが‥‥出来る訳が。」
「お前の一番の勘違いは、自分に逆らう訳が無いって所だな。今ここで街に放り込んでも良いし、全て皆殺しでも良いぞ?王都から助けが来るか??何日かけて来るんだ?街ごと乗っ取っても旨味なんて無いし守るのもしんどいからな。普通に見捨てるかな?その間に街はどうなる?オダーラだけじゃない、マウントフジだってそうだ。」
先行して、ボス、アルが準備を進める。
トゥミ、シャル、フォローを頼む。
サラは合流せず、別の使命で動いている。
作戦としては、牙狼戦隊で内部から扉開放。
後は、牙猿と魔狼で、目ぼしい人間を捕獲。街の入り口前に集める。
基本的に殺すな。歩行不能にしておけ。折るのが良いかな。
魔法使う奴はどうしたら良い?
さるぐつわね。シャルが教えてくれた。
まだ辺境伯は動けなかった。
一言、街の人間を助けて欲しいと言えば良いのに。
「もうクーデターが起きて1週間になるか?食料の備蓄なんてしてんのか?街の人間はしてないよな?お前はそれを見捨てるんだろ?だからあの坊ちゃんを寄越すんだろ?‥‥‥で、どうすんだ?」
答えを聞く前にボスが戻ってきた。ワフワン達を連れて。
「主、無事です。」
そこには、人間の商人、ジャニ、フェブ、メイの三人と、似た顔立ちの男と女が居た。これで5人兄弟勢ぞろいか?
全員、薄汚れてやつれている。男は、殴られたような跡も見える。
「よぉ!ジャニ、フェブ、メイちゃん。無事だったか?」
何が起きたか分からなかった3人は、真悟人を見ると‥‥‥泣き出した。
「助かった!‥‥助かったんですね?」
「ああ。もう心配ないよ。トゥミ達が準備してるから、顔洗って飯、食って来い。」
「真悟人さん?真悟人サン‥‥ゥぇぇえええん‥‥」
メイちゃんは号泣している。
もう一人の女性が、その肩を抱いて、
「真悟人さんですか?メイから話は聞いています。長女のエイプです。借金も肩代わりして頂いて、おかげで私も解放されました。なんとお礼を言って良いか‥‥」
彼女も泣き出してしまった。
辛かったんだな。
もう一人の男は、目を真っ赤にして、涙を堪えながら頭を下げた。
口を利いたら泣きそうで、我慢してるんだろう。
さて、辺境伯さんは覚悟が出来たか?
所在なさげにしているオッサンだが、これが貴族で辺境伯なんて地位に居るとは信じがたい。
「では、オダーラの制圧を始めるぞ。」
辺境伯は、コクコクと首を縦に振るだけである。
「ボス、GO!」
「イエス・サー!」
おいおい、ノリがいいな。そのフレーズ何処で覚えた?
ほんの10分としないうちに正門の扉は開かれた。
オダーラの街の兵士?達が囚われて転がされている。
反乱軍には見えない街の兵士達。
その横で、貴族らしい華美な格好をした若い男が縄で縛られて座らされている。
側近らしい貴族数名と共に。
周りには、牙猿と魔狼達が整列していた。
彼らを労い、よくやったと褒めた。
街の民は、遠巻きに見つめて、半端放心しているような感じである。
現実として何が起きたの?どうなったの?という気持ちだろう。
捕縛した貴族達とは別に代官?っぽい男と、側近連中も固めて座らせている。
彼らも、放心状態で空を見つめている。
代官っぽい彼に近づき声を掛けた。
「あなたがオダーラの街の代官である、リアム・オダーラさんですね?」
少しずつ瞳に光が戻ってきて、質問に答えてくれる。
「あ、あぁ、私がこの街、オダーラの代官をしているリアム・オダーラだ。」
「はい、ありがとうございます。」
振り返り、辺境伯を見る。
「何か言う事は?」
辺境伯は、顔を赤くしながら、堰を切った様に喋り出した。
「街の代官の任に着きながら、クーデターとは!相応の裁きを覚悟をしておけ!‥‥‥」
聞くに堪えない罵倒が続く。
代官のリアム・オダーラは、黙ってその罵倒を聞いていた。
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